218 古代遺跡
謁見が無事に終了して、古代遺跡に向かうと……
「クソッ、なんて奴だ。我の頭を覆う外殻が一撃で砕けるとは…」
命からがら転移装置によって魔王城を飛び出した宰相フォン=ファウストは、ようやく危機を脱して一息ついている。どうやら、桜の目にも止まらないパンチを食らった際の精神的なダメージがいまだ残っているようだ。
「それにしても、王女と一緒にやってきたあの連中は一体何者だ? 魔族を全員傅かせたあの女だけでも相当に手強い。それだけでなくてあのような尋常ではない攻撃を持った者までいるとなると、いよいよ奥の手を出さざるを得ないであろう」
フォン=ファウストは頭を軽く振りながら、その脳裏に浮かんだ恐怖の幻影を消し去ろうとしている。そこに、彼に声をかける者が現れる。
「ファウスト様、何の前触れもなく転移で戻られるとは、一体何事がございましたか?」
「どうもこうもない。魔王城に突然得体のしれない人族が現れて、我の外殻を砕きその正体を暴いたのだ」
「人族… 噂に聞く勇者なる者でしょうか?」
「勇者だと。馬鹿を言うな。あれはまさしく死神だ。とても生身で勝てる存在ではない。例の装置を起動させて、魔王城ごと一気に殲滅するぞ」
「当初の予定と大幅に計画の変更になりますが、よろしいのですか」
「構わぬ。あのような者たちが現れたからには、手段を厭うている場合ではない。現状どの程度まで魔力が集まっておるのだ?」
「戦鬼車5両は、すでに充填が完了しています。ただし大戦鬼車は、いまだ65パーセントで主砲の使用は困難です」
「致し方がなし。このまま急ぎ出撃する」
「最大限急いでも、明朝になりますが、よろしいでしょうか」
「それでよい。魔王城にて我を追い出した者たちには、死を以って償わせる」
フォン=ファウストが話をしているのは、彼の同族であるレプティリアンであった。だがその遣り取りでもわかるように、フォン=ファウストのほうが上位存在のようだ。実はこの場で作業をしているレプティリアンは全部で10体、彼らは全てクローンであって、オリジナルはフォン=ファウストである。
そしてこの場所は、魔族たちが古代遺跡と呼ぶ施設の内部。だがその名称とは違って、まるで未来科学によって建設された基地のようなスペースが広がっている。もっと正確に言うならば、研究ラボという呼び方がさらに適切かもしれない。
この中世然とした社会体制の異世界にあって、ここだけがまるっきり別世界。何だったら日本よりも科学技術が進んでいるかもしれない。だがこの場で使用されている機器の設計理論は、地球の技術工学とは全く系統が異なっている。敢えて言うならば、魔法工学技術の最先端研究所とでもいうべき姿こそが、この古代遺跡の内部であった。
◇◇◇◇◇
変わってこちらは魔王城、無事に謁見の儀を終えた美鈴が、仮の所在場所と定めた賓客室でややお疲れ気味の表情を浮かべている。
「美鈴は古代遺跡が何らかのカギを握っていると考えているのか?」
「ええ、おそらくはね。確証があるわけではないけど、そんな気がするのよ。まあ実際に足を運んでみれば、どうなのかわかるでしょう。それに…」
「それに? 何だ、続きが気になるな」
「古代遺跡なんて、ロマンがあるじゃないの」
「ロマンなんて甘い物だったらいいけどな」
聡史と美鈴を比較すると、どうやら美鈴のほうが遺跡の探索に乗り気のようだ。何か興味を惹かれる物があるのかもしれない。
この日宰相が謁見の間から転移魔法で消え去ってから後は、大広間は美鈴とクルトワに忠誠を誓う会場と化し、一人ずつ玉座の前に跪く貴族たちに言葉をかける二人はややグッタリした表情であった。だが大魔王様と王女殿下に声を掛けられた者たちは、喜びに満ち溢れたピカピカの表情をしており、互いに肩を叩き合って新たな魔王城の門出を祝うかのようなはしゃぎぶりであった。
すでに夕食の時間が始まってしばらく経過しているので、桜、明日香ちゃん、クルトワ、玉藻の前はたっぷりとクリームが乗せられたパフェに舌鼓を打っている最中。もはや何を話し掛けても無駄である。殊にクルトワは、これ以上ないほどの幸せそうな表情でパフェを堪能している。パフェの前では謁見の疲れも吹き飛んでしまうようだ。
「明日は朝早くから出掛けるから、今夜は早く休むのよ」
