表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/371

五章 34.強者メルト

 ガゼルよりクウを連れ戻してくる許可を得た俺は、現在小川をひたすら上流に向かって走っており、ようやく今大河へと合流した。


「すぅーーーーーっ、クウーーー出てこーい!」


 左中指に付けている指輪、モンスターリングでクウの居場所は常に把握出来ている。そしてその指輪によるとクウはもうすぐ近くに居る筈なのだが、現状はその姿が見えなかった。

 姿が見えない理由は一つだろう。恐らくクウは今、河の中に潜り魚を狩っている最中ということだ。

 だから俺は叫んだ。クウの耳に届く様に、めいいっぱい力の限りに。


「クウー?(あれ?アカリどうしたのー?)」

「おおクウ!やっぱり河の中に居たか!」


 叫び待つこと数秒、狙い通りクウが水中から勢いよく飛び出し、可愛らしく首を傾げて尋ねてきた。その口にはクウの何倍も大きい魚を咥えながら。


「クウ、急で悪いけど力を貸してくれ!以前戦ったあのメルト達がまた襲撃して来てて、今はシンリー達が対抗してるんだけどそれもあまりいい状況じゃ無いんだ!」

「クウゥー?(またアイツら来たのー?)」

「そうだ、一緒に戦ってくれるか?」

「クアッ!(もちろんだよ!)」


 俺も今はかなりテンパってる為、結構な早口で現状を伝えたのだが、クウはそんな俺の説明も上手く理解してくれた。咥えていた魚を丸ごと一飲みで平らげると、満足気な笑みを浮かべながら胸を張って頷いてくれる。


「ははっ、さすがは俺の相棒だ。それじゃ早速融合してシンリーとガゼルを助けに行くぞ!」

「クウー!」


 再び相見える強敵との戦いにも、クウは快く快諾してくれた。その心の広さに俺はいつも助けられてばかりだ。

 ともかくそうして無事クウと合流を果たした俺は、右手に装着しているモンスターガントレットの力によって融合すると、空間魔法を使って最速でガゼル達の救援に向かうのだった。












 ――











「いいだろう、なら完膚無きまでに叩き潰すまでだ!」

「くっ、ごめんねダーリン、私負けるかも……」


 空間魔法によって移動しようとする俺達だったが、ワープホールを出現させた瞬間そんな声が入ってきた。戦況はまだ見えないが、その内容からシンリーがそれなりのピンチに陥っていることくらいは察することが出来る。

 これはもはや一刻の猶予も無い。すぐにでも戦場に躍り出て、シンリー達に加勢しなければ。


「――させるかよ!」

「えっ、ダーリン!?」

「ようやく来たか、待ち望んだぞ……」


 ワープホールによって戦場に舞い戻った俺は、そのまま攻撃態勢に入っているメルト目掛け猛烈な体当たりをかまし、狙われているシンリーから遠ざける。

 叫びながら突撃したせいで不意をつくことは出来ず、攻撃自体は防がれてしまったが、それでも奴の気を俺に向けることは成功だ。


「クウと融合したからには、もう好き勝手はさせねぇぞ!」

「馬鹿が、それでようやく前回と同じに戻っただけだろうが。こっちは他に宝技を使ってない分、前より割増で強くなってるんだよ!」

「ぐうっ……、がはっ!」


 果敢にメルトに攻撃を仕掛ける俺だったが、奴の力は以前よりも遥かに増しており、今の俺では抑え切るのすら困難であった。

 宝技というのはよく分からないが、恐らくは剣舞会会場を襲ったあの巨大な魔石のシカが、関係しているのだろう。そして今はそのシカに力を割いていない分、メルト本人の力が増しているというわけか。


