227 男子会と女子会
とってもユル~イお話です。鷹の力を抜いてお読みください。
新世紀創造会を事も無げにブッ潰してしまった美鈴とカレンの二人は、深夜に立川駐屯地へと戻ってくる。ここで午前8時まで仮眠をとってから、今度は捕らえられた教主や教団幹部が収監される伊勢原駐屯地へと向かう。
その後の教団関係者の取り調べはちょっとだけルシファーさんの眼光でもって睨み付ける美鈴のおかげであっさり進んで、彼らはなす術もなく洗いざらい白状する。
その証言によると、政府転覆の計画は初期の段階では夢物語のような感覚で教団内部でひそかに語られていたそう。ところがそこに海外から協力の申し出があって、3年前から教団は本腰を入れて準備に乗り出したらしい。肝心の海外から協力を申し出た相手だが、話を辿っていくとバチカンの息が掛かった勢力に突き当たる。
公衆を前にして世界平和を解くカトリックの総本山は、一皮剝けば国際的なテロを支援するという薄汚いマネにまで手を染めていたことになる。
「背後にバチカンがいたなんて、さすがに驚きました」
「カレン、何も驚くことではないわ。大元を正せば、カトリック信仰による世界制覇を目指していた連中よ。コロンブスやマゼランだって、言ってみればバチカンの手先として新大陸に向かったに過ぎないわ。安土桃山時代に日本にやってきた宣教師もまた然りよ」
相変わらず美鈴の辛辣な意見が飛んでいる。だが歴史的に見てもこれがある意味では真実なのだから仕方がない。
一通り取り調べが終わってヤレヤレというところで、今度は保土ケ谷駐屯地からアンドレイ=ナヒモフが護送されてくる。もちろん美鈴によって知っている限りの情報を吐かされて、彼は厳重に収監される。おそらくここを出る時には死体となっているであろうと容易に想像がつく。極刑に匹敵する罪を犯しているのだから、美鈴たちは死の商人には一切の同情を示すはずもない。ルシファーさんはまだしも天使にまで見放されてしまっては、行き先はおそらく地獄一択であろう。
◇◇◇◇◇
ということで、長時間の事情聴取を終えた二人はようやく魔法学院に戻ってくる。ひとまずは学院長に簡単な報告を済ませると、二人は特待生寮へと向かう。交代でシャワーを浴びてサッパリしてから私服に改める。時刻はすでに午後6時前で、そろそろ夕食の時間となっている。
「食堂に行きましょうか」
「桜ちゃんから苦情があるかもしれないですね」
「その時は笑って誤魔化しましょう」
「多分許してもらえそうもないです」
このようなたわいもない話を笑いながら交わしてエレベーターに乗り込むと、ドアが開いた正面に3つの人影が立っている。
「あっ、美鈴さんとカレンさん。ずいぶん時間がかかったんですね~。お疲れさまでした」
「私たちもたった今、ダンジョンから戻ったところなんですよ」
屈託のない表情で挨拶をするのは明日香ちゃんとクルトワ。その横にいる桜は…
「……」
ジト目で美鈴たちを見ている。どうやら今回の任務で留守番になった件にまだ納得がいっていないような態度。滅多に腹を立てない桜がこのような態度に出るのだから、よほど腹に据えかねているのだろうと美鈴の目に映っている。
「そ、そうだったの。三人ともお疲れ様でした」
「わ、私たちもつまらない事情聴取が長引いて… 早く学院に戻ってきたかったんですけど…」
当たり障りのない返事でこの場を切り抜けようという二人、桜の無言攻撃を受けている美鈴とカレンの目が宙をさ迷いっ放し。その態度を見て「これは不味い」と一瞬で気が付いたよう。そして互いに宙を彷徨わせていた美鈴とカレンの目が合う。
(どうしましょう? 桜ちゃんが相当怒っているみたいよ)
(何とか機嫌を取り戻してもらわないと、かなり不味いですよ)
素早くアイコンタクトで会話をする二人、依然としてその様子は挙動不審な空気に包まれている。出撃の件を大して聞かされていない明日香ちゃんとクルトワはこのムードに頭の上に???を浮かべているだけ。
だがそこはさすがだ、この微妙な空気を読めない明日香ちゃんが切り出す。
「私たちはこれから着替えて食堂に向かいますから、お二人はいつもの席で待っていてください」
「えっ、ええ、そうね」
「は、はい、いつもの席ですね」
