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第69話 休みの日を作ったら、七人とも何をすればいいか分かりませんでした

 芋を掘った翌朝。


 俺は、七人の様子を見てから今日の予定を決めることにした。


 昨日は朝から畑へ出て、土を掘り返し、芋を運び、選り分け、保存する分まで片づけた。子供たちなりに加減していたとはいえ、一日中体を使っている。


 だから朝飯の途中で聞いた。


「今日、どこか痛い奴いるか?」


 七人の手が止まった。


 ラグナが自分の腕を曲げ伸ばしする。


「痛くない!」


「フェルナも!」


 フェルナは椅子に座ったまま両腕を振った。


「元気!」


「食卓で暴れるな」


「はい!」


 セレスは肩を回したあと、少し考える。


「痛くはないけど、腕が重いかも」


「私も少し」


 ミレアも頷いた。


 リシェルは手のひらを見る。


「指がちょっと疲れてる」


 昨日ずっと芋を分け、数え、記録までしていたからだろう。


 ノエルは。


「眠い」


「それは昨日の芋掘りと関係あるのか?」


「昨日、寝る前に卵見た」


「何時まで見てた?」


「少し」


「少しって?」


「……ちょっと長い少し」


「今日は早く寝ろ」


「うん」


 最後にユラを見る。


「ユラは?」


「げんき」


「本当か?」


「うん」


 そう言いながら。


 大きな欠伸をした。


「説得力ないな」


「げんきに、あくびした」


「そんなものあるか」


 朝から笑い声が上がった。


     ◇


 今日は。


 急いでやらなければならない仕事がほとんどなかった。


 鶏へ餌と水をやる。


 温めている卵を邪魔しない。


 畑を少し見る。


 薪を使った分だけ補充する。


 飯を作る。


 それくらいだ。


「じゃあ今日は、必要なことだけやったら休みにするか」


 俺が言うと。


 七人が静かになった。


「……休み?」


 セレスが聞き返す。


「ああ」


「何するの?」


「休む」


「だから、何するの?」


 同じ質問が返ってきた。


「好きなことすればいいよ」


 七人の顔を見る。


 誰も納得していない。


「仕事しない?」


 ラグナが聞く。


「急ぎじゃなければな」


「薪は?」


「今日の分はある」


「畑は?」


「昨日かなりやった」


「物置」


「片づけなくていい」


「道具」


「壊れてない」


 ラグナが困った顔をする。


「……何する?」


「俺に聞くなよ」


 どうやら。


 本当に分からないらしい。


     ◇


 朝の仕事だけは。


 いつも通り分担した。


 鶏へ餌をやり。


 水を替え。


 物置の奥にいる一羽も、遠くから様子を見る。


 まだ卵を温めていた。


 リシェルが記録板に、また一本線を足す。


「今日も変わらない」


「変わらなくていい日もあるだろ」


「うん」


 畑では。


 昨日掘った跡に問題がないかだけ確認した。


 保存した芋も見る。


 傷のあるものは今日の飯へ回せばいい。


 薪も足りている。


「終わり」


 俺が言った。


 フェルナが辺りを見る。


「全部?」


「今日必要なのはな」


「次は?」


「休み」


「……ほんとに?」


「何で疑うんだ」


「だって、まだ明るい」


「休みは夜だけするものじゃないぞ」


「でも何かある!」


「探せば仕事なんていくらでもあるよ」


 家で暮らしていれば。


 床を磨こうと思えば磨ける。


 薪をもっと割ることもできる。


 畑の端を整えることもできる。


 古い道具を全部確認することだってできる。


「でも、今日やらなくていいことを見つけてまで働かなくてもいいだろ」


 七人が。


 また困った顔をした。


     ◇


 最初に動いたのはセレスだった。


「じゃあ、洗濯物畳む」


「今朝の分はもう畳んだぞ」


「あ」


「昨日の服も片づいてる」


「じゃあ床を――」


「セレス」


 呼ぶと。


 止まる。


「別に働いたら怒るわけじゃない。でも、休みなのに仕事探してるなら、一回座ってみたらどうだ」


「……うん」


 セレスは。


 居間へ入る。


 座る。


 そして。


 両手を膝へ置いた。


 何もしない。


 しばらくして。


 俺を見る。


「これでいい?」


「俺に聞かれても困る」


「休めてる?」


「知らんよ」


「難しい」


「休むだけなのにな」


 セレスは真剣だった。


 少し面白い。


     ◇


 ラグナは。


 家の前に置いてある薪を見ていた。


 一本持つ。


 置く。


 また見る。


「割らないのか?」


「今日やらなくていい」


「分かってるじゃないか」


「でも割れる」


「できることと、やることは別だろ」


「うーん……」


 ラグナは薪から離れた。


 次に。


 少し大きな石を見る。


「持ち上げないぞ」


「まだ何も言ってない!」


「顔に出てる」


「持てるのに」


「知ってる」


 ついにラグナは。


 地面へ座った。


 腕を組む。


「力使わないと、何すればいい?」


「力を使わない遊びを探したら?」


「ある?」


「俺が決めたら、お前の休みじゃないだろ」


 ラグナは。


 ますます悩み始めた。


     ◇


 一方。


 フェルナだけは。


 休みと聞いて喜びそうなものだと思っていた。


 だが。


「走っていい?」


「好きにしろ」


「山の上まで?」


「勝手に遠くへ行くのは駄目」


「じゃあいつものところまで?」


「それならいい」


「走って帰ってきたら?」


「それで終わり」


「次は?」


「好きにしろ」


「また走る?」


「それも自分で決めろ」


 フェルナは。


 急に自由になったことで。


 逆に決められなくなったらしい。


「誰か一緒に走る?」


