Logfile_023:強制的なルーティング(お節介)
BBQ大会の数日前。
グループの代表者が集まって買い出しの打ち合わせをするため、あたしは会議室に向かった。
「お疲れ様です、御八代さん!買い出しの担当なんですけどーー」
「三神さん。ちょうどよかった」
会議室にいた御八代さんは、あたしを見るなり、隣にいた神楽坂くんの背中をポンと叩いて前に押し出した。
「えっと……神楽坂くんだよね?例のシステムトラブル……の時以来だね」
「あ、はい!あの時はご迷惑をおかけしてすみませんでした。カスタマーサポート部の三神さんですよね。いつもトップの成績ですごいって、社内でも有名ですよ」
神楽坂くんは照れくさそうに笑いながら頭を下げた。普通に爽やかな、同世代の好青年だ。
「神楽坂は、インフラチームでもトップクラスの処理速度(若さと体力)を持つ優秀なハードウェアだ。性格も素直で、保守性(誠実さ)に優れている。三神さん、君のスペック(年齢・価値観)と最も互換性が高いのは、こういう男だ」
「……はい?」
あたしは耳を疑った。まるで商品のプレゼンをするみたいに、御八代さんが神楽坂くんを猛プッシュしてきたのだ。
「今回のBBQの買い出しやテントの設営は、すべて神楽坂をメインサーバーとして君たち二人で実行するといい。俺はバックグラウンドで監視(見守り)に徹する。……若い二人で、大いに親睦を深めなさい」
御八代さんは『どうだ、完璧な配慮だろう』と言わんばかりの、どこか誇らしげな保護者ヅラであたしを見つめてきた。神楽坂くんは「えっ、俺と三神さんで!?」と顔を赤くしている。
(……はぁ!?なにそれ!?)
胸の奥で、カチンッ!と何かが弾ける音がした。せっかくのBBQで御八代さんと距離を縮めようとしていたのに。よりによって、あたしに他の男(しかも後輩)をあてがって、自分は「見守る父親」ポジションに逃げ込もうとしているのだ。
「……あ、そう。御八代さんは『監視』するだけなんですね。わかりました」
あたしは笑顔のまま、声のトーンを限界まで冷たくして言い放った。
「じゃあ神楽坂くん、買い出しのリスト作ろっか。LINE交換しとく?」
「えっ、あ、はい!喜んで!」
あたしが神楽坂くんとスマホを寄せ合って連絡先を交換し始めると、御八代さんは「うむ、スムーズなセッション確立だ」と満足げに頷きながらも、なぜかその眉間には、無意識のうちに微なシワが寄っていた。