明日香ちゃんによってさらに追い詰められていく美鈴とカレン、このままの雰囲気で食事をとるのは、さすがに精神衛生上よろしくないのは明白。頬を引き攣らせながらなんとか返事をするのが精一杯。
((不味い、これはさすがに不味い))
依然として口を開こうとしない桜の態度に美鈴とカレンの脳内に同時にこのような焦りが生じる。必死で頭を回転させながら、なんとか打開策を見つけようとする。だが、これといった打開策が見当たらず、無言の沈黙が流れるばかり。重たい沈黙の最中クルトワがこれまた空気を読まずに爆弾を投げつける。
「クラスの子に聞いたんですけど、何でも最近女子寮では女子会が流行っているそうなんです。飲み物とか簡単につまめる物を持ち込んで一晩中お喋りして… なんだかとっても楽しそうなんで私たちもやってみませんか?」
クルトワが投げ込んだ特大の爆弾の威力に美鈴とカレンの体が一瞬で凍り付く。ただでさえムードが悪いところにもってきて、その桜と一晩一緒に過ごす… 軽い地獄に突き落とされたような心境かも知れない。さらに空気を読まない明日香ちゃんが俄然張り切って追撃を開始。
「クルトワさん、ナイスアイデアですよ~。今夜はいっぱいお喋りして楽しく過ごしましょう。もちろんデザートもいっぱい持ち込みますね」
ニコニコしながら桜を見遣る明日香ちゃん、その表情は「ほれ、早く賛成に回れ」と無言で圧力をかけるがごとく。あまりに能天気なその表情に渋々桜も応えざるを得ない。
「いいですわ。女子会ですね」
やや低い声ながらも桜は賛同の意思を示している。こうなると美鈴とカレンは絶対に断れない立場に追い込まれる。
「えっ、ええ… 面白そうね」
「私たちの部屋の方が広いですから、準備が済んだら来てもらえますか」
「カ、カレン、その前にちょっと片付けておかないと」
「そうでした。では7時半頃からスタートにしましょう」
こうした流れで、本日は女子会の開催が決定する。
一旦部屋に戻って7時に食堂に集合。食料などを調達してから美鈴の部屋に集結という段取りとなる。こうして部屋に戻った美鈴とカレンは、分担して掃除機などを掛けながら…
「桜ちゃん、相当怒っているような気がするわ」
「空気が重すぎて、堪えられそうもありません」
「何とか機嫌を取り戻してもらわないと」
「そうですね… 接待に徹しますか」
とまあ、こんな遣り取りをしながら部屋の片づけに精を出す。といっても元々几帳面な二人なので、それほど部屋が散らかっているわけではない。この時間はもっぱら作戦会議に当てられるのであった。
◇◇◇◇◇
食堂ではすでに一足先に席についている聡史が食べ始めている。その傍らには天狐と玉藻の前が、何も口にせずに主人の登場を待ちわびるいつもの夕食風景が広がる。そこに女子五人が登場する。
「ポチとタマ、今日は私たちは女子だけで集まって部屋で食べることになりました。好きなものを選んで食べていいですよ。ご飯が終わったら祠に戻ってください。また明日呼びに行きます」
「主殿、いつもながらのご配慮、感謝いたしますぞ」
「主殿とご一緒できぬのは、ちと寂しいのじゃ。はて、本日の甘味は何にいたそうか」
こうして天狐と玉藻の前はいそいそと席を立って食事を取りにカウンターに並んでいる。もう最近では新入生の誰もが、この宮司と巫女姿の2体の大妖怪に突っ込まなくなっている。ある意味魔法学院の名物的な扱いを受けているよう。
桜たちはカウンターに行って、ピザ、フライドポテト、空揚げなどを、これでもかというくらいに大量に仕入れている。機嫌は悪くても食べるものは食べるというのが桜のポリシー。
ということで女子たちがいなくなってひとりで食事を終えた聡史の元に大柄な男子生徒が近づいてくる。
「よう、聡史。今日は一人なのか? 珍しいな」
「頼朝か。なんだか今日は女子会があるようで俺は仲間外れだ」
もちろん近くにはブルーホライズンのメンバーが座って食事中。彼女たちは美鈴とカレンがいない今夜はチャンスとばかりに聡史を誘おうとしている。当然横から登場した頼朝に「早くどこかに行け」という視線を送る。だがそんな彼女たちの圧力は、この鈍感男には通じない模様。
「そうなのか。良かったら聡史も男子寮に来ないか? これから男だけの腹を割った飲み会をやるぞ」
「飲み会? 酒を飲むのか」
