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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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221/370

221 Eクラスの現在

本当は昨日投稿する予定でしたが、書いているうちに長くなって投稿が遅れました。その分今日は2話投稿いたします。続きは2時間後に投稿予定ですので、どうぞそちらもご覧くださいませ。

「「「「「師匠、お帰りなさ~い」」」」」


「「「「「ボス、お帰りをお待ちしていました」」」」」」


 魔族の国での滞在は予定を大幅に超える約1か月近くに及び、4月の下旬にようやく聡史たちは魔法学院に戻ってきた。聡史たちがいない間に、学院では新入生たちもすっかり授業に慣れており、ダンジョンに入るための基礎訓練をこなしている。


 戻ってきた聡史たちを出迎えたのは、Eクラスの面々であった。久しぶりに戻ってきた聡史を発見したブルーホライズンの六人は、一斉に彼を取り囲んで子猫のようにまとわりついている。その姿とは対照的に、頼朝たちは相変わらず直立不動の姿勢で桜にキリっとした一礼をする。どこかの組長の出所か。


 実はこうして学院に戻る前に、聡史たちは市ヶ谷のダンジョン管理室に報告に立ち寄っていた。そこではナズディア王国の現状やレプティリアンの関与などが美鈴の口から事細かに語られた。さらにUFOの接収など、岡山室長が椅子から転げ落ちるような内容も含まれている。結局古代遺跡で押収した武器類やコンピューターなどは、全て伊勢原駐屯地で保管して準備が整い次第解析作業に取り掛かる方針が決まった。ただし簡単に解析とはいうものの、膨大な時間と予算を食う作業なので、政府にどうやって報告すればよいのかと、岡山室長が頭を抱えるという一幕もあった。



「桜ちゃん、お昼にはちょっと早いですが、一足先に食堂に行きましょうよ~」


 久しぶりの再会を喜ぶさ中にあって、そこには自らの食欲のみに忠実な人物もいる。もちろん明日香ちゃんであった。



「明日香ちゃん、魔王城で打ち上げと称して散々デザートを食べまくったじゃないですか。体重は大丈夫なんですか?」


「せっかく日本に戻ってきたんですから、まずはデザートの補給を優先するんですよ~。じゃないと何もヤル気が起きません」


「そうですよ、桜ちゃん。まずは食堂に急ぎましょう」


 そしてもう一人、クルトワが明日香ちゃんの提案に乗っかってくる。こちらも体重が急上昇しているのに、本当のこのままでいいのだろうか?



「しょうがないですね~。それでは今のうちに食堂に行きますか。どうせお兄様たちは学院長に呼び出されるでしょうから、私たちは巻き込まれないように、さっさと逃げ出しましょう」


「おお、主殿。ついに夢にまで見たキツネうどんを食せるのですな」


「ああ、ポチにはずっと我慢させましたから、気が済むまで食べていいですよ」


「明日香よ、今月の月替わりの甘味は何じゃ?」


「タマさん、私も食堂に行ってみないとわからないですよ~。でも絶対に美味しいのは間違いありません」


「楽しみなのじゃ~♪」


 大妖怪2体は、今にもヨダレを垂らさんばかり。ことに異世界にいる間、好物のキツネうどんを食べられなかった天狐は、禁断症状でも出ているかの有様。大妖怪としてのプライドなど、すでに時空の彼方に捨て去っている。それよりも玉藻の前の現代社会への順応具合が凄すぎる気がする。月替わりのメニューをしっかり把握しているなんて、恐れ入るしかない。


 桜たちがさっさと食堂に向かったのとは対照的に、聡史はいまだにブルーホライズンにまとわりつかれて身動きが取れない状況であった。彼女たちは約1か月間、聡史に会えなかった鬱憤を晴らそうと絶対に離れるものかという態度を露にしてしがみついているのだった。その中では比較的冷静な真美が、口を開く。



