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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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233/370

233 久しぶりの1階層

美咲相手に魔法の練習をしている聡史と美鈴は……

「美鈴、大丈夫か? おーい、美鈴… どこに行くんだ?」


 間近で問いかける聡史の言葉も耳に入らない様子の美鈴。そのまま幽鬼のようにベンチから立ち上がると、フラフラと歩いて演習場の角まで行って、その場で体育座りをする。よくよく耳を澄ますとその口から呪詛のような響きの呟きが紡がれている。



「私のバカ。私のバカ。私のバカ。 ひとりで盛り上がって聡史君と二人きりじゃないのを忘れてた…」


 何しろ大魔王様の呪詛だけにその言霊の威力は強烈過ぎて、壁や天井の打ちっ放しのコンクリートの表面がボロボロと崩れていく有様。さすがに放置しておけないので、聡史は遮音と遮蔽の効果を持つ結界で美鈴を覆って周囲から隔離。一応結界の効果はあるようでコンクリートの崩壊は収まっており、聡史は美鈴を結界内に放置することに決める。これは何も聡史が薄情だったというわけではなくて、美鈴の精神力ならば自力で立ち直れると信じているからに他ならない。


 ということで、ようやく一時お預けを食らっていた本来の目的である美咲の魔法の訓練が始まる。



「それじゃあ始めるぞ。今のレベルでは闇属性を扱うのは少々危険を伴いそうだから、まずは基本のファイアーボールを撃ってみてくれ」


「ははははは、はい」


 やはり美咲のドモリ癖はそうそう簡単に治るわけではない。気長にヤルさという気持ちで聡史は美咲の指導に当たっている。


 一方の美咲はといえば、開始戦に立って奥に鎮座する金属製の的に正対する。そして…



「闇と深淵からいずる悠久なる大魔導士がここに命じる。燃え盛る炎よ、我の意思に従いて虚空を飛翔し、しかる後に爆ぜよ」


 手前に掲げた岬の右手からはバレーボール大の炎が飛び出して、的に当たってから小規模な爆発を生じる。一応の基本はできているようだが、後ろで見ている聡史の見る目は厳しい。



「0点だな。実戦では使い物にならない」


「れれれれれ、0点ですかぁぁ」


「ああ、悠長な詠唱を行っている間にゴブリンでも楽々お前に飛び掛かってくるぞ。魔法の発動は極限まで早めないとパーティー全体にとって命取りに繋がりかねない」


「でででで、でも、この詠唱でないと魔法が上手に発動しないんです」


 どうやら美咲は長期間厨2キャラを演じていたせいで、魔法発動時の詠唱も厨2セリフでないと上手くいかないらしい。ここまで色々とコジらせてきた弊害がもろに出ているよう。



「授業で簡略化された魔法式を習わなかったのか?」


「ななななな、習いましたが、何回やっても上手く発動しません」


「それじゃあ俺が見本を見せるから、イメージとして頭に焼き付けるんだ」


「おおおおおお、お願いします」


 今度は美咲と場所を代わって聡史が開始戦に立つ。軽く右手を掲げると、脳内イメージだけで5発のファイアーボールを立て続けに放っていく。



 ドゴーン、ドゴーン、ドゴーン、ドゴーン、ドゴーン


 聡史のファイアーボールは奥にある5つの的全てを撃ち抜いている。さすがに初級魔法で威力控えめとあって的を破壊するまでは至ってないが、美咲には十分なインパクトを与えている。



「すごい…」


 美咲自身は気付いていないが、ドモらずにすんなりと言葉を発している。先程美鈴が教えた「心に浮かんだままの言葉を口にしろ」というのが極々自然に出来ている。



「このぐらい出来て初めて実戦で使える魔法… というのを忘れないでもらいたい」


「は、はい」


 どうやら聡史の魔法は美咲の心を大きく動かしているよう。緊張して言葉が中々出ないという彼女の不安を一時的ではあるがきれいに払拭している。



「詠唱はすべて頭の中で行うんだ。言葉にすると相手にも悟られる恐れがある。魔法使いというのは頭の中は常に冷静で、かつクリアにしておく必要があるからな」



「わかりました。今すぐに出来るとは思いませんが、とにかくやってみます」


 いつの間にかスラスラと聡史に向かって喋っている美咲がいる。本人だけが自分の変化に気付いていないだけで、聡史のほうはすっかり美鈴の口調がスムーズなっているのを感じている。もちろんその表情は、先程大泣きして自信なさげだった彼女よりもはるかに明るくなっている。


 そして美咲は、失敗を恐れずに何度も頭の中で素早く詠唱を繰り返してファイアーボールに挑んでいく。



「99回失敗してもいいから、100回目に成功させるんだ」


「はい」


 聡史の励ましに応える美咲。そして彼女は99回まで行かないうちに、ついに無詠唱で魔法の発動を成功させる。


 ドーン!