「しーっ、声がデカいって。男子寮に着いたら電話してくれ。入口まで迎えに行くから」
こうして頼朝はブルーホライズンの殺意に満ちた視線を一身に受けながら自分の部屋に戻っていく。
特待生寮に戻った聡史は、本日Eクラスの生徒に向けて行った戦術指導のポイントと今後に向けて指摘するべき事項を簡単にまとめてから男子寮へと向かう。時刻はすでに9時近くで、すっかり人通りの絶えた通路を心地よい夜風に当たりながら歩いてく。
男子寮の入り口に着いて電話をすると、すぐに頼朝が出てくる。すでに顔が赤く、聡史が到着する前に一杯ひっかけているのは間違いない様子。
「おう、来たか。こっちだ」
一歩足を踏み入れるなり男くさい独特の臭いが鼻につくが、聡史は特に気にせず廊下を進む。彼が学院の男子寮に入るのは実は初めてで、見慣れぬ雰囲気にあちこちキョロキョロしながら頼朝に付いていく。
案内されて入った部屋ではいつもの顔触れの男子がすでに酒盛りを始めており、相当に酔っぱらっている者も見受けられる。
「こんな時間から酒を飲んでバレないのか?」
「規則が緩いから大丈夫だ。それにほら、小説にもあるだろう。ダンジョンでひと稼ぎした冒険者は酒場で盃を傾けるのがお約束だ」
とんでもない論法を持ち出す頼朝。聡史が空いている場所に座り込むと、スッとコップを差し出して日本酒をなみなみと注ぎ始める。
「聡史は呑めるんだろう」
「まあな」
「それじゃあ、乾杯だ」
一体何に乾杯するのかわからぬままに、聡史は頼朝とコップを合わせて中身をあおる。状態異常完全無効化のスキルによってまったく酒には酔わない聡史であるが、喉を通る日本酒の味はわかる。どうやら誰かが帰宅した際に手に入れてきた地酒らしく、中々いい香りが鼻を抜けていく。
「どうだ、美味いだろう」
「良さげな酒だな」
「新潟の地酒だ。足立の親御さんの地元で作られているそうだ」
このような男臭さムンムンの雰囲気でワイワイ騒いでいると、聡史は異世界の冒険者ギルドを思い出してしまう。気のいい冒険者たちと仲間になってジョッキを次々に飲み干していったあの日々がなんだか懐かしく感じるのであった。
◇◇◇◇◇
変わってこちらは特待生寮。女子五人がテーブルに着いてまずは食事をしている。桜はなにも発しないで一心不乱に目の前のミックスピザラージサイズにかぶりついて、明日香ちゃんとクルトワはニコニコしながらパフェを食べている。そんななんとも微妙な雰囲気を美鈴とカレンは眺めつつ、どうすればいいんだろうとため息。
そしてようやく桜が一通りの食事を終えると…
「ふう~、やっとお腹がいっぱいになりましたわ」
さっきまでの不機嫌ぶりとは別人のような明らかにご機嫌な様子。この変貌ぶりに、美鈴とカレンは「何が起きた?」と戸惑うばかり。
「おや、桜ちゃんはすっかりご機嫌ですね~」
「さっきまでお腹がすいてちょっとイライラしていましたの。もうすっかり絶好調ですわ」
「「空腹のせいで機嫌が悪かったのかぁぁぁぁ!」」
美鈴とカレンの声が揃う。今まで自分たちが桜の機嫌を悪くしたと散々気を揉んでいただけに、その原因に思いっきり突っ込んでいる。
「美鈴ちゃんとカレンさんが学院長の命令で出動してのはお兄様から聞いていましたわ。今度は私も誘ってください」
「心配して損したぁぁぁ!」
「桜ちゃん… やっぱり私たちのはるか斜め上をいってくれますね」
美鈴とカレンはホッとしながら桜を見ている。そして明日香ちゃんにも目を向ける。
「明日香ちゃんたちは、桜ちゃんがお腹がすいて機嫌が悪いって知っていたの?」
「はい、ダンジョンを出る辺りからしきりに『お腹がすいた』とアピールしていましたから」
「すぐに食堂に行きたかったみたいですけど、私たちがシャワーを浴びたいと言ったら機嫌が悪くなりました」
ガックリする美鈴とカレン。今日は事情聴取などもあって神経を使いっ放しだったところにもってきての桜の態度。その原因が判明した途端に体から力が抜ける思いだったよう。
こうして雰囲気がよくなった頃合いを見計らって、全員がリビングのソファー周辺に移動する。明日香ちゃんとクルトワは小テーブルの上にスナック菓子を広げてジュースを飲みながら床にゴロゴロ。殊にクルトワは魔王の娘らしからぬ態度を見せている。本当にこれでいいのだろうか?
