4話:チシャーネコの導き(中)ですにゃん
誤字・脱字などありましたらご指摘、ご報告お願いします。
「初心者(殺し)講座、続くよ~続くよ~TUZUKUー♪ うしし」
「もうなんて突っ込んでいいのかわからないですにゃ」
「そう邪険にしないでよ~うしし。もう大事な部分はほとんど伝えたしさー」
とりあえずログアウトは出来るけど、それにはこのアクセル・サーバーで
約2か月の時間が掛かるってことは分かりましたにゃ。
これはシステム上しょうがないってことも理解。
私はぐるぐるする気持ちをパチッと切り替えましたにゃ。
どうせ、うだうだと悩んでいられるのも1日が限界ってもんですにゃ。
なら無駄な時間を過ごすよりも、現状を楽しんだほうが得策だと思うのにゃ。
ふふん、実はこれってマスターの受け売りなんですにゃよ! えっへん!
それに、現実では10分しか経過しないならマスターに心配をかける
可能性も低いって考えたわけですにゃん。
基本、マスターがクエストに行ってる間は私に、
「退屈だったら、その辺で遊んでていいからね」と自由にさせてくれていたので、
10分ちょっといなくなっても散歩に行ったんだなと思われる可能性が
高いって気づいてわけですにゃー。
ということで、ログアウトが出来るようになる2か月後までは、
この『絵本』を楽しんでやるのですにゃー!
もとより、プレイヤーとして遊んでみたいと思っていた私。
これは、またとないチャンスですにゃよ。わくてかーにゃ!
「ほとんどってことは、まだ残ってるんですにゃ?」
「しっしっし、もちろんだよ~」
チシャーネコは大きく口を開くと、『みにーずめいど オレンジ(濃縮還元)』を
ペットボトルごと飲み込んでそう言ったにゃ。
……つ、つっこまないにゃよ。
なんで、ペットボトルごと行っちゃったんだろう、とか
フタを開けるのがそんなに面倒だったのかな、とか思ってないにゃ。
「ごくり……うーん、このプラスチック……天然じゃないね。
うしし、リサイクルで出来た混ざり物かぁ。
100%天然じゃないとどうも味がしっくりこないよ、
そう思わないかい? ぺぺぺろちゃん。うししし」
なんかとんでもないことを言ってるにゃん!
く、これはツッコミ……せずにはいられにゃい!!
「何でプラスチックの味の感想が出てくるんですにゃ!
オレンジジュース関係ないですにゃん!
あと、ぺぺぺろちゃんって言うななの!」
「うしし、ぺろぺろちゃんは失礼だなー。
オレンジだってきちんと味わってるよ」
だから、ぺろぺろちゃんでもないのにゃ! ぷんぷん。
「……本当ですにゃ? じゃあ、味はどうなんですにゃ」
「うん、すっぱい! うしし」
聞いた私が馬鹿だったのにゃーーーっ!!
「うしし、余興はここまでにして、
そろそろ次のお題に進んでも良いかい? というか行くね~」
うにゃーん、猫権の無視ですにゃー。
話題をひっぱったのは、チシャーネコなのになんて理不尽なのにゃ。
私の恨みの目線も、チシャーネコは安定の笑顔で受け流すと、
強制的に話を進め始めたにゃ。
「うしし、次にステップに行くんだけど、
その前に、さらっと現在の自分のステータスを確認してくれる~?」
うにゃ? 本格的な指示ですにゃね。何が始まるんだにゃ?
もしかして……いきなり戦闘ですにゃ?
不安になった私はチシャーネコに確認すると
「いやいや、戦闘だなんてペロペロちゃんは血気盛ん猫だねー。
モンスターとはまだ戦わないから安心しなよ~。
ちょっとした運動はあるけどね~うしし」
ちょっとした運動、って言うのがどうもひっかかるのにゃ。
私は嫌な予感がしたので、もう少し詳しくと聞いてみたけど、
チシャーネコは「お楽しみが減っちゃうよ~」と教えてくれませんにゃ。
警戒はしつつも、私は小声で「ヒラケゴマー」と呟いてメニューを開き、
(無言で開くのはまだ無理でしたにゃん……)
何が起きても良いように、チェックを開始しましたにゃ。
◇ ◇ ◇
『絵本』は一応、レベルを上げて強くしていくゲームにゃ。
一応と付くのはこのゲーム、レベルが全てではないからなのにゃん。
順を追って説明しますにゃね。
まぁ、レベル制ですから、当然モンスターを倒したり、
クエストをクリアすることで、EXP(経験値)を一定数まで貯めて、
キャラクターのレベルを上げるのが基本にゃ。
レベルの限界は、今のバージョンだと300になりますにゃん。
当然、レベルが高い方が強いプレイヤーですけど、
それだけでは『絵本』では強者にはなれませんのにゃ。
まず、このレベルって割と溜まりやすいんですにゃね。
何も考えないでプレイしていても、大抵の人間が300に行くことが出来ますにゃ。
(もちろん毎日コツコツプレイすることが推奨ですし、無課金だと猶更ですにゃ)
だから、300レベルなんて『絵本』ではごろごろしてますにゃ。
「俺、300だぜ? すごくね?」みたいな事を言ったら、白い目で見られるにゃよ。
「じゃあレベル以外でどうやって強くなるんだ」って?