「師匠、今日の午後は模擬戦なんですよ。良かったら私たちの試合で気づいた点を色々と指摘してもらえませんか?」


「そうなのか… 学院長への報告が早く終わったら、見に行くとするか」


「やったぜ、師匠からの指導を受けるなんて、本当に久しぶりだよな」


 顔を紅潮させて大喜びするのは美晴だ。よほど聡史の顔を見るのが嬉しいらしい。


 これだけの熱烈な歓迎を受けると、聡史もこのように前向きにしか答えようがない。美鈴とカレンは、そんな聡史の態度に…



「まったく、聡史君ったら、あんなに鼻の下を伸ばしちゃって」


「美鈴さん、みんな聡史さんが戻ってきたのが嬉しいんですよ。ちょっとくらいは大目に見てあげましょう」


 天使が持つ寛大な御心に助けられる聡史であった。





   ◇◇◇◇◇




 ブルーホライズンの強引なアプローチに根負けした聡史。午後の模擬戦観覧とその後の戦術チェックを引き受けることで、ようやく彼女たちから解放される。そのまま聡史、美鈴、カレンの三人は学院長室にやってきた。



「…ということで、以上が今回異世界での活動の概要です」


「そうか、ご苦労だった」


 今回は主に美鈴が中心となって報告を終えると、学院長はやや考え込む姿勢を見せる。そしておもむろに…



「伊勢原に保管されるレプティリアンの兵器というのは、私も興味を惹かれるな。一度見に行こうと思う」


「解析にはすぐには取りかかれないらしいです」


「まあそうだろうな。だが裏技が残されているぞ」


「裏技ですか?」


「西川の能力を活用すれば、おおよその技術の内容はすぐにでもわかるのだろう。ヒントがあれば、解析は進められるはずだ」


 学院長にはまだ例の〔アカシックレコード〕と呼ばれる銀河統合意識体の情報の件は話をしていない。だがこの学院長にかかれば、どうせそんなことはあらかじめ見通しているかのようであった。もっとも天使を生み出した張本人なのだから、もしかしたら聡史たちには明かしていない何らかの情報を持っているのかもしれない。いずれにしても、本当に底の知れない人物である。そして学院長は最後に…



「楢崎中尉はもういいぞ。西川少尉とカレンには頼みたいことがあるから、ちょっとの間残ってくれ」


「「はい」」


 こうして聡史一人が、一足先に学院長室から出ていくのであった。




   ◇◇◇◇◇




 一通りの報告を済ませると、聡史は食堂に向かう。報告がかなり長引いたので、桜たちはすでに教室に戻った後のようだ。久しぶりの学生食堂での食事を終えると、聡史はEクラスに合流すべく活動場所へと向かう。


 Eクラスの生徒たちが集まっているのは第三訓練場で、Dクラスと合同で模擬戦を行う予定となっている。2年生となるとより実戦的な授業が組まれており、生徒同士の模擬戦が授業の中で実施されるカリキュラムとなっているのだ。ことに今年度からはパーティーの能力を重視する方針となっており、個人戦よりもチームによる模擬戦が何度も繰り返されている。


 チーム戦は概ねクラス対抗で実施されるのだが、Dクラスの平均レベルは約35で、Eクラスは50近く。正面からまともに立ち合っていたらDクラスには勝ち目などない。先日の授業で初めて模擬戦を行った際には、Dクラスはコテンパに叩きのめされていただけに、今回はリベンジに燃えている。



「Dクラス〔炎の首飾り〕対Eクラス〔赤い残照〕の対戦を始める」


 審判役を務める教官の合図に合わせて、それぞれのクラスのトップを務めるパーティーが、開始戦の前に立つ。挨拶が終わると、六人対六人がそれぞれのフォーメーションに合わせた位置に散っていく。



 その様子をスタンドから観戦している聡史たちは、Dクラスパーティーのフォーメーションが極端に左側に偏っているのを見て取っている。



「ほう、中々考えているな」


「お兄様、これは意外と面白い対戦になるかもしれないですわ」


 兄妹には、すでにDクラスパーティーの意図が分かっているようだ。久しぶりに目にする赤い残照がどのように対処するのか、ちょっと楽しみな様子。



「試合開始ぃぃ」


 審判の合図で、双方のパーティーが一斉に動き出す。レベルの高さを生かして力押しを仕掛けるEクラスに対して、Dクラスパーティーはどちらかというと慎重に相手の出方を窺うように、初期配置からほとんど動こうとはしない。