「それで美鈴ちゃんたちは、昨夜はどちらに行ったんですか?」
「それはねぇ~…」
美鈴とカレンが大まかな成り行きを話す。桜は黙って聞いているが、大した反応は見せてはいない。そして二人が概ね話し終わった頃に、ようやく桜が口を開く。
「まったく、明日香ちゃんが変な妄想を膨らませてくれたおかげで、私はお兄様の前で恥ずかしい思いをしましたわ」
「変な妄想? 桜ちゃん、それは何かしら?」
「いえねぇ~… 明日香ちゃんが言うには、昨夜はお兄様と美鈴ちゃん、カレンさんの三人で、お忍びのデートをして、そこから一気に大人の階段を…」
「そんなことするはずないでしょう!」
美鈴がやけにムキになった返答をしてくる。普段ならば鼻で笑って終わりのはずだが、その態度に桜は引っ掛かりを覚えている。
「美鈴ちゃん、隠し事はいけませんねぇ~。私も一応はお兄様から聞いてはいますが、ここできちんと私たちに話しておくべきじゃないですか?」
「えっ、ええぇぇ! 桜ちゃんは、聡史君に何を聞いたのよ」
「異世界で二人っきりでしばらく過ごしていた頃のお話ですわ」
美鈴の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。明日香ちゃんとクルトワは耳をダンボにしながら、スナックに手を伸ばすペースが無意識に早くなっている。そしてカレンは不安でその顔色が青褪める。
実は桜は兄から何も聞いてはいない。ただ美鈴の態度に「これは何かある」と直感してちょっとカマをかけてみただけ。普段の冷静な美鈴であったら動揺などしないであろうが、こと聡史が関係すると途端にアタフタして両手をグルグル回してしまう、ごく普通の女子に成り下がる。
「美鈴ちゃん、すでにネタは上がっていますわ。観念して白状したほうがいいですよ」
「そうですよ~。お友達の間では秘密を共有するのがルールですから」
桜だけではなくて明日香ちゃんまでもがかさにかかって畳み掛けてくる。こうなるとさすがの美鈴も重たい口を開くしかない。
「そ、その… アライン砦に私と聡史君だけが残って、他のみんなは先に日本に戻ってからなんだけど…」
「ふむふむ、その辺はお兄様から聞いています」
「駐屯地の設営とか一段落すると結構ヒマだったのよ。でも大して体を動かさないせいで、中々夜寝付けない日が続いて…」
「ほうほう、寝つきが悪くて」
「そ、それでね… ある日夜中にコッソリ聡史君の部屋に行ったの」
「美鈴ちゃんからアクションを起こしたんですね」
「ま、まあ、そうなるわね。それで… 子供の頃のように聡史君を抱き枕にしてその日はグッスリ眠ったわ」
「なるほど、美鈴ちゃんとお兄様は小学生の頃しょっちゅう一緒のベッドで寝ていましたからねぇ~」
「そ、それでね… その日からなんだか癖になっちゃって、毎日聡史君を抱き枕にしていたのよ」
「抱き枕はいいですから、早くその先を」
「その先なんかあるわけないでしょう! 聡史君はすぐに寝ちゃうし、私は抱き着いているだけで満足だったし… あっ」
「おやおや、美鈴ちゃん。どうしましたか?」
「一回だけ、寝ている聡史君の頬にチューしました」
ここまでぶっちゃけると、美鈴は恥ずかしさのあまり俯いて黙り込む。ここでようやく息を吹き返したのはカレン。
「美鈴さん、それ以上のことは何もしていないんですね」
「す、するはずないでしょう。プレハブの簡易宿舎よ。隣部屋の物音が丸聞こえなんだから」
両手をブルブルしながら否定する美鈴に桜が呆れた表情を向ける。
「美鈴ちゃん、そういう時こそ遮音結界とか色々と遣り様があるでしょうに…」
「しまったぁぁぁ! その時は全然頭に思い浮かばなかったぁぁぁ!」
心底悔やんでいる美鈴がいる。魔法の第一人者と自負しているくせに、こんな時に肝心なことを思いつかなかった自分を悔いているかのよう。今から考えてみると、当時の自分はいかにテンパっていたのかはっきりと理解する美鈴がいる。
