はじまりの朝 ①
「今日も雨か」
と俺は家を出た瞬間一人でつぶやいた。
雨自体は嫌いではないが、スーツを着ている日は雨でスーツが足に張り付くので嫌いであった。
家の鍵を閉め歩き出した。
俺の名前は内海 龍也という。
関西の国立大学の4回生だ。
今迄の人生は真面目に生きてきて、大きな挫折もなく、大きな成功もなく、ごく平凡に生きてきた。
今も平凡な人生の延長線上で社会の流れに身を任せて就職活動をしている。
みんなが就活をしているし、それが普通だからしているという程度でやっていて、夢も特にない。
大学受験も同じだった。高校時代部活のラグビーに打ち込み、当時のあだ名はターミネーター。
その結果、現役では大学受験には失敗したが挫折感を味わう事もなく、何も疑わず浪人した。
1年の浪人生活も苦しむ事なく大学受験を終え、現在に至る。
友人には一流大学に入りながら途中で芸人を志し、大学を辞めた人もいた。
そのような自分のやりたい事の為に、安定した平凡な今を捨てられる人に憧れたりもした。
しかし、俺には今の安定を捨てる勇気も覚悟も、夢もなかった。
むしろ夢を探しすらしていなかった。
そんな俺でも優秀に平凡をこなし、教師、親の評価は良かった。
今回の就活も現在12社受けて、3社から内定をもらい、2社は最終選考まで行き、4社は最終選考待ち。
世間では就活が厳しいと言われる中、俺は自分の身の丈に合わない所を受けず妥当な規模の企業を受験している為苦労はしていない。
しかし、現在受けている企業の中でやりたい仕事はない。
ただ、それはやりたい事がない俺にとってはどんな会社を受けての同じ事だった。
どんな企業でどんな仕事でもこなせる自信があった。
いや、人が集まるような仕事でそんな特殊な仕事はない、やり方を覚えれば誰でも出来るような仕事ばかりだろうから問題ないと考えていた。
今日も就活。
もう内定をもらっているし、雨で面倒くさいし、就職活動を終わりにしても良かった。
しかし、今日面接に行く会社に対して少し特別な感情を抱いていたので面接に行く事にした。




