Logfile_024:キャンプ場の異常トラフィック
そして迎えた、秋季レクリエーション当日。
色づき始めた紅葉に囲まれたオートキャンプ場で、あたしは気合いをいれた秋服に身を包んでいた。
「おー、ミソラちゃん。その服可愛いね!」
「でしょ?オフショルの秋色ニットに、ショートブーツ。BBQだから動きやすさもキープしつつ、適度な肌見せで女っぽさをアピールする『狩猟用アーマー』だよ」
莉奈と栞にドヤ顔で見せていると、食材の入ったクーラーボックスを抱えた神楽坂くんが走ってきた。
「三神さん!お疲れ様です!うわ、今日の服、すっごくオシャレですね。会社にいる時と雰囲気違って、ドキッとしちゃいました」
「あはは、ありがと。神楽坂くんも荷物持ち助かるー。重いでしょ、半分持つよ?」
「いいですいいです!男の俺に任せてください!」
神楽坂くんは分かりやすく顔を赤くして、ニコニコとあたしの隣を歩き始めた。26歳と25歳。傍から見れば、美男美女(自分で言うのもアレだけど)の同世代カップルにしか見えないはずだ。
ーーー
「……」
その様子を、少し離れた焼き場の前から、御八代は死んだような魚の目で凝視していた。手にはトングを握りしめ、ボサボサの頭には不似合いなアウトドア用のハットを被っている。
「おい一也。肉焦げてるぞ。炭になってる」
隣で缶ビールを開けた三本木が呆れたように言った。
「……問題ない。完全な殺菌処理だ」
御八代はギリッ、とトングを握りつぶさんばかりの力で炭を砕いた。視線の先では、オフショルニットから覗くミソラの白い肩に、神楽坂が照れくさそうに笑いかけている。ミソラも楽しそうに笑い返し、二人の距離は極めて近い。
(……そうだ。あれでいい。神楽坂の年齢とスペックは、彼女と完全に一致している。俺のような時代遅れのレガシーシステム(オジサン)が介入するより、圧倒的に正しいネットワーク構成だ……。俺は、父親のように彼女の幸せを……)
そう論理的に結論づけているはずなのに。
「……なぜだ。なぜ俺の内部ファンが、さっきから異音を立てて高速回転しているんだ」
胸の奥を、ドス黒く熱い『何か』が焼き焦がそうとしている。親心だと言い聞かせたはずのファイアウォールが、ミソラが他の男(神楽坂)に向けた笑顔一つで、根元からメキメキと音を立ててヒビ割れていく。
「お前、本当にめんどくさいな。自分がキューピッド気取ってくっつけようとしたくせに、いざ二人が仲良くしてたら『嫉妬』で爆発しそうになってんだろ」
「し、嫉妬などではない!これは……適切なリソース配分が行われているかどうかの、厳格なパケット監視だ!」
「トング曲がってんぞ、おっさん」
強がる御八代の目には、もはや論理も理屈も介入できない、ただの『恋に焦る男』の炎が宿り始めていた。




