7.初めての夜
まともに話せるようになったエレナ姫は、これまでの経緯を事細かに話した。満はそれを聞いてやや憤ってみたものの、だからどうすればいいのかはわからない。
「そう言えばさっき、オレを選んでやってきたと言ったよね? 孤独指数ってのが当てはまったってのはわかるんだけど、それで解決できそうなのかい?」
「それは―― 正直わかりません。なんといっても船にお乗せすることもできませんからモンガー星へご一緒するのは難しいではありませんか」
「そうだよねえ。いくらなんでもその船に乗るのはちょっと無理がある。かといって地球にはほかの星へ行けるような宇宙船はないんだ」
「ですがお願いです。何かいい方法が見つかるまでこちらへ置いていただけないでしょうか。わがままは言いませんし必要なら働きます」
「エレナさんが良ければいてくれて構わない、というかむしろ歓迎するよ。自分のほかに誰かがいると言うのはなかなかいいものだなと思い始めてるんだ。いつもは一人でテレビへ話しかけたり、誰もいないのに独り言を言ったりしていたからね」
『ピピッさすが孤独指数が800オーバー……』
『これ、無礼なことを言わないでください』
「ありがとうございます。なにか満さんのためにできることがあるといいのですが…… せめて水のお代だけでも払えるようななにかを……」
「そんなの必要ないよ。たかが水だしね。それよりも一人で待っているときには絶対に部屋から出てはいけないよ。エレナさんのサイズだと猫にさらわれるなんて簡単そうだし、場合によってはカラスが飛んできてしまうかもしれない」
「その時はコレがありますから平気です。でも心配おかけしてしまうかもしれませんのでじっとしておりますね。ちなみにこのお部屋は陽の光が入りますか?」
「うん、こっち側が南だから朝になってしばらくすれば陽が差し込んでくるよ」
「このあたりでしょうか? ではここへ」
エレナ姫が宇宙船に向かって声をかける。するとすすっと音もなく飛び上がり、主の元へと向かっていき指定された場所へと着地した。
どうやらそこで寝ようと言うことだろうが、その場所は満のベッドの頭の上である。満はにわかに緊張してきた。
いくら相手が宇宙人だろうときれいな女性である。なにも起こりえないとわかっていても女性と一晩を明かすのは初めての満だ。
すでにぬるくなっているビールを飲み干すと、いそいそと寝る支度を始めた。とはいえこの場で着替えるわけにもいかず、シャワーを浴びてからしっかり着替えて戻ってくる。
「地球人は色々と着替えをするのですね。私も着替えたほうがよろしいですか?」
「いえいえ、楽に、自由にしてて結構です。ただできればもう少し肌を出さない格好だと助かります」
「なるほど、私の服装が地球の水着のようで気になるのですね?」
「い、いや、まあ、その通りです……」
「それではさっそく――」
エレナ姫がなにかをすると、一瞬で満と同じパジャマへと着替え終わっていた。形色柄すべてが同じである。
「ちゃんと同じにできていますか? おかしいところがあれば教えてください」
「いいえ、全く一緒に見えますね。すごい科学力だなあ。それもナノマシンですか?」
「はい、小さな粒が連なって衣服などに見えるよう体を包んでいるのです。普段は先ほどの服が一般的なのです。私たちは必要に応じて水の中へ飛び込むのでそれに適した服装なのです」
「そうだろうね。動きやすくてすぐ乾くって考えると面積も少なくなると……」
「ええ、その通りです。ミツルは聡明で話しやすいですね。あ、敬称つけず申し訳ありません。モンガーの言語には敬称がないものですから。ですので私のこともエレナとお呼びください」
「ええっと、わかりました。でも一国のお姫さまなんですよね? そんな偉い人を呼び捨てにしていいのかなあ」
「偉いのではなくただの役目ですから。血族の女性には盾か鉾のどちらかが継承されます。それを使って国や星を守るのが王族の役目なだけ。決して偉いわけではないのです」
「それはわからなくもないけど…… でも極力努力してみますね。今日はもう遅くなったのでそろそろ寝ます。え、エレナも夜は寝ますよね?」
「はい、普段は陽が落ちるとまもなく就寝し、夜明けと共に起きる生活ですが、そこはミツルにあわせるので気にしないでください」
「あまり窮屈にならないよう自由にしてくださいね。動物にだけは気を付けるってことでね。それではおやすみなさい」
「おやすみなさい」
そうは言ったものの、満は布団の中にうずくまってなかなか寝付けなかった。