そう言い残して、美鈴は部屋に戻っていく。聡史とカレンもその後に続いて姿を消す。だが残った四人の晩餐はさらに続く。一体どこに入るのかとメイドたちがビックリするくらいに、眠くなるまで次々と様々なデザートを味わい続けるのであった。
◇◇◇◇◇
翌朝、デビル&エンジェルの五人と天狐に玉藻の前、クルトワ、レイフェン、フィリップ、エリザベスというメンバーに護衛や移送を担当する騎士たち三十人が馬車に分乗して、魔王城の北部にある古代遺跡へと向かう。
遺跡は城から10キロほど離れた丘陵地帯の麓に所在しており、その入り口はまるでダンジョンのような造りとなっている。
「遺跡というからには、平城京の跡とかマチュピチュのような景色を想像していましたが、ここは地下に潜っていくんですね」
「桜ちゃん、てっきり観光地のようになっているのかと思っていましたよ~。古代遺跡まんじゅうは、どこに売っているんでしょうか?」
「いやいや明日香ちゃん、異世界でまんじゅうを売っているほうが、逆に怖いですよ」
「ええ~、遺跡観光を楽しみにしていたんですよ~。それよりも桜ちゃん、私はこしあんよりも粒あんのほうが好きなんです。本当に売店はどこにもないんですか?」
ちょっと勘違いしていた桜と、あらゆる点で大幅に間違っている明日香ちゃん。もはや本当に会話が嚙み合っているのかどうかすらもわからない。このところクルトワがドジで痛い子という面を盛んに発揮しているが、それでも明日香ちゃんの天然ぶりの牙城には、指一本触れることさえ不可能ではないだろうか。
「二人とも、しょうもない話をしている場合じゃないぞ。とりあえず何があるのか確かめに、この洞窟に潜ってみよう」
桜と明日香ちゃんの会話をぶった切るように、聡史が号令をかける。馬車の番をする数人の騎士をこの場に残して全員が洞窟状になっている古代遺跡に入ろうとしたその時、突然辺り一面に響く地鳴りのような音が聞こえてきた。
「何の音だ?」
遺跡の入り口に入りかけた聡史が踵を返してその方向に目をやると、丘陵地帯の山肌が左右に大きく動いている。地滑りとか崖崩れのような自然に沸き起こった現象ではなくて、どう見ても人為的に山肌がきれいに左右に分かれているのだ。
耳障りな音を轟かせる山肌の動きが止まると、今度は割れた山肌の底の部分には、パックリと巨大な空洞が現れる。どこまで深く続いているのかも聡史の位置からではわかりかねるが、やはりその地下に続く巨大な空洞は人工的に造られた産物にしか映らない。
「何が出てくるのかしらね?」
「注意するに越したことはないだろう。美鈴、フィリップたち騎士団とクルトワは安全な場所まで下がらせてくれ」
「ええ、わかったわ。エリザベス、フィリップ、クルトワを連れて安全な場所まで馬車で下がりなさい」
そう指示を出す美鈴に、フィリップたちが食い下がる。
「我らの大魔王様をお守りする盾でございます。どうかお側に」
「あなたたちでは太刀打ちできない相手が出てくる可能性が高いわ。ともかくクルトワを守ることに専念しなさい」
「御意」
不本意そうなフィリップたちだが、クルトワの身も大事だ。渋々馬車を取って返して、後方に下がっていく。その間に、地下に繋がる空洞からは何かがせり上がってくるような音が響いてくる。
「どう表現したらいいのかわからないが、大型の貨物を運搬するエレベーターのような音だ」
「そうね。次第に音が地表に近づいてくるみたいよ」
ウイーーンという重機独特の音が徐々に大きくなると、その貨物エレベーターは数台の物体を地上に運び上げた。カーゴスペースに搭載されているのは、地球では兵器としては割とポピュラーな存在である戦車とよく似ている。
台車に当たる部分は、左右にキャタピラーがついた荒れ地での踏破性を重視した形態で、地球における戦車とそっくりな形状だ。だがその台車に乗せられている部分には大きな違いがある。
地球の戦車では、着弾の危険性を減らす観点から前面投影面積を減らすために地上高を抑えた平べったいデザインが主流だ。その上砲塔は旋回式で前後左右自在に照準を付けられる仕様となっている。
だが聡史たちの目の前に姿を現した戦車のような物体は、金属製の台車の上に奈良の大仏を乗せたようなデザインをしている。もうちょっと詳しく説明すると、金属製の鬼のような姿をした人型の上半身が乗せられているのだ。その人型の腹部には、全長1メートル足らずの短い砲身の主砲らしきものが取り付けてあり、どうやらそこから何かを発射するらしい。さらに人型の左右には、計4本の腕が取り付けてあって、どうやら接近してくる敵を払いのける用途に用いるものとみられる。
