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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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231 公園の一幕

いい感じでデートを楽しむ桜たちの前に…

 昨年、魔法犯罪に関する刑罰が新たに制定された。それまでは従来の刑法で裁かれていたのだが、続発する魔法犯罪の処罰強化を求める世論を受けて刑法の付帯条項という形式で追加されている。


 その主な条項は以下の通り。



・魔法を用いた犯罪に対しては少年法を適用しない(20歳以下でも、大人の法律で裁いちゃいますよ♪)


・銃を用いた犯罪と同様に扱い、その罰を一等引き上げる(刑が重たくなるから気を付けてね♪)


・執行猶予は付加しない(遠慮なくブチ込んじゃうから注意してね♪)


・魔法による犯罪で利益を得た第三者に関しても、使用した当事者に準じた量刑を課す(共犯も見逃さないから塀の中で頑張ってね♪)


・罰金刑の最低額は1千万円、上限はなしとする。(いっぱい払ってね♪)


・所定の期限内に罰金の納付がない場合は、一日6千円の計算で全額の支払いに相当する期間収監する(金で払えなかったら体で払ってもらうよ♪)


・刑事事件に関する捜査や取り調べは自衛隊憲兵部が管轄する(警察ほど優しくないから、さっさと白状してね♪)


・別途、服役期間の短縮を可能とする(その代わり、とっても厳しいから覚悟してね♪)


 このような形で、どこから見ても鬼のような内容がズラズラと並べられている。ちなみに刑期の短縮というのは、5年間のブートキャンプに耐えたのちに改心の情が認められた収監者は憲兵隊に採用するという内容であるが、大抵の服役囚は3日で音を上げて通常の服役期間を選択する。


 この刑法の改正に泡を食ったのはいわゆるヤク〇の皆さん。自分たちの組織はある程度規律がとれるからまだいいのだが、配下もしくは提携している半グレ集団や外国人などが勝手に魔法犯罪をやらかしかねない。その罪が自分たちに連座してくるとなると、組織全体の大ダメージに繋がりかねないという危惧を抱くのは当然だろう。そこでそのような反グレや外国人に対しては、片っ端から上部組織の命令によって繋がりを解消する動きが始まる。半グレ集団にとっては今までバックについていた広域暴力団から絶縁されて独自に儲け先を開拓しないと自分たちのグループが成り立たないという問題を抱えることとなる。


 もちろん互いの利害関係が絡むので双方とも必死。ヤ〇ザの皆さんは下部組織を切り捨てたい。下部組織としては、それは困る。結果として双方は利害を巡って対立して、挙句の果てに抗争事件まで勃発する。その結果として治安出動した自衛隊に一網打尽にされて、双方の構成員が大勢パクっと美味しくいただかれるに至った。


 このような事件が勃発して以降、自衛隊の憲兵部は反社会集団にとっては地獄の門番のような眼で見られている。色々と癒着があった警察庁捜査2課とは違ってお目こぼしなどまったくない厳しい取り締まりぶりにこのようなアウトローたちは恐れをなしている。目を付けられたら組織ごと終了とあって、この刑法改正以降魔法を用いた犯罪は目に見える形で減少していく。


 だがゴキブリと一緒で、バカは捕まえても捕まえてもいつの間にか増殖する。現在に至ってもいまだに魔法犯罪が根絶できない理由は、このゴキ野郎に匹敵するバカの増殖スピードと言えるかもしれない。




   ◇◇◇◇◇




 桜たちがベンチに座っている公園では、辺りが薄暗くなってくる頃合いを見計らうかのように人相の悪い連中が三々五々集まってくる。時折様々な層の人間がやってきては、金と引き換えに何かを受け取るような様子が窺える。


 このガラの悪い連中は自分たちでも薬物を摂取しているのか、妙にハイになった奇声などを上げながらその辺にタバコの吸い殻や空き缶を投げ捨てっぱなしで所在なさげにたむろしている。中にはベンチに腰掛けている桜たちに気が付いているのか、その姿をチラチラ窺っているのも一人や二人ではなさそう。



「桜ちゃん、だいぶ暗くなったし、そろそろ帰ろうよ」


「楽しい予感がしてきますから、もうちょっとここにいましょう」


「だって、なんだか変な人たちがいっぱい集まっているよ」


「無視しておけばいいのですわ」


「なんだか雰囲気がよくないし、チラチラこっちを見ているような気がするんだけど」


「気のせいですわ。ところであの人相の悪い連中が襲い掛かってきたら私が戦いますか? それとも学君が男らしく戦いますか?」


「今のうちに帰るという選択肢はないの?」


「はい、私か学君の二択ですわ」


 いやいや、戦う人間が入れ替わるだけで、どちらを選んでも戦う一択だろう。これが桜の発想の根本的におかしな部分。しかし学はすでに分かっている。桜が絶対に引かないことを。