 残念ながら的を外したものの、美咲のファイアーボールはコンクリートの壁にぶつかって小さな爆発を引き起こしている。



「いいぞ、今のイメージを忘れるな。もう1回だ」


「はい」


 元テニス選手である修造さん張りの熱血指導によって美咲は立て続けにファイアーボールを成功。その後も安定して3発のファイアーボールを放ったことろで彼女の体はヘナヘナと床に崩れ落ちていく。



「どうやら魔力切れだな。レベル2ではそうそう何発も撃てないのをすっかり忘れていた」


 力なく座り込んでいる美咲の体を抱えると、聡史は彼女をベンチに座らせる。アイテムボックスから魔力ポーションを取り出すと、ビンを口元に当てていく。



「味は最悪だが体が動くようになるから、我慢して飲んでくれ」


「はい」


 聡史がビンを傾けると、水色の液体が美咲の口の中に流れていく。そのあまりにひどい味に顔をしかめながらも、彼女は何とか魔力ポーションを飲み下す。



「ブヘェェェ… に、苦いですぅぅ」


 ゲホゲホと咳き込みながらも、美咲は多少魔力が回復したことで顔色がよくなっている。ようやく口の中に残ったヒドイ後味が薄れると、美咲は聡史に向かって向き直った。



「あああ、ありがとうございました。おかげさまで、魔法が上手に発動できるようになりました」


「まだレベルが低いから、あっという間に魔力が空っぽになるようだな。連休中に一緒にダンジョンに入ってもう少しレベルを上げておこう」


 聡史の言葉を聞いた美咲の顔はまるで花が咲いたように綻んでいる。つい昨日は人と目を合わせるのも困難で厨2キャラでないと会話もできなかった少女が、今や聡史とかなり普通に喋っているのであった。




   ◇◇◇◇◇




 同じ時間、桜は順調に回復した学に武道場で稽古をつけている最中。



「学君、攻守を入れ替えましょうか。私を投げてください。ああ、手加減はいりませんよ。殺すつもりでやっていいですから」


「でも危険じゃないの。いくら何でも桜ちゃんにそんなことはできないよ」


「遠慮しないでいいですから。学君がどんなに頑張っても投げ技で私が怪我をするなんてありませんから。それに床もクッションが利いていますしね」


「本当にいいの?」


「どうぞ、全力で投げてください」


 ニッコリ微笑みながら、桜は右手を差し出して学に掴ませる。学を掴んだ腕を軽く捻って下方向に引き下げながら桜の重心を崩していく。そして彼の狙い通りに桜の体が宙に浮いていく。


 スタッ!


 だがこの程度の投げを技では桜を床に叩き付けるなど到底不可能。巧みに体を捻ると余裕で足から着地して、今度は逆に学の腕を掴んで投げ放つ。



「ええぇぇ!」


 宙に放り投げられた学は、自分に何が起きているのか全く理解しないままに大声を上げている。


 ズダーン!


 マットの上なのでダメージはないのだが、あまりに鮮やかに桜に投げを返されて学は呆然とした表情。



「こうやって返されることもありますから、油断してはいけませんよ」


「いやいや桜ちゃん。僕は腕をちゃんと極めていたし、あの態勢から足で着地するなんて普通に考えてあり得ないよ」


「あり得ないことを実現するのが、その道を究めることですわ。私を転がすまでひたすら投げ続けなさい」


 ということで学は桜を何とかして投げようと何度も挑んでいくが、その度に彼を嘲笑うがごとくに技を無効化されるばかり。



「桜ちゃんがいない間に僕も道場で頑張って少しは強くなったと自負していたんだけど、どうやら思い上がりだったみたいだね」


「いいえ、学君は中学生の頃から比べると確段に技のキレが良くなっていますわ。でも学君、私もいつまでも同じ立ち位置にいるはずないですわ。学君が想像するよりもはるかに強くなっていますから」


