2.光る人影
日本のとある地方都市、平凡なサラリーマンである塵保満はいつものように夜遅い時間に帰宅の途についていた。
コンビニで缶ビールとつまみを買っての帰り道、まだ酔ってはいないのにおかしな現象が目に入る。
「なんだあれは!? 隕石!? 火球ってやつか? まさか宇宙船だったりしてな」
満はよれよれのスーツをひるがえし、何かが落ちたであろう場所へと急ぐ。その時は落下音がしていなかったことに疑問を持っておらず、危険だと考えることもなかった。
簡単に分け入ることができない程度に木の茂った藪山へと押し入っていくと、そこにはまるで薬のカプセルのような物体がありうっすらと光っている。
周辺の木が折れている様子がないので、落下してきたと言うよりは不時着したと言えるだろう。
「これってもしかしなくても宇宙船!? つまり宇宙人が乗ってるのか!?」
ぶつぶつ言いながら遠巻きに眺めていると、カプセルが音も立てずに開いていく。すると隙間からまばゆい光とともに人影のようなものが見えてきた。
満は特に勇敢なわけではないが、守るものも捨てるものもなくただ毎日生きるために生きていると言うような生活をしているだけだ。
それでいて好奇心は人並みにあるので、逃げることもなくただ眺めていた。
「これって宇宙人だよなあ…… もしかして地球を征服に来たとか? いやでも一人で来てもどうにもならないだろうし、偵察とか逃げてきたってくらいだろうなあ」
一人暮らしが長いと独り言が多くなる。そんなことを自覚している満にとって、たとえ宇宙人でも身近な誰かとして知り合いになれるのではと期待してしまう。
もし友好的でないとして殺されでもしたらと考えなくもないが、その時はその時で運がなかったとあきらめるしかない。満にとって自分の価値はその程度だった。
◇◇◇
『ピピッ、エレナ姫、対象はこちらに興味を持っている模様。ただし友好的かどうかはわかりませんから盾を解除なさらぬようご注意ください』
『承知、ところで言語の解析はできそうですか? 言葉が通じればなにかしらの意思疎通はできる程度の知能はありそうに見えます。背格好は似たようなもの、服装からはある程度の文明を感じますね』
『ピピッ、その通りです。地球では人類が生命の頂点におり、その他の生物をすべて手中に収めています。この地区の言語ですが、調査済みの言語ではないので解析には少々時間がかかりそうです』
『わかりました。それは並行して進めてください。ひとまずこの人類に助けを求めると言うことでよろしいですか?』
『ピピッ、はい。周辺をスキャンした人類の中では最適だと判断しました。好戦的ではなく孤独指数が800を超えています』
『孤独指数800以上ですって!? それはもはや命の危険どころか生きているかも怪しい数値ではありませんか。いくら地球人が我々と異なるとはいえ、その数値は驚きです』
『ピピッ、その通りです。地球人は総じて孤独指数が高く、好戦的数値も高いので注意が必要です。ただしこの人物は地球人の中では温厚であり、危険はおそらく少ない、はず』
『どうもはっきりしませんが、今はこの人物に賭けてみましょう』
◇◇◇
カプセルが完全に開くと中からは明らかに地球人と同じような姿が現れた。大きく違っているのは、露出している肌がすべて光っていることだ。
着ているものは水着のように布部分が少なく、満は凝視するのをためらい目をそらした。だが興味を失ったわけではない。
「あのう、もしかして宇宙人、ですか? オレは地球人で塵保満と言います。言葉は通じている?」
すると光を放っている手を左右に振って通じていないと言っているように見えた。通じていないのに返事ができることに疑問を覚えた満だが、ひとまずついてくるように促してみる。
いくらなんでもこのままじゃ目立ってしまうし、猫や犬と違って人だから、アパートへ連れて帰っても問題ないだろうという判断だった。
満はゆっくりと手を差し出すと、その宇宙人らしき女性を手のひらに乗せた。




