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24:レベルカンストしましたが?

「冒険者ライセンス?」

「ああ」


 耳慣れぬ言葉にリアンがオウム返しに答えると、ラスは頷き、改めて彼女に尋ねた。


「……一応聞いておくが、リアン。お前今でも自分の呪いを解きたいと思っているよな?」

「それはもちろん!」


 リアンは瞳に強い意思を載せて即答する。


「もし解けるなら解きたい。…このままなんて絶対にイヤ」

「よし。なら次行く場所はカバラ密林だ。ギルディスという竜に会いに行く。…ただし、あそこは正規の冒険者でなければ立ち入ることが出来ない」

「そのために冒険者ライセンスが必要なのね?」


 そういうことだ、とラスが頷いた。


「ライセンスの発行は、街の冒険者ギルドで対応してくれる。お前なら大丈夫だろう。さくっと行って取ってこい」

「わかった。――ラスとルシアさんは、この後どうするの?」


 リアンの質問に、今度はルシアが答えた。


「私達は別の用事で首都へ行ってくるつもりです。…わかっていると思いますけど、リアン。冒険者ライセンスが取れたからといって、一人で先に行ってはいけませんよ?私達と合流するまで、ちゃんといい子にして村で待っていてくださいね」

「あっはい…それは、もう…」


 母親のように優しい言葉で言い含められるが、ルシアの中身がそれとは真逆であることは既に折込済みだ。「何があっても村から勝手に出ていくんじゃねえぞコラ」という命令に脳内で自動変換されたリアンは、引きつらせた顔で何度も首を縦に振った。見た目は違っていても、中身は空気の読める大人である。


 そうして、次やるべき事も決まったところでいよいよ迷宮から出ることになったのだが…、


「は?レベルが今98?」


 もうちょっとだから上げて行けば?というエルドアの一言に、ラスが信じられないと呆れた様子で言った。


「そんなもん、ルシアと一階層上に上がってとっとと上げてこい」

「えっでも、どっちみちこれから帰るワケだから。途中で上がるんじゃないかなぁって思ってたんだけど…」

「帰りはエルドアに外へ転送してもらう。魔物なんか倒さないぞ」

「へっ!?」


 リアンはラスの言葉に驚いて声を上げた。聞けばエルドアにとって迷宮内部は自由自在。空間転移でリアン達を村まで送り届けることなど朝飯前らしい。故に帰りは迷宮の中を通らないようだ。

 話を理解したリアンは、大人しく一度上の階層に戻り、レベル上げに勤しむことにした。「では私もたまには本気を出しましょう」とのんびり言うルシアの言葉にたらりと冷や汗が流れるが、彼が一緒であればそう時間はかからないだろう。いずれ、迷宮外の森で上げるには日数も手間もかかりすぎる。

 リアンはラスとルシアの提案をありがたく受け、残りのレベルを上げてしまうことにした。


 ――ルシアの本気がマジの本気で、リアンがドン引きしたのはまた別の話である。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『――それで、結婚式はいつするの?』


 リアンとルシアが居なくなった途端言い放ったエルドアの言葉に、ラスは盛大にむせ返った。


「誰とだよ、…あのガキとか?結婚なんかするか!」

『えっ、でもなんか妙なスキルが発動してたわよ?解呪するならそっちの方がずっと大変そうに見えたけど…』

「……まぁそれには少し事情があってな…。ルシアにはまだ言うなよ」


 エルドアの言葉にラスはため息をついた。

 いくら若いとは言え彼女も竜の端くれだ。リアンのスキルだけではなく、ラスとの魔術的繋がりまでもが見て取れたのだろう。正直に言えば、『魔王の盟約』の解呪方法があるならラスの方こそ知りたかったのだが、今は『血の穢れ』解呪の方が優先だ。


『まぁラスがそう言うなら。…でも連れ歩くなら、せめてまともな装備くらい用意してあげなさいよ。裸同然でこんな迷宮最深部まで連れて来るなんて、下手すると死んじゃうわよ?』

「…装備?そんなもの必要か?」

『ラスだって魔術刻印と魔術触媒でガチガチに盛ってるクセに。それに、うっかり死なせるわけにもいかないんでしょ?』

「あー……、まぁそれもそうか。アイツ一応まだ人間だしな」

『そうそう。女の子なんだし大事にしなきゃ』


 エルドアは自らの宝物庫と空間を繋げると、首を突っ込んであれこれと物色を始めた。

 しばらくすると、ゴトンと音を立ててラスの足元に何かが転がる。見ればそこには拳大ほどもあるセシリアクォーツ。虹色に輝く輝石は、世界でも極めて珍しいとされる魔術媒体の一つだ。続いて転がってきたのはアダマンタイト、世界蛇の眼、神獣ゴウンノアの頭核。どれもこの世界で珍しいとされる秘宝ばかりだった。


