Logfile_022:秋季レクリエーションと互換性
「全社合同・秋季バーベキュー大会……?」
数日後。カスタマーサポート部のフロアの掲示板に貼り出された案内を見て、あたしは目を輝かせた。
毎年秋に行われる、部署の垣根を超えた社内レクリエーションだ。今年は少し遠出をして、県内の大きなオートキャンプ場を貸し切って行われるらしい。
「しかもこれ、グループ分け見たら、あたしたちの班、インフラチームと合同じゃん!」
莉奈が案内のプリントを指差して言う。
「ホントだ!御八代さんも同じ第4グループにいる!」
「これはチャンスだね、ミソラちゃん。オフィスを離れた開放的な空間なら、御八代さんの『保護者モード』のガードも少しは緩むかもしれないし」
栞の言葉に、あたしは力強く頷いた。
(親心なんて言い訳、絶対に通用させない。大自然の中で、あたしが立派な『大人の女』だってことを思い知らせてやるんだから!)
ーーー
同時刻、インフラチーム。
「……おい一也。お前バーベキューの出欠、まだ出してねぇだろ」
三本木がプリントを片手にデスクにやってきたが、御八代は不快そうに眉をひそめた。
「俺は行かん。休日にまで大量のノイズ(社員)が密集する環境に身を置くなど、論外だ」
「そう言うなよ。今年はウチのチームと、三神さんたちがいるカスタサポが同じグループなんだぜ。お前が行かなくてどうすんだ」
「……」
三神ミソラの名前が出た瞬間、御八代のタイピングが一瞬ピタッっと止まった。
「……なるほど。彼女が参加するのか」
御八代は黒縁メガネを押し上げ、極めて真面目な顔で頷いた。
「野外という予測不能な環境において、若い女性社員には様々なセキュリティリスクが伴う。適切な管理者(保護者)である俺が、現地で監視体制を敷く必要があるな」
「出たよ、都合のいい親心ロジック。素直に『好きな子とBBQしたいです』って言え」
「馬鹿な。俺はあくまでメンターとしてーー」
その時、二人の会話に横からひょっこりと顔を出した人物がいた。
「あの、お疲れ様です!今回のBBQ、俺も第4グループみたいです。準備とか力仕事、任せてくださいね!」
インフラチームの若手エンジニア、神楽坂陸(26)だ。
彼を見た瞬間、御八代の脳裏に、ある『極めて論理的なひらめき』が走った。
(神楽坂陸。年齢26歳。三神ミソラ(25)との年齢差、わずか1歳。……そうだ。彼女の将来を考えるなら、親ほど歳の離れた俺ではなく、世代間ギャップのない同世代のノード(若者)同士をピアツーピアで接続させるのが、最も理想的なネットワーク構成ではないか……!)
「……神楽坂」
「は、はいっ!何でしょうか御八代さん!」
「今回のBBQ、お前の権限を最大限に引き上げてやる。期待しているぞ」
「えっ!?あ、ありがとうございますっ!」
(これでいい。彼らを結び付ければ、俺のシステム内で発生している異常なエラー(恋心)も、完全に親心として論理的に処理できる!)
見当違いにも程がある解決策を思いつき、御八代は一人で深く頷いていた。