「いくら何でも、桜ちゃんに戦わせるわけにはいかないよ。僕が時間を稼ぐから桜ちゃんは逃げてよ」


「学君はそれでいいんですか?」


「逃げたらダメだって桜ちゃんから言われているから」


「そんなに無理はしなくていいんですよ。学君はまだ修行中の身ですから」


「いや、いいんだ。僕もやっぱり逃げたくない」


「わかりました。学君の意思を尊重しますわ。骨は拾って差し上げますから、安心してください」


「もしかして、僕が死ぬことが前提なの?」


「物の例えですわ。命さえあれば私が何とかしますから」


 とまあこのような話をしているうちに、桜たちに視線を向けていた男たちが集団でベンチに向かって歩いてくる。



「どうやらあちらもヤル気のようですね」


「桜ちゃん、下がって!」


 学は立ち上がって桜を庇うような位置に立ちはだかる。桜はこの場はひとまず学に任せようと完全に様子見の態度。


 近づいてきた男たちのリーダーらしきひとりが、ニヤリとしたいやらしい笑みを浮かべて学を馬鹿にしたような表情で喋り出す。



「おいコラ、そこのガキ共! テメーたちはずっとここで見ていやがったのか? ああ」


「僕たちは特に何も見てはいません」


「ギャハハハハ! ガキが粋がってるんじゃねえよ。テメーらが何を見たかなんてどうでもいいんだよ。どうせここいら辺は俺たちが怖くて警察さえも手出しできねえんだ。そんなところにガキが2匹迷い込んできたから、ちょうどいいオモチャにしてやろうと思っていたんだよ」


「リーダー、後ろの女はまだガキだが、中々可愛い顔をしているぜ」


「これだけの人数相手にするのはキツいかも知れねえが、精々俺たちを楽しませてくれよ」


 どうやらこの連中の目的は、カップルを襲って男性はボコボコにした上で女性に乱暴をするという卑劣な目論見のよう。この時間になるまで桜たちに手出ししてこなかったのは、日がとっぷり暮れて周囲が真っ暗になるのを待っていたのであろう。


 周辺道路に配置されている街灯の明かりは誰もいない無人の道路を虚しく照らしている。その明かりのおこぼれがギリギリ桜たちが座っていたベンチの辺りまで届いているが、公園の中央部はほぼ真っ暗で周囲からの目はほとんど届かない。



「学君、怖い」(棒)


 桜の口から悲鳴とは似ても似つかないまったく別の何かが発せられている。名状しがたい悲鳴らしきものというのが適切かもしれない。恐怖の感情など微塵も感じさせない、機械で合成されたような音声が学の耳に届いている。



「桜ちゃん、僕が時間を稼いでいる間に何とか逃げてよ」


「学君…」(棒)


 決死の覚悟で振り返る学と相変わらず感情が一切乗らないセリフを吐く桜。ベテランと新人棒読み声優以上の格差がそこにはある。しかも桜は学に向かって縋るように手を伸ばしている。だがよくよく見るとその手は「早よ行け」と急かすかのような動きをしているのが見て取れる。この娘は学を死地に追い込む死神なのだろうか?



「ギャハハハハ! ガキが王子様気取りで出てきやがったぞ!」


「お姫様を守るつもりか? こいつバカなんじゃないか?」


 学に向かって口々に罵声を浴びせる男たち。だが学は口を真一文字に結んで男たちから視線を外さない。一度大きく息を吐くと、両手を軽く前に出して構えを取る。



「なんだ、こいつ。どうやらヤル気になっているぜ」


「この人数相手にどうするつもりなんだ?」


 学の様子を見た男たちは、依然としてヘラヘラした態度で囃し立てている。そしてついにひとりの男が殴りかかる。いかにも喧嘩慣れしているようで、一直線に顔面パンチが迫ってくる。


 スッ


 だがそのパンチが届く前に学は体を開いてやり過ごす。そのまま伸び切った腕を取って手首を極めてから下方向に引っ張っていく。


 クルン


 男の体がきれいに弧を描いて宙に浮き上がる。だがその瞬間…


(しまった、このままじゃ大怪我をする)