「そうだったんだ。それじゃあ僕はこれから桜ちゃんに追いつけるようにもっと頑張るよ」


「ええ、ぜひとも追いついてもらいたいですわ」


 レベルひと桁の学と700オーバーの桜では、まだまだその差は果てしなく遠い。だが何も知らない学は桜に追いつくという大胆な宣言をしている。まあそれはともかくとして、学の発言を聞いた桜の目がキラリと光る。



「私に追いつこうとするのは中々大変な道のりですよ。それはともかくとして学君」


「なに、どうしたの?」


「ゴールデンウイークの初日は、何か予定はありますか?」


「たぶんクラスのパーティーでダンジョンに向かうんじゃないかな」


「その日だけお仲間に断ってパーティーを抜けてもらえますか。私たちと一緒にダンジョンに入りましょう」


「ええ、本当! 桜ちゃんたちと一緒にダンジョンに入るなんてすごく光栄だよ。仲間には断りを入れておくから、よろしくお願いします」


 こうして学は1日だけ桜たちとダンジョンに同行することが決定するのであった。




   ◇◇◇◇◇




 日本国内はゴールデンウイークに突入し、どこの観光地も観光客が訪れてごった返している。もちろん魔法学院も連休中は授業は休みで、中には実家に帰省する生徒の姿も目立つ。


 そしてその初日、デビル&エンジェルのメンバーはいつものように管理棟のエレベーター前に集合している。誰も帰省予定はなく、クルトワを加えたメンバーが装備を整えて集まってくる。そこに…



「おーい、こっちだぞ。早く来いよ」


 聡史が大声で呼んだ先には2年生が集まっている場所に自分から足を運べなくて固まっている美咲の姿がある。声を掛けてもなお動こうとしない美咲に呆れつつも、聡史が歩み寄ってその腕を掴んで引っ張ってくる。



「今日はこの美咲のレベル上げに協力してもらいたい」


「闇と深淵からいずる悠久の大魔導士…」


 ペシッ


「い、痛い」


「そういうのいいから」


 聡史に頭をはたかれて、朝から美咲は涙目になっている。



「ほら、普通に挨拶」


「どどどどどどどどど、どうぞよろしくお願いします」


 普段の3割増しでドモリ癖が悪化している美咲。聡史と二人っきりだとかなり普通に喋れるようになったのだが、こうして大人数のほぼ初対面同然の人間の前では、依然としてドモリ癖が終息する兆候はない。



「お兄様、いつの間に後輩に手を出したのですか?」


 桜の発言に全員が一斉にツッコミを入れたげな表情だが、温かく見守るという聡史の方針を思い出して懸命に口をつぐんでいる。それにしても桜は、学の件をよくぞこれだけ棚の上に載せられるものだ。ちょっと悔しい聡史は全員を代表して…



「『後輩に手を出した』などというあらぬ誤解を桜には指摘されたくない気がするが、まあいいだろう。美咲はこの前校門で拾った。今は魔法を教えている最中だ」


「拾っただなんて、犬猫ではあるまいし。まあその件はいいですわ。妹の桜ですの。美咲さん、どうぞよろしく」


「ここここここ、こちらこそ」


 1年生に広まる噂は美咲も当然耳にしている。学院最強かつ八校戦のオープントーナメント2冠王の桜を前にして、これだけ口にできただけでも大きな進歩かも知れない。するとそこにもうひとりやってくる。



「すいません、遅くなりました」


「まだ時間前ですから、そんなに慌てなくても大丈夫ですわ。皆さん、今日はこの学君も一緒にダンジョンに向かいますので、お願いしますわ」


「先輩方、足手纏いにならないように付いていきますので、よろしくお願いします。それからカレン先輩、先日は怪我を治してもらってありがとうございました」


「気にしなくていいですよ。回復はお手の物ですから。調子はどうですか?」


「もうどこも痛くないし、絶好調です」


 大人びたカレンの姿に、学は顔を真っ赤にしている。秘かに男子生徒の裏アカウントで実施されている学院美少女人気投票で断トツの1位に輝く悩殺天使に学も目の遣り処に困っている様子。そんな様子の学の態度を断ち切るかのように桜の声が響く。