それとは対照的に、毎晩添い寝したのに美鈴と聡史の間に大した進展がなかったと聞いたカレンは小さくガッツポーズ。この辺の行動に、やはりライバルに先を越されたくないというカレンの本音が窺える。確かに美鈴に一歩リードを許している現状はあるものの、まだまだ十分に挽回は可能だと考えているよう。もし今後何かの機会があったら、絶対に逃すまいと固く決意するのであった。
◇◇◇◇◇
美鈴が桜の誘導尋問に引っかかって顔から火を噴き出している頃、男子寮では宴もたけなわとなっている。
こうして男たちが集まって酒宴の時間が経過すると、当然話題は下ネタか女子の話に移ってくる。ご多分に漏れず、野郎どもは口々に「誰が可愛い」とか「誰それに気がある」などの話題で盛り上がっている。そこでついに元原が、聡史に話を切り出す。
「さ、聡史はカレンさんと付き合っているのか?」
やや呂律が怪しいが、その表情は普段のおちゃらけぶりとは打って変わって真剣そのもの。
「いや、同じパーティーだからな。恋愛感情を持ち込んでしまうとトラブルの種になる。俺は誰とも付き合ってはいないぞ」
「ほ、本当か! じゃあ、俺がカレンさんに告白しても問題はないよな」
「問題はないだろう。だが成功する確率はゼロに等しい」
聡史はカレンの出生や本人が天使として覚醒している点を踏まえて回答している。だがクラスで1、2を争うアホな頭の持ち主である元原には、そんな事情は軽々しく打ち明けられるはずもない。ここで調子に乗った元原が…
「そ、それじゃあ、俺カレンさんに告ろうかな。最近俺を見つめるカレンさんの目が、優しい気がするんだ」
「元原、俺からはこれ以上は何も言えない」
カレンに関して聡史はこれ以上何も言う気がなさそう。さすがに結果が見えているだけに、元原があまりに不憫に映っている。今度は別の方向から聡史に質問が飛んでくる。
「聡史、副会長とは進展があるのか?」
「特にないぞ。パーティー内では恋愛禁止。これは俺自身のルールだからな」
「なんだ、面白くないな。とっくにキスでもしたのかと思ったけどな」
「キスならしたかなぁ~。ああ、それから一緒に風呂に入ったこともある」
「「「「「「なんだってぇぇぇぇぇぇ!」」」」」」
全員の目が一気に聡史に集中する。キスばかりか一緒に風呂までとは… なんという大胆な話だろうか。モテない男たちは聡史の声を一言も逃すまいと全神経を耳に集めている。
「ハハハ、そんなに驚かなくてもいいぞ。小学校の3年生当時の話だ。俺と美鈴は隣同士の幼馴染だったからな。それに二人で入っていると桜が必ず乱入してくるんだ。『二人だけでズルい』と言ってな」
聡史にしたら「プロ野球の選手と小学校の時同じチームだった」とか「小学校の時分はかけっこが一番だった」というレベルの昔話に過ぎない。だが、モテない奴らの反応は一味違っている。
「クソォォォォ、俺も幼馴染が欲しかったぜぇぇぇ!」
「俺、今度実家に帰ったら幼馴染に会うぞ。みんな男だけど」
まあ、この辺の反応はまだマシな方。
「俺は幼馴染のあの子の家の前をウロついてみようかな」
「それはストーカーに間違われるからヤメておけ」
「俺、幼馴染のあの子にメールしてみよう。アドレス訊いたらやんわり断られたけど」
「それ、かなり嫌われているぞ!」
「俺、今度ダンジョンを無事に出てこれたら幼馴染のあの子に告白するんだ」
「それは完璧な死亡フラグだぞ!」
こんな具合で、むさくるしい男たちの夜は更けていくのであった。
次回はちょっとだけ女子会の続きがあって、新たな進展を迎える予定です。新キャラも登場して…… この続きは出来上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!
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