 学は固い地面に打ち付けられる相手の心配をしている。怪我をさせまいと考えた学は、咄嗟に掴んだ手首をさらに下方向に引き下げる。


 桜から伝授された投げ技は地面に叩き付けて相手の戦闘力を完全に奪うタイプと、地面に転がして最小限のダメージで抑えるタイプがある。学がさらに下方向に力を加えて事によって、男の体はゴロゴロと転がってさしたるダメージを与えなかった。



「このクソガキがぁぁぁぁ!」


 最初に襲い掛かった男を学が地面に転がした… この状況は男たちの暴力衝動に火をつける結果を招く。一斉に学に襲い掛かって様々な方向からその体を拘束しようと手を伸ばす。だが学はヒラリヒラリと動きながら伸びてくる手を躱しては、巧みに相手の力を利用して地面に転がしていく。


 

「あっ」


「バカめ、捕まえたぞ」


 しかし学の抵抗はここまで。最初に地面に転がした男が背後からタックルしてくる。不意を突かれると小柄な学では対処のしようがなくなってしまう。そのまま地面に押し倒されて圧し掛かられると、あとは男たちにされるがまま。



「学君、やめてぇぇ!」(棒)


 再び桜の名状しがたい悲鳴のような何かが飛ぶが、男たちは腹ばいにされた学に容赦なく襲い掛かる。四方八方から全身に向かって爪先蹴りが飛び交い、辛うじて頭だけは両腕でガードしているものの一切の抵抗を封じられてしまう。



「オラ、立ち上がって見ろよ」


「彼女にいい所見せるんじゃなかったのかよ」


 何十発もの蹴りや踏み付けを食らった学が意識を手放すまでさしたる時間はかからない。



「オラ、これでトドメだぜ」


 一人の男が鉄パイプを大きく振りかぶると、学の頭に向けて全力で振り下ろそうとする。その時…


 キンッ!


 金属同士がぶつかり合う音を立てて鉄パイプは夜空に向かって弧を描いて飛んでいく。今まさに振り下ろそうとしていた男は、両手が痺れて使い物にならない様子。もし周囲が明るければ、地面にパチンコ玉が落ちているのを発見したかもしれない。そのパチンコ玉はこれ以上の危険を見過ごせない桜が指で弾いたもで間違いなさそう。

 

 男たちは不思議そうな表情で勢いよく飛んで行った鉄パイプを見遣っている。そしていつの間にかそれを拾い上げる人影が…



「ずいぶんいい気になっていましたわね」


 ベンチの前にいたはずの桜がいつの間にか鉄パイプが飛んで行った場所に瞬間移動して、両手で持った鉄パイプに左右から力を込める。するとそうそう簡単に曲がるはずのない鉄パイプはグニャリと半分に畳まれていく。さらに半分になった鉄パイプにもう一度両側から力を込めると、今度は世にも珍しい4つ折りの鉄パイプが出来上がっている。


 ゴトン


 オブジェのようになった鉄パイプの残骸が無造作に地面に転がされる。そして転がした当人の目には明確な怒りの炎が宿っている。



「さて、ここから先は全部私のターンですわ」


 男たちに向けて、その口から死の宣告がなされる。桜はチラリと学の様子を窺うが、腹ばいになっている背中は弱々しいながらも上下している。致命的な攻撃は受けていないので、どうやら生命に別条はないようだ。



「な、何なんだ、この女は?」


「どうせハッタリに決まっているだろうが。それよりも全員で囲んで裸に剥いちまおうぜ」


「へへへ、それもそうだな」


 人類最強の一角に向かってケンカを売ろうとする哀れな男たち。桜の目にはその顔にすでに死相が浮かんでいるように映っている。よせばいいのに、三人の男たちが一斉に桜に向かって飛び掛かってくる。


 コン


 軽い音が公園に響くと、先頭の男が地面に向かって顔面からダイブする。ズザザザーという音を立てながら華麗なヘッドスライディングを決めると、次の瞬間猛烈な絶叫を上げて転がり回り始める。



「痛えよ、痛えよぉぉ!」


 顔面を思いっきり擦り剝いて涙と泥とヨダレに塗れた男が悲鳴を上げている。よく見ると男の右膝が曲がってはいけない方向にグニャリ。男が掴み掛ろうとした瞬間に、桜はおニューのブーツ(爪先に鉄板入り)で膝を蹴り付けていた。それもほんのご挨拶程度の力で。もちろん残りの二人にも腹部にパンチを叩きこんで昏倒させている。


 あっという間に仲間三人がノックダウンされた男たちの動きが止まる。目の前に立っている小柄な少女が一体何者なのか… そんな感じで訝しんでいる。だが自分たちの優位を疑わないのが、ゴブリンとどっこいの知能しか持ち合せていないDQNの特徴。それというのも隠している奥の手があるからに他ならない。