ふふん、そこで登場するのが『スキル&キャスティング』システムですにゃ。
『スキル&キャスティング』システムとは、
「スキル」と「キャスティング」という2つの機能の総称ですにゃん。
「スキル」は、ありとあらゆる場面でプレイヤーのゲームプレイを
アシストする機能になりますにゃ。
代表的なものを大きな分類に分けるとこんな感じ。
・戦闘スキル(殴ったり、切ったり、回復したりだにゃ!)
・生産スキル(料理、洗濯、裁縫、現実にも入用にゃね!)
・日常スキル(世間話、交渉、あとはネタ系が多かったかにゃ?)
この他にももちろんあるし、とても全部は紹介しきれないにゃ。
何かしらゲーム内で行動すると、自動的に手に入っているようなものだしにゃ。
「キャスティング」の方は耳慣れないかもしれないにゃ。
これは、「スキル」と「称号(2つ名)」を組み合わせて、
自分だけの「配役」になるという機能にゃ。
……まだピンとこないにゃ?
うーん。じゃあ、キャスト「剣士」を例としてご説明しますにゃ。
キャスト「剣士」への必要条件。
まず、剣を装備して戦い「剣術」というスキルを覚えて、
序盤のキークエストを進めて、「駆け出し」という称号を入手するにゃ。
すると、スキル「剣術」と称号「駆け出し」をフラグに、
「見習い剣使い」の称号が手に入りますのにゃ。
この状態でメニュー「キャスティング」の枠を確認すると、
なんと、キャスト「剣士」の条件が開示されますのにゃん!
気を付けてほしいのが、この状態だと「条件が開示されただけ」と言うことにゃ。
「剣士」へとキャストチェンジするには、「スキル」のメニューを開き、
「剣士」の条件に合うように、スキルをONにしないといけないのですにゃ。
「剣術」だけで「剣士」になろうなんて、世の中そんなに甘くないんですにゃよ。
……こっそりと、「剣士」の条件をネタバレしちゃいますにゃん。
序盤で手に入りやすい基本パターンらしいにゃん。
1:剣に関連する称号を何でもいいので1つセット
2:剣術【ON】/護身術【ON】/応急処置【ON】
こんな感じにゃ。
同系統スキルなら、応急処置を回復術に置き換えたり、
護身術を護衛術に変更しても、問題なく「剣士」の条件は満たされますにゃん。
「スキル」は何個でもセットが可能で、いつでもONとOFFで切り替え可能にゃ。
ちなみに「称号」は1つまで、「キャスト」は基本的には2つまでセット出来るにゃ。
ただし、配役の中には限られた「称号」「スキル」のみで構成せよ
というものもあるので、全部付けてればいーんだなんてモノグサをやっていると、
後で痛い目を見ますにゃよ?
えっ? でもそれだと「職業」システムなんじゃないかって?
ふっふっふ、甘いですにゃー。なれるのは、何も「職」だけではないんですにゃよ?
同じように、スキルの構成や称号の組み合わせで、あらゆる「種族」にだって
なれちゃうんですにゃ。
ゲーム開始前のキャラメイクで、自分の外装(見た目)は自由に弄れますにゃん。
だけど、種族は全員「迷い人」となるんですにゃね。
これは、『絵本』の物語設定でして、私達プレイヤーは
「絵本の世界に迷い込んだ(トリップした?)人間」なのですにゃ。
「絵本の中の住人達(NPC)」には、その『絵本』の物語に定められた「配役」が
あるけれど、「迷い人」であるプレイヤーは外部の者なので「配役」がないのだとか。
逆に物語に縛られないために「迷い人」は、どんな「職」にでも「種族」にでも、
なることが出来ちゃうって訳ですにゃ。
この『スキル&キャスティング』で、得られる「スキル」や「キャスト」は、
どれも、少なからずステータスに影響を与えますにゃ。
持っているだけで、形成を一気に逆転させてしまう物も存在しますにゃ。
当然、これらはたった一回レベルをカンストしたからと言って、
全部手に入るような生易しいものではないのですにゃ。
(入手条件に「転生」が必要なものも多いですにゃー。「転生」はまた今度にゃ!)