「一気に押し潰すよ」


 赤い残照の右側に位置する二人の剣士は、手薄な敵陣の正面に突進していく。相手はたった一人で孤立しているので、軽々と仕留めてまずは人数を減らしていこうという算段であった。だが突進するEクラス右翼に対してDクラス左翼が徐々に下がっていく。その動きはまるで相手を誘い込むように、巧妙に自陣の内部にEクラスの剣士二名を誘導していた。



「ファイアーボール」


 そこにタイミングを見計らったかのように、Dクラスの魔法使いの手から魔法が飛び出してくる。右翼を勢いよく突進していた剣士たちは正面の敵に気を取られて、その後方で立ち位置を変えていた魔法使いの動きに注意を払っていなかった。おかげで彼らを目掛けて斜めの方向から、直撃コースでファイアーボールが飛んでくるのに気づくまで時間がかかる。



「回避しろぉぉ」


 慌てて左右に飛びのく二名の剣士、幸いファイアーボールを何とか躱したものの、うち一名はフィールドのラインを踏み越えて場外に転がり出ている。



「一人離脱したぞぉぉ」


「この調子で頼む」


 Dクラスのリーダーと魔法使いは、まんまと作戦が嵌った状況に大声で味方を鼓舞する。さらにもう一発地面に転がっている剣士に向けてファイアーボールを撃ち込むと、爆風で地面に叩き付けられたもう一人のEクラスの剣士も戦闘不能に陥った。


 左翼側での戦闘が有利に進んでいるDクラスは、右翼側でも数的な有利を生かしている。Eクラスの槍士と剣士を相手にして、こちらは三人掛かりで対抗しているのであった。さらにこのような状況にあって、右翼の二名を誘っていた剣士も左翼に駆けつけて、4対2の構造が生まれる。さすがにレベルで上回っていても、敵の人数が倍となるとEクラスは苦戦を強いられる。



「ここで何とか態勢を逆転するんだ」


「クソッ、防御一辺倒になって、手が出せないぞ」


 必死に食い下がるEクラス。何とか一人は戦闘不能に追い込むものの、やはり人数の不利を覆すほどの差はなかった。こうして二人とも戦闘不能に追い込まれて、Eクラスの前衛が全滅する。残った魔法使いとリーダーも、その後のDクラスの猛攻にあってついに陥落した。



「勝者、炎の首飾り」


 こうしてレベルにおいては格下のDクラスの勝利で第1戦は終わる。Dクラスの面々は、前回のリベンジを果たして満足そうな表情を浮かべているが、対照的にしてやられた赤い残照は体のあちこちにダメージを負って、足を引きずりながら戻ってくる。



「無様ですわ。さっそく今日から血を吐くほど鍛えて差し上げましょう」


「桜、まあそう言うなって。まだクラスの連中には戦術は何も仕込んでいなかっただろう。それにしてもしばらく学院を離れている間に、他のクラスもずいぶん進歩しているし連携も取れているな」


「あの程度の連携なんて、気合いで叩き潰せばいいのですわ」


「結論を出すのは、他の対戦も見てからにしよう」


 何事も「気合い」で押し通す桜に対して、聡史は慎重な見方をしている。やはりこれまでパーティーの戦術を各自に任せていたが、他のクラスの成長度合いを勘案するとそうも言っていられない気がしているのであった。


 その後の模擬戦は、Eクラスの勝利が続く。だがどのパーティーも必ず一人か二人は戦闘不能に陥る者が出て、決して完勝と呼べる内容ではなかった。そして、頼朝たちの出番がやってくる。



「桜、すっかり忘れていたが、あいつらは四人のままなのか?」


「はい、私が四人で戦えと申しつけておきましたから」


 フィールドに並ぶ頼朝たちは、聡史が指摘するように四人しかいない。相手はもちろん六人で臨んでいる。最初から大きなハンデを抱えたまま、頼朝たちは模擬戦に挑んでいるのだ。もちろん桜からは「人数のハンデは気合いで撥ね返せ」と骨身に染みこまされているのは言うまでもない。



