Logfile_026:不適切なリソース割り当て
「……というわけで、ここからは俺がこの熱源のプロセスを管理する。君たちはそこで待機していなさい」
御八代さんはあたしたちの間に座り込んだまま、ぐにゃりと曲がったトングで器用に肉を裏返し始めた。完全に、あたしと神楽坂くんの『会話の導線』を物理的にブロックしている。
(……ウケる。自分で神楽坂くんを推してきたくせに、いざ仲良くしてたら我慢できなくて割って入ってくるとか、最高にダサくて可愛いんですけど!)
あたしは内心でガッツポーズを決めつつ、さらに追い打ちをかけることにした。
「えー、でも御八代さんは『バックグラウンドで見守る』って言ってたじゃないですか。お肉は神楽坂くんが焼いてくれるから、御八代さんは三本木課長たちのところでビールでも飲んできてくださいよ」
「……」
「そうですよ御八代さん!若いもん同士でやりますから、休んでてください!」
空気を読まない神楽坂くんの無邪気な追撃が、御八代さんの急所にクリティカルヒットした。
「……『若いもん同士』だと?」
御八代さんの声のトーンが、さらに一段階低くなる。
「そうだ。俺は45歳のレガシーシステム。君たちのような最新のOS同士で通信するのが、最も効率が良い……そう言ったのは俺だ」
御八代さんはブツブツと呪文のように呟きながら、焼き上がった大量のお肉と野菜を、なぜかすべて『あたしのお皿』にドサドサと積み上げ始めた。
「ちょっ、御八代さん!?こんなに食べられないですよ!」
「エネルギー(カロリー)を摂取しろ。若いハードウェア(神楽坂)と通信するには、膨大なリソースが必要なはずだ。ほら、食え。もっと食え。俺が焼いた肉だ。安全基準はクリアしている」
「いや、だから量がっ!」
「あ、御八代さん!俺のさらにもお肉お願いします!」
神楽坂くんが明るく皿を差し出すと、御八代さんは一瞬だけ冷たい目を向け、焦げて炭のようになった玉ねぎをポンと乗せた。
「……神楽坂は、自力でリソースを確保しろ」
「えっ!?嘘でしょ御八代さん、俺だけ炭!?」
完全に、公私混同の極みだった。親心だのメンターだのと高尚な理屈を並べていたインフラの神様は、今やただの『嫉妬に狂った大人気ないオジサン』に成り下がっていた。




