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奇妙な点

藤堂は映像を止めたまま、

 しばらく動かなかった。


 暗い部屋。


 並ぶケース。


 ノイズだらけの映像なのに、

 妙な整頓感だけははっきり伝わってくる。


「……奇妙なんだよ」


 低い声だった。


 若い刑事が顔を上げる。


「何がです?」


「違和感が無さすぎる」


 部屋が静かになる。


 藤堂は画面を指差した。


「見ろ。家具が少ない」


 テーブル。


 棚。


 照明。


 生活に必要最低限のものしかない。


「でもケースだけ異様に多い」


 若い刑事が息を呑む。


「普通逆なんだよ」


 藤堂は続ける。


「人間って、自分が大事にしてるものほど“生活に混ぜる”」


 本棚。


 服。


 趣味。


 写真。


 好きなものは部屋に滲む。


 だが。


「あいつの部屋には、自分が無い」


 静かな声。


「ケースだけがある」


 若い刑事がモニターを見る。


 整いすぎた四角。


 無機質な並び。


 冷たい光。


「……確かに変ですね」


「それだけじゃない」


 藤堂は目を細める。


「数だ」


「え?」


「多すぎる」


 即答だった。


「仕事なら保管場所借りる。コレクションなら飾る。なのに全部閉じて積んでる」


 誰も口を挟まない。


「しかも隠してる」


 カーテン。


 暗い部屋。


 見えない位置。


「見られたくない。でも捨てたくない」


 藤堂はそこで言葉を止める。


 雨音だけが響く。


 若い刑事が小さく呟く。


「……執着、ですか」


「多分な」


 藤堂はコーヒーを飲む。


 冷え切っていた。


「あと不可解なのは」


 モニターを指差す。


「全部同じ向きに置かれてる」


 若い刑事が顔を近づける。


 確かに。


 金具の向き。


 持ち手。


 配置。


 綺麗に揃っていた。


「几帳面……?」


「いや」


 藤堂は低く言う。


「“扱ってる”んだよ」


 その一言で、

 空気が変わる。


「荷物として積んでるんじゃない」


 静かな声。


「中身を意識して置いてる」


 若い刑事の背筋へ、

 冷たいものが走った。


 藤堂は再び映像を見る。


 暗い部屋。


 並ぶケース。


 閉ざされた空間。


「……まるで墓だな」


 誰も、

 何も言えなかった。

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