けれど、うまく使えば一回りレベル差がある相手にも遅れはしませんにゃん。
長くなりましたが、これが『絵本』がレベルが全てのゲームとは言えない訳に
なりますにゃー。
◇ ◇ ◇
とりあえず、ステータスを確認したんですけど、よろしくない事実が発覚したにゃ。
「これって、結構不利にゃ?」
基礎ステータスがとても低かったのにゃ。
もしかして、観賞用ペットだった頃の名残なのかにゃ?
言い方は悪いですけど、見目が良ければゆるされるのが観賞用ペット。
戦闘をすることもないので、最低限のステータスで良いにゃ。
実際、観賞用ペットの頃はあってないようなステータスでしたし……。
けれど、今の私はプレイヤーになってしまったにゃ。
少しでも、ステータスが高い方がいいのに……。さてどうしよう?
「そんなことないんじゃない~? しっしっし」
「うにゃあ!! びっくりしたにゃ」
間延びした声に顔を上げると、チシャーネコと目が合ったにゃ。
ち、近い近いのにゃ! なんて罰ゲームですにゃー!
「うしししーぺロぺロちゃんは、興味深いスキルを持ってるみたいだよ。
しょーじき、今のまんまじゃ使えないけどー」
あ、そうか。変なスキルを持っていて、それがステータスに
マイナスの補正が掛かってるかもしれないですにゃね。
ふむふむ。じゃあ、スキル画面とついでに称号を調べてみるにゃん。
あ、キャスト条件も開示されてるかもしれないですにゃね。
一括で調べてみるかにゃ……ひ、「ヒラケゴマー」にゃ!
うにゃーん、恥ずかしいのにゃ。
むー、無言でメニューを開けませんのにゃ。しゅんしゅん。
◆◇ チアーク・ぺロー ◆◇
レベル :1
キャスト:迷い猫
称号 :迷い猫オーバーサーバー?
◆◇ スキル一覧 ◆◇
・にそくほこう!【ON】/一般作法【ON】/主従の証【???】/猫かぶり【ON】
クレバーキャット【ON】/ジンの加護【???】
◆◇ 称号一覧 ◆◇
・迷い猫オーバーサーバー?【ON】
◆◇ キャスト一覧 ◆◇
・迷い猫【ON】/???の末裔【???】/???を継ぐ者【???】
……なんだか色々ツッコミどころが満載ですにゃけど、【ON】となっているのが
条件を満たして有効になっているもので、名称が???だったり、【???】と
なっているのものは、何かしら満たしていない条件があるので、
使用不可になっているものにゃ。
迷い猫関係はきっと間違ってアクセル・サーバーに入ったのが関係してるにゃ。
ジンの加護【???】と主従の証【???】。この2つはランプの精霊ジンさんの
クエストが関係してると思いますにゃん。
と、いうことは開示条件も恐らくクエストクリアが前提になるだろうにゃ。
猫かぶりとクレバーキャットは、擬態と自己強化スキルかにゃ?
一般作法はイベント進行用のスキルにゃね。特に特徴はなし。
この3つはチシャーネコとの会話で手に入ったんだろうにゃ。
どれも悪さをしてるスキルはないにゃね……。
そうすると、にそくほこう!【ON】これが原因っぽいにゃ。
これだけは、どうやって入手したのか見当も付かないにゃ。
二足歩行って言われても、私は4足がデフォルトの普通の猫なんですけど。
……とりあえず、はずしておこう。
私は、にそくほこう!を【OFF】に切り替えたにゃ。
予想通り、ステータスは初期プレイヤーの平均値だろうと思われる数値へと
変化したにゃ。
うんうん。これで良いですにゃん。
意味のあるスキルかなとは思いますけど、今のところはデメリットしかないにゃ。
外すのが正解ですにゃね。
こういうスキルの取捨選択が『絵本』で生き残るための秘訣なんだって、
マスターが言ってましたにゃん!
「うしし、むしゃむしゃ……。そろそろ準備はいいんじゃないの~?」
呼びかけに応じ、メニューを閉じて前を見ると、
チシャーネコがテーブルにあった料理ごとドロンと消えていたにゃん!
ああっ! ま、まだハムが残ってたのにっ!!
「ごくり……うししー! ではでは、次のステップだよ。
会場はコチラからドウゾウ~」
ハムの皿を抱えたチシャーネコは、むしゃむしゃとハムを頬張りながら、
軽快な足取りで、薄暗い森の奥へと進んでいったにゃ。
……ご丁寧に、矢印の付いた看板まで設置していくという余裕っぷりにゃ。
「しゃーーー!! ハム泥棒猫ーーー!!」
「うしし、むしゃむしゃ、うしししー♪」
ハムを咥えたチシャーネコを追っかけて、私も森の奥へ駆けだしたにゃん。
チシャーネコ「うっしっし、しっしっしー♪ 今日も良い天気ー♪」
チアーク「はむ~! まてまてーなの!!」