「それではダンジョンに向かいましょうか… その前にこのままですと人数が多すぎますので、2つに分かれませんか?」


「そのほうが効率的だな」


 聡史も賛成に回ったので、急遽この場で組み分けが始める。その結果聡史の班には、美鈴、クルトワ、美咲が、桜の班には、カレン、明日香ちゃん、学という感じで、四人ずつの即席パーティーが出来上がる。美鈴は例の厨2言動によってここ最近相当なダメージを受けたが、魔法の指導役という意味合いもあるので美咲と一緒にされている。さらには美咲の闇属性の適正という、これから色々と教え込まないといけない課題が残されており、これから先の長い付き合いを考えると美鈴の目から自然に涙が滲んでくるのであった


 美咲の厨2言動にいちいちダメージを受けている美鈴とは違って、クルトワは美咲の態度を平然と受け止めているよう。そもそも魔族自体が「闇の」とか「深淵なる」という単語を枕詞のように用いることもあって、あれだけ周囲が引いている美咲の厨2言動を至極普通の会話として受け取っているらしい。



 

 ということで、総勢8名に膨れ上がった集団はダンジョンへと向かう。事務所に到着すると桜が…



「お兄様たちは、どこの階層に向かいますか?」


「美咲はまだレベル2だから、深部には連れていけないだろうな。しばらくの間1階層でゴブリンの相手をさせてみる」


「私も今日は1日1階層を回りますわ。それではちょっと装備の登録があるので、カウンターで手続してきます」


「わかった、俺たちは先に中に入っているぞ」


 こうして一足先に、聡史たちの班がダンジョンの入り口に入っていくのであった。




   ◇◇◇◇◇




 ゴールデンウイーク初日ということもあって、平日は1年生の姿が多数みられる大山ダンジョンの入り口付近も今日は人影がまったく見えない。



「俺が先頭を務める。美咲、美鈴の順で続いて、クルトワは背後に気を配ってくれ」


「はい」


 ということで、一列になってダンジョン内部に進んでいく。いくら何でも今の聡史たちからすれば1階層は軽い散歩気分なのだが、美咲はこれまで2回しかダンジョンに入った経験がないものだから相当緊張している様子。



「美咲さん、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。ゴブリンが出てきたら前もって聡史君が教えてくれるから」


「クックック、悠久なる大魔導士に見通せぬことなどない」


「お願いだから、普通に喋ってぇぇぇ!」


 いきなり美鈴に声を掛けられてつい厨2キャラが顔を覗かせた美咲によって、美鈴のライフが5ポイント削られている。今日も長い1日になりそうな予感。



「美咲、ファイアーボールを準備しておけ。この先の角からゴブリンが現れるぞ」


「クックック、、この悠久なる…」


「いいから教えたとおりに頭の中で詠唱を組み立てろ」


 一度身に付いた癖はたった1日程度の練習で急に改善するものではないよう。聡史に注意された美咲はハッとした表情に変わって、脳内で大急ぎで詠唱を開始。その直後に、聡史の言葉通り角からうっそりとゴブリンが姿を現す。



「今だ!」


「ファイアーボール」


 美咲の右手から飛び出した魔法はゴブリンの胴体中央にぶつかって小規模な爆発を引き起こす。音響と煙が消え去ると、通路にはバラバラになって倒れているゴブリンの死体が残されるのみ。


 ピコーン!


 美咲の脳内で聞きなれない音が響く。もしかしてと思ってステータスを開くと、そこにはレベル3という文字が…



「やりましたぁぁ! レベルが上がりましたぁ」


「そうか、良かったな」


 嬉しそうに聡史に報告する美咲に対して、美鈴のジトっとした視線が…



「もう、美咲さんは普通に喋れるじゃないの」


 美鈴の言葉にハッとする美咲。



「クックック、悠久の大魔導士にとっては所詮は通過点に過ぎぬ」


「いちいち言い直すなぁぁぁ!」


 聡史のツッコミが入っている間に、再び美鈴のライフが5ポイント削られている。こんな感じで、午前中はしばらくゴブリン狩りに時間を費やす聡史たちであった。


 