「ほんとに強くなってやがる。ったく、どこまでも厄介だなお前は……!」

「ふん、分かったらとっとと負けを認めろ。そして俺達と一緒に来い」

「誰が行くかよ!それにまだ負けた訳じゃねぇ!」


 メルトはやたら執拗に俺を奴らの世界に連れて行こうとしてくる。何が狙いかは知らないが、その目的がクウである以上絶対従う訳にはいかない。

 いくらメルトが以前より強くなっているからといって、俺達だって簡単にやられる程にはいかないのだから。


「貴様が俺の言うことを聞くなどとは思っていないさ。だからこそ眠らせてでも無理やり連れて行く!」

「馬鹿が、当たらねぇよそんな攻撃」

「ぐふっ!」


 メルトは強化され人の腕とは呼べない様な左腕を豪快に振り回して攻めてくるが、そんなものはクウにかかれば軽々と回避可能だった。

 空間魔法によっての回避はクウが行ってくれる。だからこそ俺は安心して攻めのみに集中出来るという訳だ。

 クウが攻撃を回避しつつ、俺がカウンターの蹴りを見舞いメルトは鮮やかに吹き飛ばされた。


「このまま大人しく帰れ。今なら見逃してやるからよ」


 メルトを地に伏した俺は、そのままそう宣告する。奴らが帰ってくれるのなら、これ以上無駄に戦い続ける必要は無い。


「ふん、やはり厄介だなその力。だが対処出来ない程ではない。つまりは、わざわざ俺達が引き下がる必要も無いってことだ!」

「やっぱそう簡単には帰ってくれないか。仕方ない、ならやるぞクウ!」

『クアッ!(任せて!)』


 たった一回の攻防で逃げてくれる程、メルト達は臆病でなければ弱者でもなかった。やはりこいつとはどこまでもやり合わないと終わりは無いらしい。


「貴様の回避性能はもう見切っている!」

「またこの針地獄か……!」


 メルトは俺の足下に無数の剣山を出現させ、串刺しにしようとしてくる。以前もこの攻撃で俺は足を貫かれ、自由を奪われた厄介な攻撃だ。

 だから俺は空に飛翔することでこれを回避するのだが、当然その動きも奴らは読んでいた。


「今回はメルトだけじゃねぇぞー!」

「新手か!」


 メルトからの攻撃ばかりに気を取られていたせいで、奴の仲間が接近してきていることに気づくのが遅れた。その結果俺は敵の巨大な魔石斧による一撃に回避が間に合わず、腕で無理やり防御する羽目になる。

 斬られはしなかったが、それでも馬鹿力で吹き飛ばされた俺は再び大地に叩き落とされてしまう。腕も斧の一撃がジンジンと響いている。

 幸いなのは針山地獄に落下するのだけは回避出来たことか。


「だーくそっ!ほんとに強いなこいつらは……!」

「くははっ!無様だなアカリ。それとこの森の村への攻撃も既に開始させているぞ。貴様が言うことを聞かないのなら、我々の手でこの森を滅ぼすだけだ」

「なっ!こいつ、とうとうやりやがったか……」


 メルト達の厄介な連携に苦渋を飲まされていると、村への攻撃ももう始まっているという衝撃の事実を聞かされた。確かに俺が言うことを聞かなかったら攻め入るとは言っていたが、まさかもう始めていたとは。

 だが、村には俺の仲間達が大勢いる上に、村の奴らもそれなりの戦闘技術を持っている。それらが合わさればそう簡単に敗北することは無いはずだ。

 村への心配は今は無用、俺のすべきことはやはりメルト達を倒すことである。


「あんた達、よくも私の森を滅茶苦茶にしてくれたわね…!」

「ふん、これ以上森を汚されたくなかったら、大人しくその男を差し出せ。でなければ皆殺しにして連れて行くことになるぞ」

「誰が大切なダーリンをあんた達なんかに渡すもんですか!」

「なっ!お、落ち着けシンリー!」


 しかし、森に侵入し村を襲撃され自分の大切な住処を好き勝手やられたシンリーは、怒りが頂点にまで上っていた。荒れ狂う感情のままにシンリーはメルトへ突撃するのだが、そんな無策のまま無謀に突っ込んでも奴らを倒せる訳では無い。

 だが残念ながら、俺の制止する声など届くはずも無く、シンリーの足は止まらなかった。


「だーくそっ、こうなったら俺達も行くぞクウ!シンリーと連携すればまだ勝利の可能性はあるしな……!」

『クアッ!(うん!)』


 暴走するシンリーを止められないのなら、俺達もそれに便乗する他ない。仲間一人に突撃させて俺だけのんびり観戦なんて出来るわけないからな。

 それに彼女との連携はまだメルト達も知らないはずだ。つまり違う戦法でなら勝機を見出せる。


「やるぞシンリー!」

「えぇ、力を借りるわよダーリンにクウ!」

『クウ!(うん!)』


 こうして俺達とシンリーは、メルト達を排除する為連携して攻め込むのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