「なんとも面白兵器が出てきたぞ」
「台車に鬼のような上半身を乗せて、一体何がやりたいのかしら?」
「見た感じだと総重量は30トンを切る程度だな。軽戦車と同サイズのようだ」
聡史と美鈴は、地下から登場した戦車のフォルムに真顔で驚くが、驚いてばかりではいられないと、その戦力分析を始めている。
聡史の見立ては概ね的確で、全長4メートル弱、全幅2.5メートル、総重量は28トン、搭乗員は操縦手と砲手の2名で、魔力を電気に変換したモーターで駆動されている。最高速度は時速約30キロメートル。車体が小型なのはモーターの出力が低いせいで、これ以上車体を大きくできないという制約があったようだ。
地球の戦車のように長い砲身が取り付けられていないのは、魔法による攻撃を主砲から打ち出すためで、そのために人型の胴体内部に大型の魔法陣が埋め込まれている。魔法陣を垂直方向に搭載するほうが魔砲弾の射出システムを簡略化できるので、敢えて人型の上半身を造って台車の上に据え付けた格好となっているのであった。
「聡史君、もしかしてあんな不細工な戦車と戦うのかしら?」
「わざわざ地下から出てきたのは、何らかの目的があるんだろうな。魔王城にいられなくなった仕返しとか」
二人はまだ様子見の段階だが、その後方では桜が腕捲りしながら今にも飛び掛かっていきそうな勢いであった。
「桜ちゃん、観光気分だったのに、何か変なものが出てきましたよ~」
「明日香ちゃん、いい感じに敵が出てきたようですから、ここはひと暴れしましょう」
「私はクルトワさんたちに合流します。だって危ないじゃないですか」
「まったく、明日香ちゃんは相変わらずヘタレですね」
とはいうものの、リーダーの聡史からは何も指示が出されない。桜と明日香ちゃんは、この場から動いていいのか一瞬迷った。その時…
「どうやら動き出したようだな」
「ずいぶんノンビリした動きね。私が軽く仕留めようかしら」
「攻撃の意思を示すまで待とう。カレン、念のため安全地帯を築いてくれ」
「はい、わかりました」
こうして聡史たちは、こちらに向かって迫ってくる奇怪な戦車を待ち受けるのであった。
「ファウスト様、戦鬼車の前方に人影があります。全員人族のようで、一人は黒いドレスを着た女です」
「なんだと! あやつらめ、ノコノコ自分からこちらに向かってきたのか。遠慮せずに攻撃しろ。魔王城を跡形もなく消し去る前に、奴らの血を餞とするのだ」
「了解しました、あと3分で射程距離に入ります」
「うむ、吉報を待つ。我も大戦鬼車ですぐさま後を追う」
こうして5両の戦鬼車は、フルスピードで丘陵の麓を駆け抜けて、聡史たちが待ち構える場所へと一直線に向かう。
「射的距離に到達した。全車一斉に砲撃開始せよ」
「「「「了解」」」」」
5両の戦鬼車に搭載されている5門の主砲が一斉に魔法弾を撃ち放つ。その威力は上級魔法に匹敵し、着弾した瞬間に大爆発を引き起こす。街を守る城壁程度であったらひとたまりもなく破壊されるはずだ。
戦鬼車が射出した魔法弾は、付近の岩などを猛烈な勢いで吹き飛ばすが、最終的にカレンが展開する天使の領域に阻まれて聡史たちには届かない。
「美鈴ちゃん、撃ってきたけど反撃しませんの? 何でしたら私が突っ込んでいきますわよ」
「桜ちゃん、そんなに慌てなくても大丈夫よ。私が一人で片付けるから」
早く暴れたくてウズウズする桜が急かすが、美鈴は一向にそちらには顧みない。桜を押し留めながら、頭の中で術式を構築する。
「大地の怒りよ、この大魔王の眼前に顕現せよ。荒れ狂う地の怒り、岩盤流波」
珍しく柄にもない詠唱を行った美鈴。気合いが入っている証なのだろう。
詠唱に合わせて美鈴の魔力が地面に向けて放出されると途端に地表が波を打って、あたかも波しぶきを掻き立てて荒れ狂う海の如くに脈動する。津波のような地面の脈動は、5両の戦鬼車を飲み込んで波にもてあそばれる木の葉のように制御を奪う。
「なんだこれはぁぁぁ。操縦不能だぁぁぁ」
「何とか車体の制御を取り戻せぇぇぇ」
戦鬼車に搭乗するレプティリアンたちは、操縦桿を握って必死に車体の姿勢を保とうとするが、次から次に襲ってくる地面の大波に飲み込まれて、1両、また1両と横転する。
「トップヘビーな車体が仇となったな」
