Logfile_020:アップデートされたファイアウォール
「御八代さーん!お疲れ様ですっ!」
翌日の昼休み。あたしはいつものように微糖の缶コーヒーとブラックの缶コーヒーを持ち、ウキウキとした足取りでインフラチームのデスクに突撃した。この間のデート(実地調査)以降、あたしたちの距離は劇的に縮まっている。そろそろ次のデートの約束を取り付けたいところだ。
「……三神さんか。お疲れ様」
御八代さんはモニターから顔を上げ、あたしを見た。
(あれ?いつもみたいに露骨に動揺してない……?)
いつもなら、あたしが近づいただけで耳を赤くして視線を逸らすのに、今日の御八代さんはやけに落ち着いている。というか、表情がどこか穏やかですらあった。
「あの、これ差し入れです。午後も頑張りましょうね!」
あたしが上目遣いで缶コーヒーを差し出すと、御八代さんはそれを受け取り、小さく頷いた。
「ありがとう。……だが三神さん、昼食に菓子パン一つというのは感心しないな」
「えっ?」
「君の年齢なら、もっと適切な栄養素の摂取(バランスの良い食事)を心がけるべきだ。タンパク質とビタミンが不足すると、午後のパフォーマンス(業務効率)に影響が出るぞ」
(……は?なにこのお説教?)
面食らうあたしをよそに、御八代さんの『保護者モード』はさらに加速していく。
「それに、最近少し帰りが遅いようだが、夜更かしはしていないか?睡眠というアイドルタイムをしっかり確保しないと、システムの寿命(健康)を縮めることになる。休日はしっかり休んでいるのか?」
「え、いや……休んでますけど……」
「そうか、ならいい。君は優秀なオペレーターだ。今後も健全なキャリアパスを描けるよう、生活基盤の維持には十分に気をつけてほしい。……何か悩みがあれば、いつでも相談に乗ろう」
御八代さんは、まるで『出来のいい娘を見守る父親』のような、慈愛に満ちた(?)、眼差しであたしを見つめてきた。
(な、なんなのこれぇぇぇ!?)
甘い雰囲気を出そうとしたのに、完全に「進路指導室の先生」みたいな空気にされてしまった。あたしは完全にペースを乱され、「は、はい……」と引きつった笑いを返すことしかできなかった。




