知っても知らなくても
捜査資料が机へ並べられていた。
失踪者、七名。
全員女性。
年齢は二十一から二十九。
職業も住んでいた場所も違う。
共通点は少ない。
けれど、
写真を並べると妙な統一感があった。
「……似てるな」
若い刑事が呟く。
藤堂は黙ったまま写真を見る。
笑顔。
長い髪。
柔らかそうな雰囲気。
誰かへ向けられた自然な表情。
「全員、綺麗系ですね」
「モデルみたいな派手さじゃない」
藤堂が言う。
「普通に街で見かけて、振り返るタイプだ」
資料がめくられる。
失踪前の足取り。
レストラン。
バー。
カフェ。
男と会っていた記録。
けれど男の身元は毎回曖昧だった。
「偽名ばっかです」
「顔は?」
若い刑事が数枚の写真を並べる。
防犯カメラ。
駅。
飲食店。
どれも鮮明ではない。
だが、
同じ男が映っていた。
静かな顔。
整った輪郭。
感情の薄い目。
「……奇妙なんですよね」
若い刑事が写真を見る。
「何がだ」
「全部、女を見てる」
藤堂は視線を上げる。
「この人、自分が映ってるの気づいてない時でも」
駅の映像。
横断歩道。
カフェ。
全部、
女の方を見ている。
笑っている時。
話している時。
スマホを見ている時。
黙っている時。
その表情ばかりを。
「顔じゃないんですよね」
「は?」
「なんていうか……」
若い刑事は言葉を探す。
「表情を集めてるみたいで」
部屋が静かになる。
藤堂は一枚の写真を手に取った。
カフェの窓際。
女が笑っている。
男はその顔を見ていた。
まるで、
忘れないようにするみたいに。
「……収集癖か」
藤堂が低く呟く。
「モノみたいに扱ってる?」
「いや」
藤堂は写真を机へ置く。
「モノ扱いならもっと雑だ」
静かな声だった。
「こいつ、多分……大事にしてる」
若い刑事が顔をしかめる。
「それ、余計怖いですよ」
藤堂は返事をしなかった。
ただ、
並んだ女たちの笑顔を見ていた。
どの写真も、
“生きている時の顔”だった。