「あんな不細工な形状だったら、足元を狙うのは鉄則でしょう」
美鈴は魔法を食らって横転した戦鬼車を見ながら、当たり前のような表情をしている。まあ確かにその形状は、あまりにもバランスが悪いのは言うまでもなかろう。
さて、横転した戦車というのはもう何も役に立たない単なる鉄の箱に過ぎない。搭乗員たちは慌てて後部にあるハッチから外に飛び出していくが、美鈴は容赦しなかった。相手がレプティリアンならばなおさらだ。
「ヘルファイアー」
広範囲に広がっていく漆黒の炎。いくらレプティリアンでも、体にまとわりついてくる地獄の炎の前には無力。一人、また一人と炎に巻かれて、骨までこんがりと灰になるまで焼かれていく。
金属製の戦鬼車も、その外観を止めない程に熱せれた末に、溶鉱炉の中身のような灼熱の溶けた鉄に戻っている。アイルビーバックの人でも顔色を変えて逃げ出す勢いであった。
「意外とあっさり終わったな」
「多分すべてが終わったわけではないでしょう。まだあの宰相本人が出てきていないわ」
「えっ、美鈴ちゃん。まだ続きがあるんですか?」
聡史と美鈴の会話の割り込んできたのは、もちろん桜であった。美鈴に出番を譲った結果、心の内で燻っている戦いの炎の行き場がなくて少々ご機嫌斜めのところにもってきてこの一言。闘争本能に再点火されるのは言うまでもない。
「さあ、どこからでも掛かってきなさい」
気合十分に戦鬼車の残骸が残る丘陵方面を見遣る桜。ヘルファイアーによって巻き起こされた煙が風に流されていくと、その視線の先のは戦鬼車とは比べ物にならない巨大なシルエットが浮かび上がる。
その形状は、戦鬼車と比較しても不気味の一言。まず全体の大きさが巨大であった。高さが10メートル近くはある馬鹿デカい戦鬼の像のような物体が、まるでこちらを睥睨するかのように聳え立っている。リアルに大仏サイズだ。
それだけならただ大きさで驚くだけなのだが、その形態の不気味さを醸し出しているのは、駆動システムだ。おそらくが重量の負荷が大きすぎて、キャタピラーでは動かせなかったのであろう。その馬鹿デカい鬼の上半身を動かしているのは、なんと夥しい数の金属で作られた触手であった。
ちょうど〇ヴァンゲリオン仮設5号機と同じような構造体だ。そう、あのメガネの女子が搭乗するちょっと中途半端な機体とよく似ている。違う点は上半身のデザインと、戦鬼車と同様に腹部に主砲と思しき砲口が据え付けられている点であろう。
その不気味な車体は… 車はついていないので車体と呼んでいいのかわからない。ともかく触手で動く奇妙な物体だが、外付けされているスピーカーでもあるのか、合成された音声が大音量で周囲に撒き散らされる。
「貴様ら、我の同胞をこのような目に遭わせるとは、絶対に許さぬぞ。そのはらわたを引き抜いて、魔物のエサに放ってくれる。この大戦鬼車は無敵。太刀打ちなど不可能と知るがよい。貴様らは恐怖に塗れながら何ら反抗もできずに死にゆくのだ。ウワッハッハッハ」
エレベーターに乗せられてせり上がってきたばかりの大戦鬼車には、どうやら件の宰相が搭乗しているようだ。しかも味方の戦鬼車が全滅している光景を目の当たりにして、相当にキレている模様。ウネウネと伸びる触手を動かしながら、巨体に似合わずに戦鬼車よりも速い速度で迫ってくる。
だが美鈴は、今にも襲い掛かろうとする桜を聡史に足止めさせておいてから、魔力で拡声した音声で大戦鬼車に搭乗するフォン=ファウストに問い掛ける。
「そなたは何が目的なのだ? レプティリアンとして正体が明らかになった以上、その野望はすでに大きく綻びておると気付かないでもないだろうに」
「ふん、我が目的を知りたいと申すか。よかろう、愚かな人族にもわかるように懇切丁寧に教えてやろう。どうせ死にゆく者たちへの餞別代りだ」
あくまでも上から目線を崩さない宰相。これだけ追い詰められているというにも拘らず、大戦鬼車があればまだ逆転可能と考えているようだ。一旦停止して、美鈴と正面から向き合う。
「面倒な前置きはよい。我の問うたことにのみ答えるがよい」
「ふん、口だけは達者なものよ。さて、我らレプティリアンは、はるかな太古… 数えるのも面倒になるが十数万年前にこの惑星に移住してきた存在。その後現在の魔属領を中心にして、地下に数か所のコロニーを築いた。我らレプティリアンにとってこの世界の直射日光というものは、少々体への負担が大きかったゆえに地下に生存場所を求めた。もっともその後の遺伝子操作で太陽光への耐性は得ているので、現在はこうして外で活動しても問題はない」