「…おい、お前どんだけ…」

『この辺も使えそうね。それ、全部持っていっていいから』


 エルドアはラスの言葉にお構いなしに、次々と宝物庫からレア素材を引っ張り出す。極め付けは子供の頭程もある巨大な竜玉だ。


「おい、お前これ、…親の形見だろ?」

『私には無用の長物だし、どうせそこらの職人には加工も出来ないわよ。ラスなら、腕の良いドワーフの鍛治師くらい、知ってるでしょう?』

「知っているが、…こんなもの装備したらアイツ本気で人の領域飛び越えるぞ…」

『血の穢れのペナルティがあるんだから、私はこのくらいあっても良いと思うけどね。ほら、人間の身体って驚く程脆いじゃない?…物理防御系と肉体強化。あと生命力維持辺り付けておけば、そうそう死ぬこともないでしょ』

「…まぁ、そういうことならありがたくもらっていく。加工は任せろ」

『うふふ、仕上がり楽しみにしてるわね』


 ラスがそれら全てを収納魔法で仕舞っていると、丁度リアンとルシアが戻ってきた。どうやら無事レベルが限界値へ達したようだ。


「終わったか?」

「うん!レベル99なった!」


 遠くから小走りで駆けてくる姿はまるで子犬のようだ。ラスは呆れて苦笑いを漏らした。


「…それで、次何になるかは決めたのか?」


 努めて何気ない様子で尋ねる。リアンのレベルアップを今ここで済ませたのは、彼女のクラスリストを一度確認したかったからだ。リアンがどのクラスを選ぼうと本人の自由なのだが、クラスリストに何が載っているかは少々気になっていた。

 リアンは目線でステータスウィンドウを開く動作をすると「うーん…」と一人思案する。


「正直、何になるかはまだ決めてないんだけど…。クラスはすごい増えてる」

「念の為に聞くが、勇者とか聖女とか、そういうクラスは出てきてないよな?」

「うん、ないよ。魔王とか竜も見当たらない」

「当たり前だ」


 聞けば、上位魔術師、秘術師、呪術師、召喚師、薬草師、聖職者、…冒険者としては月並みなクラスばかりが並んでいるらしい。2ランク目にしてその数の多さは異常だったが、ラスは内心安堵した。何故なら、この世には稀に対魔王特化と呼ばれるクラスが発現するからだ。万が一リアンがそうなれば話は厄介だったのだが、どうやらその心配はなさそうだ。


「おすすめのクラスとかある?」

「そんなもんあるか。自分の人生だろ、自分で決めろ」

「うわぁ、大人な発言!」

「当然だ」


 むっと頬を膨らませたリアンは、ふと表情を戻し神妙な顔つきで黒髪の男を見つめた。


「…ラス」

「なんだ?」

「その、…呪詛の解呪は私個人の問題なのに、付き合ってもらったりしていいの?」

「あー…」


 ラスは今更ながら気づいたように、声を漏らした。そして腕組みをするとさもないことのように肩をすくめて笑う。


「俺達は今のところ暇だし、お前は見ていて飽きねぇしな。しばらくの間は付き合ってやるよ」

「あ、ありがと…」

「勿論貸しだけどな。礼はお前のポーションでいいから、次会う時までにまた作っとけ」

「む、…わかった」


 命令されるのは癪だが、自作のポーションを評価してもらえるのは素直に嬉しい。

 リアンはウィンドウを閉じると、ラスとルシアに手持ちのポーションを全て渡し、収納していた魔物のドロップ品も全て預けた。パーティを組みここへ連れてきてもらった謝礼も込めてだ。その代わり今回の封印復活の報酬を金貨で先に受け取る。


 これで二人との冒険は一旦終わる。

 ラスとルシアは、ここから直接首都近くの街道まで転送してもらう予定らしい。


 思えば怒涛の数日間だった。異世界へ来て一ヶ月少しだったが、これほどいろんな出来事が積み重なった日々もなかっただろう。悔しい思いもしたが、得たものはそれ以上に膨大だった。それもこれも、目の前のこの二人のおかげだ。

 リアンはぺこりと頭を下げた。


「この度はありがとうございました」

「なんだそりゃ」

「こちらこそ」


 予想通りの切り返しに、リアンは笑う。

 口は悪いがなんだかんだで面倒見の良いラス。

 温和で優しいが腹黒策士のルシア。

 最初はどうなることかと思ったが、彼等と同じパーティメンバーとして鍛えられたおかげで、これからの異世界生活もなんとかやっていけそうだ。


 しかも彼等は、どうやらリアンの呪いを解く道行きにも付き合ってくれるつもりらしい。

 彼等と再び会う時までに冒険者ライセンスを取得しておくことを、リアンは心に決めた。


 リアンはエルドアに転送してもらうため、一歩前に進み出た。彼女が飛ばしてもらうのはタルマの宿前だ。


「それじゃあ、次会う時はクラスアップ後か。せいぜい頑張れよリアン」

「うん、冒険者ライセンス必ず手に入れるから」

「街へ行くときは、くれぐれも気をつけてくださいね」

「はい」


 三者三様の別れの言葉を告げると、足元に魔法陣が展開された。

 ふわりと身体が宙に浮く感覚。

 リアンは楽しかった数日が目まぐるしく脳裏に蘇り、不思議と目の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

拙い文章だったと思うのですが、いかがだったでしょうか。

リアンの旅は、せめて呼び出した本人を直接ブン殴るところまでは続けようと思っています。なかなか長続きしない性分なものでご迷惑をおかけするかと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


琴月嵐

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