Logfile_014:セッションの確立
日曜日、午後1時。
約束のカフェに行くため会社近くの最寄り駅で、あたしは少しだけそわそわしながらスマホの時計を見ていた。今日のあたしは、落ち着いたベージュのニットワンピース。巻き髪もゆるふわ程度に抑え、メイクもいつもより引き算を意識した『大人め・微糖仕様』だ。
(御八代さん、休日はどんな服着てくるのかな……。やっぱりいつものカーディガン?それとも……)
「……三神さん。待たせたな」
背後から聞こえた低い声に、あたしは勢いよく振り返った。
「あ、御八代さーー」
言葉が、途中で止まった。そこに立っていたのは、いつものボサボサ髪を少しだけ整え、ネイビーのカジュアルジャケットに清潔感のある白シャツを合わせた御八代さんだった。サイズ感もピッタリで、大人の男の余裕と色気が溢れ出ている。
(えっ!?噓でしょ、なにこれ!?破壊力、表彰式の時のスーツ超えてない!?)
心臓がドカンッ!と跳ね上がる。しかし、当の御八代さんは、まるで借り物の鎧を着せられたような顔で、首元を窮屈そうに弄っていた。
「……三本木に強要されて、このような非合理的な装甲を装備させられた。可動域が制限されて非常に不快だ」
「そ、そんなことないです!すごく似合ってます!かっこいいです!」
あたしが興奮気味に伝えると、御八代さんはピタッと動きを止め、眉間を限界まで寄せてあたしをジッと見つめてきた。
「……」
「お、御八代さん?」
「……今日のあなたの装いは、いつもに比べて視覚的なノイズが少ない。……非常に、その……目に優しい、適切なインターフェースだ」
(目に優しいインターフェース……!?それってオジさんなりの『可愛い』ってこと!?)
「えへへ、ありがとうございます!それじゃあ、行きましょうか?」
あたしが嬉しくなって横に並んで歩き出すと、御八代さんは一つ咳払いをした。
「……勘違いしないでいただきたい。今日はあくまで、当該カフェ周辺のアクセスポイントにおけるパケットロスの実地調査だ。遊びではない」
「はいはい、分かってますよ。実地調査楽しみですね!」
頑なに理屈をこねるオジさんの隣を歩きながら、あたしのテンションはすでに最高潮に達していた。