「試合、開始ぃぃ」


 審判の合図で、フィールド上の生徒たちが一斉に動き出す。Dクラスの初手は、魔法使いの放つファイアーボールであった。



「こんな甘っちょろい魔法など効かぬぞ」


 Dクラスの魔法使いが渾身の魔力を込めて放ったファイアーボールであったが、盾を構える足立によってあっさりと受け止められる。それを見て取った他の二人は、ゆっくりと前進を開始するのであった。



「いいか、ボスが見ているから、全員無様な戦いはできないぞ。気合いを入れていけよ」


 リーダーの頼朝から檄が飛ぶ。すでに及び腰になっているDクラスの生徒たちに向かって、獲物を仕留めるような視線を全員が送る。


 すでに頼朝たちは聡史が留守にしていた間にレベル100を超えており、Dクラスの生徒ごときでは相手にもならなかった。人数を頼みにして討ちかかってくる有象無象を蹴散らしながら、前衛の三人が確実に前進を続け、ついにはDクラスのリーダーを討ち取って、あっという間に勝負を決めている。



「まあまあですわね」


「頼朝たちは、ずいぶん余裕の勝ち方をできるようになったんだな」


 どうやら彼らは桜の言いつけを忠実に守って、留守中も鍛錬を怠らなかったようだ。その結果がこの模擬戦でも如実に表れている。


 もう一つの元原が率いるパーティーも、同じようにレベル差を生かして相手を圧倒する。だがこの脳筋エロ軍団は、カレンがこの場にいないのをしきりに悔しがっていた。どんなにいい格好をしても、名前さえ覚えてもらえないのに…



「とてもじゃないが、俺たちにはどうしようもない」


「あんなの反則だろう」


 対戦したDクラスの生徒が泣き言をこぼすくらいの、圧倒的な差を見せつけての勝利。それはそうであろう。頼朝たちはあのエクバダナの街で、自分たちの五倍もの魔族を相手にして一歩も引かずに戦い抜いたのだから… 学院の生徒相手の模擬戦など生ぬるいとでも言いたげだ。



 そしてEクラスの最後のパーティーとして登場したのは、ブルーホライズンの面々であった。彼女たちも自信に満ちた表情で、開始戦に立って挨拶をしている。



「試合、開始ぃぃ」


 オーソドックスなフォーメーションから、単独で飛び出していくのは切り込み隊長の美晴であった。彼女は大盾を前面に掲げると、進路を塞ごうとするDクラスの生徒を簡単に吹き飛ばしていく。美晴は速度を一切緩めずに、もう一人の剣士を吹き飛ばす。一目散に目指しているのは、最も邪魔な魔法使い。勢いを緩めぬままに果敢に突進していく。これに慌てるのは、美晴に狙いを定められた当の魔法使い。何とか魔法を撃ち出して突進を鈍らせようとするが、美晴はお構いなく飛んでくる魔法を払い落しながら迫っていく。


 美晴にわずかに遅れて、ほのかと渚も前進を開始して、Dクラスの剣士と槍士相手の打ち合いに持ち込んでいく。こちらは仕留めるのではなくて、相手をその場にくぎ付けにするのが目的のようで、左程本気を出さずにあしらっていく感じだ。



「おりゃぁぁぁ、死にさらせぇぇぇ」


 その間に美晴は、魔法使いに向かって思いっきり盾でぶちかまして、あっという間に無力化に成功する。気の毒なDクラスの魔法使いは、白目を剥いてフィールドに転がされている。



「絵美、リーダーをお願いよ」


「了解」


 最後は絵美が相手にリーダーに槍の切っ先を突き付けて、降参させてお仕舞であった。この魔法学院においては、桜の次に強力な美晴の突破力を生かした万全の戦いぶりであったと評価できる。



 こうして、この日の午後の授業で行われる模擬戦は終了した。Dクラスは最初のパーティーが1勝したのみで、あとは散々にEクラスに打ち負かされて、悔しさを抱えながら教室に戻っていく。


 


   ◇◇◇◇◇




 帰りのホームルームで、聡史が頼朝に話し掛ける。



「頼朝、すまないが全員を視聴覚室に集めてもらえるか」


「オーケーだぜ。聡史、何をするつもりだ?」


「集まってからのお楽しみだ」


 こうしてこの日の放課後、Eクラスの全員が視聴覚室へと集まる。教室の正面にあるスクリーンには模擬戦の映像がセットされており、聡史が全員に色々と試合を分析した内容をレクチャーする準備が整えられている。



