Logfile_021:プロトコル不一致と次なる戦略
「……っていうことがあったんだけど!?なにあれ!なんで急にお父さんみたいになってんの!?」
午後の休憩室。あたしはカフェラテのストローを噛み潰さんばかりの勢いで、莉奈と栞に愚痴をこぼしていた。
「あははっ!さすが鉄壁のインフラさん、斜め上の防壁張ってきたねぇ。ミソラのギャルアプローチを『親心』で全弾無効化とかウケるんだけど」
莉奈がお腹を抱えて笑っている。
「笑い事じゃないよ!この間の関節キスとか手繋ぎとか、あのドキドキはなんだったの!?なんで『睡眠時間足りてるか?』なんて言われなきゃいけないの!」
「まぁまぁ、落ち着いてミソラちゃん」
栞が苦笑いしながら、あたしを宥めるように口を開いた。
「でも、御八代さんのその態度……逆に言えば、ミソラちゃんの存在が彼の中で無視できないくらい大きくなってる証拠じゃないかな」
「どういうこと?」
「御八代さんみたいな理屈っぽい大人の男性にとって、20歳下の女の子に『恋をしている』って認めるのは、すごくハードルが高いことなんだと思うよ。自分の立場とか、年齢差による世間体とか……」
栞は真面目な顔で、論理的に解説を続ける。
「だから、自分の中に芽生えた特別な感情を『これは恋愛じゃなくて、優秀な後輩に対する親心なんだ』って、無意識に言い訳(エラーコードの再定義)をしてるんじゃないかな。そうすれば、ミソラちゃんに優しくする正当な理由ができるから」
(なるほど……!恋を認めたくないから、親心ってことに逃げてるってこと!?)
栞の名推理に、あたしの頭の中で散らばっていた情報がカチッと繋がった。
「なんだ、そういうことか。……オジさんってば、本当に素直じゃないんだから!」
あたしはムクムクと湧き上がる闘志を感じながら、ニヤリと笑った。
「つまり、あたしが『娘』や『後輩』じゃなくて、一人の『女』だってことを、その理屈っぽい脳味噌にバッチリ叩き込んでやればいいってことだよね!」
「ミソラ、また悪い顔になってるよ……。でもまぁ、そのポジティブさは尊敬するわ」
莉奈が呆れつつも応援するように肩をすくめる。
分厚い『親心』という名のファイアウォール。でも、そんな言い訳、トップオペレーターのあたしが絶対にブチ壊してみせる。
オジさんとギャルの不器用な攻防戦は、新たなステージ(世代間闘争)へと突入しようとしていた。




