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無敵のサラリーマンと異星の姫~全てを超えた愛はなにを救うのか~  作者: 釈 余白


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4.言語学習

 誰が見るわけでもなくテレビの音が鳴り続けている。


 ニュースは特に面白いことは無く、どこかで事故があった事件があったなんて暗いものや、政治家がこんな発言をしたからけしからんみたいなものばかりである。


 それでもエレナ姫と宇宙船にとっては有用であり、次々に学習を積み重ねていく。


『ピピッ、かなり複雑な言語のようなのでまだ時間がかかりそうです』


『わかりました、続けてください。でも最初に言われた通り、ハイとイイエ、良いとダメがあっているようなので急場は何とかなりそうです。水を飲んで体力戻りましたし、時間をしっかり使って問題ありません』


『ピピッ、かしこまりました。それにしても対象はいったい何をしているのでしょうね。先ほどから板のようなものをずっと覗き込んでいますが』


『顔が点滅したり目でなにかを追ったりしているので、情報端末的な遺物ではないでしょうか。映像を見る装置を手で持つと言うのは我々も通ってきた道ですから』


『ピピッ、それにしても視覚が使えないのは不便です。そちらへ飛んで行ってもよろしいですか?』


『それはいけません、ここに来るまでの道中、空を飛んでいるものはなにも見かけませんでした。もしかしたら未知の物体として怪しまれてしまうかもしれません。こんなことなら一緒に運んでもらえばよかった』


『ピピッ、もしですよ? 対象が姫の伴侶にふさわしいとして、どうやって連れて帰りましょう。文明レベルからすると星間飛行はムリなのではありませんか?』


『その時はまた方法を考えましょう。この方がモンガー星へ行くことができればルズウェブはひとひねりでしょうにね』


『ピピッ、大きいだけでこけおどしでないことを願いましょう』


 宇宙船が日本語の学習を続けているさなか、満は宇宙人について検索をしていた。しかし特に有用な情報は得られていない。


 目撃情報はもちろんのこと、過去に似たような宇宙船や宇宙人を見たなんて噂もなにもない。


 それもそのはずで、宇宙船によって適性が高いと選ばれたのが満だったのだ。と言っても当然当人はそんなことは知らなかった。


 こうして無事に邂逅(かいこう)を果たした二人。とりあえず水は飲ませてみたものの、食事はどうすればいいのだろうと満は考え込む。


 まさかペットフードと言うわけではないだろうし、かといって人間と同じものでいいのだろうか?


 そう思った満は、つまみに買って来た枝豆を一粒差し出してみたが、エレナ姫はそれを欲しがらず首を振って断った。それから水をもっとくれとペットボトルとキャップを交互に指差している。


「ええっ!? もう飲んじゃったのかい? 小さい体なのにすごいなあ」


『ピピッ、もう飲んだのか、小さいのにすごい、だそうです』


『すごくなんなんでしょう。すごいだけでは意味が分かりませんね』


『ピピッ、申し訳ありません、今の学習レベルではここまでが限界です。もう少しお待ちください』


 宇宙船は相変わらずテレビの音声を聞いているが、そこで何が行われているのか、つまり映像情報がないので学習に時間がかかっているとエレナ姫へ説明していた。


 焦らずとも問題ないと伝えたエレナ姫は、水のお代わりを得るために上半身をキャップへと突っ込んだ。


「ちょっとちょっと!? なにしてるんだ!? 溺れてしまうじゃないか」


 満が慌ててエレナ姫をつまみ上げようとすると、満の指先が跳ね飛ばされ激痛が走った。それはまるで感電したかのような鋭い痛みである。


「いてててて、なんだ!? 静電気? いてええ」


『ピピッ、防御が働いている、とお答えください』


「防御が働いている」


「なるほど、むやみに触れて悪かった、ごめんなさい。でも頭から水に突っ込んだから溺れてしまうと思ったんだ。いったいどうしたのさ。少なくて飲みにくいなら言ってくれたら足してあげるよ?」


『ピピッ、どうやら地球の人類は口から食料を摂取する雑食性のようです。そのためエレナ姫の行動が奇異に思えたのでしょう』


『うまく説明できそうですか?』


『ピピッ、現在までの学習で同時翻訳モードに移行しますか?』


『試してみましょう。同時翻訳開始』

「同時翻訳開始」


「えっ? なに? 翻訳? これで話せるようになりそう? もしかしてテレビをつけてと言ったのはそのせいなのかい?」


「痛いかった? 姫の身体には光の防御がある。注意が必要。ごめんね」


「そっかそういうこと…… あなたはどこかのお姫さまなのか。だから何かの光に身を守られているんだね。理解した!」


「宇宙船。ここ。運ぶ。できる?」


「ああ簡単にできるよ。ポケットに入るくらいだったもんね。じゃあ今すぐ行こうか。今度はカバンを持っていくからそこへ入るといいよ」


 ようやく意思疎通ができるようになり大喜びの満は、ウキウキ気分で宇宙船へと向かうのだった。



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