 一方聡史たちにやや遅れて、桜たちもダンジョンの内部に入り込んでいる。



「桜ちゃん、1階層を回るなんて久しぶりですね~」


「そうですわね。1年前の今頃は私たちもこの辺をウロウロしていましたね」


「あれから色々とありましたね~」


「色々ありすぎでしたわ」


 桜と明日香ちゃんが、この1年間を振り返っている。確かに二人が言う通り、色々とありすぎた1年であった。と、そこで…



「学君、前からゴブリンが来ますわ。魔法は使わずに戦えますか?」


「はい、頑張ります」


 学が自分のパーティーで活動する際は、いつも後衛からの魔法支援役を務める。正面から肉弾戦でゴブリンと対峙するのは今回が初めての経験。


 ギギャー!


 1体のゴブリンが姿を現すと、桜はスッと後ろに下がって学に場所を明け渡す。先頭に立った学はゴブリンに怯む様子もなく5歩前進して構えを取る。


 ギャー!


 両手を伸ばして掴み掛ろうとするゴブリンだが、学はその左腕を取って軽く捻ってから下方向に力を加える。桜との練習通りの流れるような滑らかな動き。ゴブリンは何をされているかもわからぬままに、背中から床に叩き付けられていく。さらに学は掴んでいる左腕を捻り上げて関節を外してから、首に足を乗せて力を加える。


 ゴキッ!


 ゴブリンの首が音を立てて折れると、その体は痙攣しながら息絶えていく。



「いい動きでしたわ。ただし少々問題がありますわね」


「桜ちゃん、どこが悪かったのかな~?」


「学君がゴブリンを倒しきるまで3手かかっていますわ。相手が1体ならまだしも、複数出てきた場合時間がかかりすぎます」


「確かにその通りだよね。ダンジョンでは僕の技は通用しないのかな」


「そうでもありませんわ。次は私が見本を見せますから」


 ということでしばらくゴブリンが現れるのを待つと、また通路の先から姿が見えてくる。



「こんな感じで仕留めますのよ」


 桜が極々軽くパンチを放つと、そこにはゴブリンの姿はなくて、放射線状に肉の破片や体のパーツが飛び散っている。ゴブ汁ブシャー状態。



「す、すごい…」


 目の前で起きた光景に学は目をパチクリしている。たった一撃でゴブリンがバラバラになったのだから、ダンジョンでの活動歴が浅い学にとっては衝撃的な光景であろう。



「こんな感じで打撃技を放ってから仕留めに掛かるのが有効ですわ」


「というよりも桜ちゃん、打撃だけで全部終わっているよ」


「所詮はゴブリンですから。もっと強い魔物を想定すれば、おのずと答えは明らかです」


「そうだね。もっと打撃を鍛えないといけないよね」


「そこで学君にプレゼントですわ。ジャーン、ミスリルの籠手」


 桜がアイテムボックスから取り出すは、燦然と銀色に光るミスリル製の両手に嵌める籠手。桜のオリハルコンの籠手には及ばないが、この品も相当な逸品と言えそう。ただしそのデザインは少々変わっている。籠手は左右非対称となっており、左手用は防御優先で肩まで覆う形状に対して、右手は攻撃優先で手首と肘の中間までしかない。



「これを付けて戦ってみましょう」


「桜ちゃん、なんだかこんなすごい武具を借りちゃっていいの?」


「そんな気にしなくていいですわ。ああ、取り付けを手伝いますから」


 甲斐甲斐しく学が籠手を装着するのを手伝う桜。その様子を明日香ちゃんとカレンは生暖かい表情で見つめている。



「カレンさん、桜ちゃんはいつの間にか世話女房になっていますよ~」


「まさかの光景ですね。画像に収めたら後々ゆすりのタネになりそうです」


 桜に聞こえないように内緒話をする二人。その頃には学の準備が整う。



「今までは魔法職だったから何の武装もなかったけど、こうして装備に身を包むと一人前の戦士になったみたいな気がするよ」


「頑張ってください」


 こうしてヤル気も新たにした学は、次々とゴブリンを仕留めていくのであった。

相変わらず色々と見せつけてくれる桜と学、1階層を巡る探索はなおも続いて…… この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


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