6.対照的な二人
モンガー星人は光合成によって生命を維持する。エレナ姫の言葉は簡単な説明だったが満にもすぐに理解できた。
「つまり地球で言うところの植物と言うこと? ええっと、何星って言うのかまだ聞いていなかったし、そもそもあなたの名前も知らないや。オレの名前は塵保満あんまりカッコいい名前じゃないかもしれないけどね」
「私、は、モンガー星、から、来る、ました。エレナ、です」
「エレナさんね。きれいな名前だ。モンガー星の人たちは全員光合成なの?」
「はい、効率、良い、生命維持方法、です」
「じゃあ食べる楽しみとかなさそうだなあ。ビールなんてもってのほかだね」
『ピピッ、言語学習進みました。ナノマシンにアップデート掛けます』
「水、を、要望する、ます。多く、必要」
「はいはい、じゃあコップでいいかな? 溺れたりしないよね?」
「平気、です」
満はキッチンへ行き、ちょっとだけ悩んでから手に持ったグラスを置いてカップに持ち替えた。
「じゃあそそぐけど冷たかったら言ってね。お湯にすることもできるから」
「大丈夫、適温、です」
そう言うと、エレナ姫はカップの中へと飛び込んだ。まるでお風呂にでも入っているようだ。その点で満の読みは正しかったと言える。
もし透明なグラスだったら、水着同然のあの姿をまじまじと見ることになってしまうと考え、わざわざカップにしたのだから。
こうしてナノマシンアップデートにともない必要となるエネルギーと冷却を同時にこなし、おなかもいっぱいになったエレナ姫である。
「ふう、このお水はとても質がいいですね。おいしいです」
「あ、話かたが変わった!? 水に入ったからですか?」
「いいえ、ナノマシンの更新を行ったのです。そのために大量の水が必要となってしまいました。もし高価なものでしたら申し訳ありません。先ほど出かけた際、大きな機械から取り出していましたよね?」
「自動販売機のことですね。そんなに高価ではないので気にしないで大丈夫。それよりも本当に水だけでいいんですか?」
「はい、生命を維持するには水だけで十分です。もちろん楽しみのための食事もすることがありますよ? ですが、基本的には水と光による栄養素合成で生命が維持できることは間違いありません」
「なるほど、ちなみにアルコールを飲むこともありますか?」
「アルコールと言うのはお酒のことですね。もちろん飲むことはできます。ただし、吸収率が口腔摂取の生物よりも高いため、酔うのも早いですね」
「なるほど、それではこぼさないよう気を付けないといけませんね。オレは仕事が終わって帰ってきたときのビールくらいが楽しみなんです」
「孤独指数800以上ですものね…… あっ、いけない、失礼なことを言ってしまい申し訳ありません」
「孤独指数? 確かにずっと一人ですがもう慣れてしまいました。何しても誰にも迷惑かからないし、煩わしいこともない。気楽なもんです」
「そう、なんですね。私たちの星では孤独は死に近しいものだとの考えがあるのです。失礼重ねで申し上げますと、孤独指数が高い方のほうが我々を受け入れやすいと考えました」
「そうですねえ。確かに一人は気楽でいいもんですが、一人がいいと思ったことはありません。たまたま縁がなかったと言うだけです。もちろん仕事へ行けば同じ仕事をしている人たちが大勢いて、そこではうまくやっていますよ? 多分」
「それを聞いて少し安心しました。無理やり押しかけるようになってしまいご迷惑をおかけするのではないかと心配していたのです。ですがこうして何から何までお世話になって大変ありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです」
初めて他人を家に入れてこうして話をしている満と、初めて家族を離れ一人になったエレナ姫、対照的な二人の同居生活はこうして始まった。