「テメー、よくもやりやがったな! そこを動くなよ。俺には魔法の力があるんだからな」


「こんな街中で使用したら重罪ですわ」


「知るか! テメーらの口を塞いでドラム缶に詰めて山に捨てれば証拠は残らねえんだよ」


「ずいぶん荒っぽい方法ですわね。魔法でも銃でもどうぞお使いくださいませ」


 一度警告をしたからこれ以上の忠告は無駄だと桜は達観している。それよりも仮に男たちが魔法を使用したら、自分の手で殺すよりもより苦しませる方法に思い当たる。そのためにはなるべく生かして捕らえる方針が桜の中で決定されていく。


 その場に突っ立ったまま動かない桜を見て、男は勝ち誇った表情で体内の魔力を集めていく。右手の指に嵌めている指輪に魔力が集中する様子を桜の目は捉えている。


(どうやら違法なマジックアイテムですわね)


 横浜の某国領事館爆破の際にも、このような違法なマジックアイテムが流通している現状が明らかになった。おそらくはそのようなルートでこの場の男たちも入手したのであろう。



「消し炭になりやがれ。ファイアーボール!」


 炎の塊が宙を飛ぶが、もちろん桜から見れば子供のお遊びにもならない。拳圧で消し飛ばすと、男たちは何が起きたのか全く理解が追い付かない表情を浮かべる。



「それでは地獄にご招待いたしますわ」


 その一言を残して桜の姿が消えうせる。その直後に5回、男たちの呻き声が聞こえて一瞬で戦いの幕は閉じていく。男たちは例外なくその場で失神して転がっている。


 スマホを取り出した桜は…



「こちらは楢崎桜中尉ですわ」


「伊勢原駐屯地です」


「魔法の不正使用者を8名現行犯で逮捕しました。移送をお願いしますわ。場所は…」


 報告と搬送要請を終えると、桜は地面に倒れている学に向かう。その体をあお向けに返すと、そっとお姫様抱っこで抱え上げてベンチに運ぶ。



「ずいぶん痛めつけられてしまいましたね。応急処置ですわ」


 アイテムボックスから取り出したポーションを学の口に注ぎ込もうとする桜だが、なかなか口を開かないせいで脇から零れていく。



「仕方がありませんわねぇ~」


 やむなく桜はポーションを口に含む。


 ブーーーッ!


 あまりの不味さに、盛大に吹いている桜。よくこんなモノを毎度毎度明日香ちゃんの口に流し込んだもの。


(明日香ちゃんはよく何度もこんな代物を飲みましたねぇ~)


 自分が飲ませたにも拘らず、変な部分で明日香ちゃんに感心している。だが学の手当ては急を要する。覚悟を決めてもう一度ポーションを含んで学の口に自分の口を重ねていく。


(これで心配はいらないと思いますが、念のために学院に戻ったらカレンさんに治癒してもらいましょう… それにしても、これが私のファーストキスなんでしょうか? かなり恥ずかしいですが、相手が学君だったらちょっと嬉しいですわ)


 緊急的な治療措置だったとしても唇を重ねたのは事実。さらにポーションを口に流す際に弛緩した学の舌が邪魔だったため自分の舌で抑えていた。つまりファーストキスからいきなりディープキスをしてしまったわけ。これは相当恥ずかしい。だが当の桜はといえば…


(うふふ、なんだかこれまでの関係とは違うような気がしますわ。なんでしょう… 弟弟子以上、恋人未満の関係とでも言いましょうか)


 考えながら桜の顔がカッと熱くなってくる。熱を帯びた顔に自分でも気恥ずかしさを覚えながらも、桜は優しく学に自分の顔を近づけて、そっともう一度キスをする。


(こっちが本物のファーストキスにしておきましょう。私だけの秘密ですけど)


 なんだか桜と学の関係が一気に進展しているような… だがそこで邪魔をする人間が現れる。男のうちのひとりが緩々と身を起こし掛けている。桜は学の様子が落ち着いているのを確認してからその男がいる方向に歩む。



「感心ですわ。手加減したとはいえ、こんな早くに目を覚ますなんて」


「テメー、こんなことをしてタダで済むと思うなよ。俺たちの組織が必ず報復するからな」


「まあ、自分のバックを自慢するんですか? 面白いですわね。私のバックにも大掛かりな組織があるんですよ」


 桜の言う「大掛かりな組織」とは、もちろん自衛隊のこと。おそらくというか、確実に日本最強の武装組織であろう。



「テメーのバックなど知ったことか! 今仲間を呼んでやるから覚悟しやがれ!」


「いいですわ。五十人でも百人でも好きなだけ呼んでください」


 桜がそのように言うものだから、調子に乗った男は仲間に連絡して招集をかける。その結果、男たちの仲間が集まるちょうどぞの時に、伊勢原駐屯地からやってきた部隊と鉢合わせに。