「なるほど、魔属領に所在する古代遺跡は、そなたらレプティリアンによるものであったか。ではこちらから問おう。人族の領内に所在する古代遺跡は、何者の手によるものなのか?」
「あちら側に存在する古代遺跡は、我らにとって天敵とも呼べる姿なき存在… 現在を生きる種族たちにとっては神として崇められるモノが創生した知的生命体によるもの。その種類はバラエティーに富んでおり、人族、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族などの祖先にあたり、その子孫たちは現在もこの世界に生き残っている」
「興味深い話であるな。こちらの世界においてもどうやら文明間の衝突があったと考えてよいのか?」
「然り。我らレプティリアンと姿なき神々は相容れぬ。過去において何度も双方の存亡を懸けた戦いが繰り広げられた。その結果として古代文明は衰退に向かう。技術レベルを維持可能な生命体の必要数すら失い、世代を経るにしたがって輝かしい時代を築いた栄光ある文明や科学理論を理解可能な子孫が少なくなっていった」
「一つの文明が滅びる様というのは、何処の世界にも共通するものであるな」
美鈴はルシファーの記憶を基にして地球の歴史に当てはめて、ある種の相似論としてこの世界の文明の栄枯盛衰の時間的な流れを頭に思い描く。たった一つの技術や理論が分からなくなっただけで、それを基に組み上げてあった機器の補修や維持管理が不可能になってくる。それが次第に広がっていくと、目の前にある物体がどのように生活の役に立つのかすらわからなくなってしまう。
地球においてムーやアトランティスの文明は、天変地異というファクターもあったおかげで跡形もなく海中に沈んでしまった。おそらくその影響たるやこの世界の比ではなかったであろう。だが一つの文明を失った人々の復活の道のりは、地球とこの世界では大幅に異なってくる。魔素が少ない地球においては科学文明を発展する方向に社会全体が動いて、逆に魔素が豊富なこの世界は魔法文明に重きを置いて発展した。
双方の世界の違いといえば、地球においては知的生命体の生存を脅かす強力な魔物の存在が、ある種の例外を除いて少なかった点であろうか。魔素が豊富ということは、体内にそれを取り込んで変質する生物が発生するということだ。この強力な魔物の存在があったせいで、この世界は地球と比べて大きく発展から取り残されてしまった。
「さて、我らレプティリアンも永らく文明を失った民として安全な地下で息を潜めて暮らしていた。だがそこに、我が種族の救世主が突然現れた。救世主はテラと呼ばれる水の星から来たそうだ。彼の者は失われた古代技術の一部を再現し、かつ我らにその扱い方を教えた。そしてダンジョンによって二つの世界を繋いで、我らレプティリアンが支配する統合された世界を築こうと持ち掛けた。もちろん我らは喜んでその言葉に従った。互いの惑星に存在する知的生命体を我らレプティリアンが全て従えて、両世界に跨る偉大な帝国を築き上げる。なんと甘美で神々しい誘惑であろうか。我らレプティリアンが、二つの世界の新たな神として君臨するのだ」
「なるほど… 水の星テラか。どうやらその偽物の救世主は、地球から転移してきたと考えて間違いないようだな。日本に創り出したダンジョンとこちらのダンジョンを繋いだ思惑が、そなたの証言でようやく明らかになった」
「感謝など要求せぬ。その命を対価に捧げればよいぞ」
「薄汚いトカゲの分際は、宇宙の汚泥の中で一生もがいているのが似合いだ。身にそぐわぬ野望を自らを滅ぼすぞ」
「我らこそが新たな神、邪魔をする者は全て排除してくれる」
「そなたら種族の運命を懸けて戦うがよい」
こうしてフォン=ファウストの口からレプティリアンの目的を聞き出した美鈴。すでに利用価値はないという目で大戦鬼車を見遣る。
そしてついに魔族の国を巡る最後の戦いの火蓋が、改めて切って落とされるのであった。
ついに地球にダンジョンが出来上がった理由が明らかに。聡史たちは奇怪な大戦鬼車との本格的な戦闘へと…… この続きは出来上がり次第投稿いたします。どうぞお楽しみに!
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