1.クーデター
広い宇宙には地球とは異なる人類が住む星がある。それ自体に何の不思議もないだろう。
UFOが目撃されているからという陳腐な理由ではなく、地球があるのだからほかにも同じ条件の星があってもおかしくはないと言うのがその根拠である。
そして太陽系の外側の遠い星にも人類が生まれ、高度な文明を築いていた。
「エレナ姫? そろそろあきらめたほうがいい。ご両親はすでに失脚し、この星の実権はこのルズウェブにあるのだから」
「しかし国民のほとんどはそれがクーデターであることを知っていますよ? そんな状態で民がついてくるはずがありません」
ルズウェブと言う名の恰幅のいい男はつやつやの黒髪をなでつけながらねちゃりと笑いエレナ姫へと近寄る。
「いいかな? 結局は力あるものへ逆らうことなどできないのだよ。それに姫が我がものになれば権威も我のものだ。」
「ありえません、そんな薄汚い思考を持ったものと相いれることなど一生!」
「ではご両親がどうなってもよいと?」
「できるものならやって見なさい。あなたの力で王族を屈服させることなどできません。妹のルミアもついているのだから」
「ぐぬぬ、まったく強情な奴め。それでは力づくで言うことをきかせるしかなさそうだな。後悔しても知らぬぞ?」
そう言ってルズウェブはエレナ姫へ手を伸ばした。しかしエレナ姫が発した光によって、ルズウェブは数歩後退するように跳ね飛ばされてしまう。
これこそが王族の持つ不思議な力、聖なる盾である。そしてもう一つの力である勇なる鉾はルミアがその身に宿しているのだ。
だがルズウェブとて王族の末席に名を連ねるもの、王族の盾と鉾でも致命傷は負わせられない。
すなわちこのままこう着状態が続くと言えるだろう。
「誰かに助けを求めなければ……」
そう考えたエレナ姫は、いったん自分の屋敷へと戻り、宇宙船へと話しかける。
「どこかにルズウェブを倒せる者はいないのでしょうか。強い愛の力を持つお方さえいればルズウェブを貫ける王族の剣が私たちに授けられるのですから」
『ピピッ、調査の済んでいる範囲だと、太陽系にある地球には、未知なる生命体への抵抗感が薄く、正義感が強く、それでいて惚れっぽ―― いいえ、情の深い人種がいるようです』
「わかりました。このままではなにも変わりません。その星へ向かいましょう。良いご縁とめぐり合うことを祈って――」
エレナ姫は宇宙船に乗りこみ、地球を目指し飛び立った。