「なんで自衛隊がいるんだぁぁぁぁ!」


「逃げろぉぉ! 逃げるんだぁぁ!」


 公園は阿鼻叫喚の悲鳴に満たされる。だが逃げようとするゴロツキ共は敢え無くゴム弾の一斉射撃によって地面に倒れていく。おかげで逮捕者は合計で三十七人にも上る。辛うじて自衛隊の包囲網の外側にいてその場から逃げ出した者もいずれは捕縛されるであろう。


 こうして夜の公園での逮捕劇は幕を閉じる。桜の元には中隊を率いる将校がやってくる。



「楢崎桜中尉、ご協力感謝いたします」


「偶然巻き込まれた結果ですわ。お手数を掛けますが、駐屯地で取り調べをお願いします。それから私の後輩が1名負傷しておりますので魔法学院まで移送していただけますか?」


「了解しました。すぐに療養棟まで運びます」


 こうして学もストレッチャーに乗せられて車両で運ばれていく。もうこの頃には顔色にだいぶ赤味が戻っており、どうやら心配はなさそう。桜はカレンに学が負傷した旨を伝えると、中隊と一緒に伊勢原駐屯地へと向かう。




   ◇◇◇◇◇




 さて、駐屯地に運ばれた魔法犯罪者は一体どのような処遇を受けるのであろうか?


 本日は夜間に大量の逮捕者が移送されてきたので、伊勢原駐屯地の憲兵部は大忙しの様相。その分逮捕者の扱いが雑になるのは言うまでもない。


 車両から降ろされた逮捕者は自動小銃を突き付けられながら収容施設に運ばれる。もちろん歩ける者は自分の足で、歩けない者はストレッチャーに載せられたまま。意識のある者から順に取調室に連れていかれて、まずはステータスの開示を求められる。



「ステータスを開示しろ。素直に従わない場合は大きな苦痛を伴う取り調べが行われるぞ」


「わかりました」


 この時点で反抗する者は全体の5パーセントにも満たない。何しろ取調室の中でも自動小銃を構えた隊員が睨みを利かせている。こんな状況で反抗的な態度をとれるとしたら、それはよほどの勇者かよほどのバカに違いない。


 ステータスに魔法スキルがある人間には魔力阻害の腕輪が取り付けられる。この腕輪はもちろん美鈴謹製の術式が込められており、魔力の流れを阻害して魔法の使用を不可能にする。ただし体内を循環する魔力がスムーズに動かなくなるため眩暈や立ち眩みの症状が現れるという副作用もある。


 ステータスが判明すると次は身体検査に移る。



「この場で服を全部脱げ」


 もちろん小銃を突き付けながらこのように命令されるので逮捕者は従うしかない。素っ裸にされて身に着けているピアス類などはすべて外されて、身長体重、健康状態などが軍医と衛生兵によって問診されていく。そして最後に…



「その台の上に横向きで寝ろ」


 診察台に身を横たえて、こちらに尻を向けて寝かせられる逮捕者。一体どんな運命が待ち受けているのかわからずにその体は小刻みに震えている。


 おもむろに軍医が青いビニール手袋を両手に嵌めると、右手の人差し指に潤滑材を塗り始める。次に逮捕者の尻にも十分な潤滑剤を塗り込んで、次の瞬間…



「ギャァァァァァ!」


 大の男が悲鳴を上げる。軍医の人差し指が逮捕者の肛門の内部をグリグリと…



「直腸診異常なし」


 この時点で逮捕者は涙目になっている。すでに心の中で何かがバキッと音を立てて真っ二つに折れており、反抗心もはるか彼方に吹き飛ぶ勢いで何ら抵抗も見せなくなる。


 ここまでの一連の検診が終了すると、やっと服を着る許可が出て逮捕者は独房へと運ばれていく。真っ白な壁が一面に広がる3畳ほどの独房内では、誰とも話もできずに読書や新聞の閲覧も不可。ベッドとトイレがあるだけの部屋で何もすることもない苦痛にこれから長期間逮捕者は苛まれるのであった。

あんなにいい感じの桜と学のラブストーリーだったのに、最後のオチは肛門診…… この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!


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[良い点] 桜にまったく話がなかったのは 既に候補がいたからなのか [気になる点] 日本の治安がよくなったのか悪くなったのか
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