「わざわざ集まってもらってすまなかった。せっかく模擬戦を終えたのだから、気付いたことを伝えておこうと思った。そう肩肘張らずに聞いてもらえると助かる」


 そうは言っても、聡史からアドバイスを受ける機会はEクラスの生徒たちにとっては貴重であった。皆が期待した表情を演壇に立つ聡史に向けている。


 

「それでは最初の試合から振り返っていこうか」


 唯一Eクラスのパーティーが敗北を喫した試合から始める聡史。スクリーンには試合開始直前の映像が映し出される。



「さて、この時Dクラスはかなり変則的なフォーメーションを用いてきたが、この時点で赤い残照のメンバーは、どう考えていたのか聞いておこう」


「相手が左側に寄っていたから、手薄な方を攻略するのが手っ取り早いかと思っていました」


 型通りの答えが返ってきた。聡史はさらに重ねていく。



「確かに相手の左側が手薄なのは事実だな。さて、最初に突っ込んでいった二人には、この時点で何が見えていた?」


「ギャアァァァァ、こんな所からゾンビが現れてぇぇぇ」


「そうゾンビが見えて… じゃないだろうがぁぁぁ。桜たちは一体何を見ているんだぁぁ」


 視聴覚室の一番後ろの席から素っ頓狂な声が聞こえてくると、聡史はついつい釣られてしまっている。ちょうどその席には、桜、明日香ちゃん、クルトワの3人が座っていた。そのさらに後ろには、ポチタマも控えている。



「お兄様、明日香ちゃんがお化けが怖いという弱点を克服しようと、ホラームービーを見ていました」


「タイミング! 時と場合をわきまえろ。今は模擬戦の振り返りをやっているんだからな」


「仕方ありません。わかりましたわ」


 まったくもう… という表情を浮かべながら、聡史は話に戻る。そもそも模擬戦会場にゾンビが現れたら、それはそれで大問題になるであろう。



「いいか、わざと隙を作って相手を罠に嵌めるというのは、最も初歩的な戦術だからな。赤い残照はまんまと相手の作戦に乗っかってしまったんだ。一度戦いの主導権を握られると、挽回には相当な労力を費やすから、そもそも罠かどうか見破る眼力を養わなくてはならない」


 明日香ちゃんの絶叫で脱線しかかった場の雰囲気を聡史が何とか立て直す。赤い残照のメンバーたちは、迂闊に相手の作戦に乗ってしまった自分たちの行動を反省している。



「作戦だと見抜けなかった俺たちは、まだ未熟なんだな」


「本当に、自分の目の前しか見ていなかったわね」


 このような反省の弁を互いに述べながら、自分たちが敗北を喫した映像を見ている。相手の前に出ていた剣士がスルスルと下がる場面で画像を止める聡史。



「この場面で、台上のリーダーには何が見えていた?」


「ギャァァァァ! 桜ちゃん、これって幽霊がはっきり映っているじゃないですかぁぁぁ」


「そう、幽霊がはっきりと映って… じゃないからぁぁ。桜、今度は何をしているんだぁぁ」


「お兄様、恐怖の心霊写真特集ですわ」


 またまた邪魔をする桜一味。ゾンビの次は、心霊写真で明日香ちゃんを脅かしていたようだ。さすがに聡史も呆れて、退場を申し渡す。



「そこの三人はもういいから、どこか別の場所で幽霊でもゾンビでも、好きなだけ見てこい」


「しょうがないですね~。それでは食堂に行きますか」


「うう… 本当に怖かったですよ~」


 桜を先頭にして、いまだにビビった表情の明日香ちゃんと、巻き込まれたクルトワが席を立つ。というかクルトワは思いのほか早くに食堂でデザートにありつけるのが嬉しいようで、スキップをするかのような足取りであった。


 邪魔な三人がいなくなると、視聴覚室は再び聡史の戦術講習会の真剣な雰囲気を取り戻す。パーティーごとの戦術に欠けている視点などを次々に指摘されていくのであった。


この続きは19時ごろに投稿いたします。

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