「今日はやだ」


 リシェルが即答した。


「ラグナ!」


「今、休み方考えてる!」


「走るの休みじゃない?」


「ラグナは違う!」


「じゃあ一人で行く!」


 フェルナは走り出した。


 十数えるほどで。


 戻ってきた。


「早いな」


「一人だとつまらない!」


「知らんがな」


     ◇


 リシェルは。


 最初から板を持っていた。


「それは何だ?」


「昨日の芋の記録、もう少し――」


「仕事じゃないのか?」


 聞くと。


 リシェルが止まる。


「……仕事?」


「俺には分からん」


「書きたいから書くなら?」


「好きでやるなら休みでもいいんじゃないか」


「じゃあ書く」


「本当に書きたいのか?」


「うん」


 即答だった。


「ならいい」


 リシェルは。


 家の前の日陰へ座り。


 昨日の記録板を膝へ載せた。


 掘った芋の数。


 傷の多かった場所。


 小さかった株。


 次に植える時に見たいこと。


 一つずつ書いていく。


「楽しい?」


 俺が聞くと。


「楽しい」


「じゃあ休みだな」


 俺には。


 仕事を増やしているようにしか見えない。


 だが。


 本人が楽しいなら。


 たぶん違うのだろう。


     ◇


 ミレアは。


 家の裏側にいた。


 何をしているのかと思って見に行くと。


 木の根元に座っている。


 何も持っていない。


「何してる?」


「座ってる」


「それだけ?」


「うん」


「楽しいか?」


「楽しいっていうか……好き」


 風が吹く。


 葉が揺れる。


 ミレアは。


 その音を聞いているらしい。


「休み上手だな」


「そう?」


「少なくともセレスよりは」


「セレス姉、まだ座ってる?」


「休めてるか俺に聞いてきた」


 ミレアが笑う。


「一緒に座る?」


「俺?」


「うん」


 急ぎの仕事はない。


「じゃあ少しだけ」


 隣へ座る。


 何も喋らない。


 ミレアも。


 別に話そうとしない。


 鳥の声と。


 風の音。


 遠くで。


 フェルナが何か叫んでいる。


 それも含めて。


 いつもの山だ。


「こういうのか」


 俺が言うと。


「何が?」


「ミレアの好きな休み」


「うん」


「覚えとく」


 ミレアは。


 少しだけ嬉しそうだった。


     ◇


 ノエルは。


 見つけるのが遅かった。


「どこ行った?」


 昼前。


 姿が見えないことに気づいて探すと。


 物置の入口近くに座っていた。


 例の鶏からは十分離れている。


 板の外側。


「ずっとここにいたのか?」


「うん」


「卵見てた?」


「鶏見てた」


「変わった?」


「一回出た」


「水?」


「飲んだ。餌も少し食べた」


「それで?」


「戻った」


 楽しそうなのかどうか。


 表情だけでは分かりにくい。


「休みなのに、ずっと見てて疲れない?」


「疲れない」


「暇じゃない?」


「いろいろする」


「鶏が?」


「うん」


「何を?」


「羽動かす。首動かす。外見る。眠る」


「それを見てるのか」


「うん」


「好きなんだな」


 ノエルは。


 しばらく鶏を見てから。


「好き」


 と答えた。


 これも。


 立派な休みらしい。


     ◇


 最後は。


 ユラだった。


 どこかへ行くわけでもなく。


 仕事を探すでもなく。


 朝の用事が終わった時から。


 ずっと俺についてきている。


 ミレアのところへ行けば。


 少し離れて座り。


 ノエルのところへ行けば。


 一緒に鶏を見る。


 家へ戻れば。


 後ろから入ってくる。


「ユラ」


「なに?」


「お前の休みは何するんだ?」


 聞くと。


 首を傾げた。


「これ」


「これって?」


「おとうさんといる」


「朝からずっとそうだな」


「うん」


「それでいいのか?」


「いい」


 迷いがない。


「何か遊ばなくて?」


「あとであそぶ」


「何して?」


「まだきめてない」


「そうか」


 ユラは。


 休み方を分かっていないのではなく。


 最初から決まっていたのかもしれない。


     ◇


 昼飯の時間。


 七人が集まった。


「休めたか?」


 俺が聞くと。


 セレスが。


 難しい顔をした。


「たぶん」


「何した?」


「最初座ってた」


「知ってる」


「そのあと、みんな見てた」


「みんな?」


「うん」


 セレスは。


 妹たちのところを順番に回ったらしい。


「手伝った?」


「何も手伝ってない」


「休んでる奴は手伝うことないからな」


「でも、見てるの面白かった」


 少し笑う。


「ラグナがずっと石の前で悩んでた」


「見るな!」


「フェルナが走って戻って、また走って戻ってた」


「暇だった!」


「ノエルは全然動かないし、リシェルは休みなのにずっと字を書いてた」


 リシェルが顔を上げる。


「好きで書いた」


「うん。だから面白かった」


「それでセレスは?」


 俺が聞く。


 少し考えて。


「みんなが何してるか見るのが好きかも」


「それ、普段とあまり変わらないな」


「そう?」


「妹たちばっかり見てるだろ」


「……ほんとだ」


 本人は。


 今初めて気づいたらしい。


     ◇


「ラグナは?」


 聞くと。


「石持った」


「結局持ったのか」


「一回だけ!」


「楽しかった?」


「楽しかった!」


「じゃあいいんじゃないか」


「でも仕事じゃない?」


「その石、何かに使ったのか?」


「戻した」


「ならただ持ち上げただけだな」


「休み?」


「俺には分からん」


 ラグナは考える。


「楽しかったから休み!」


「もうそれでいいよ」


「あと寝た!」


「それは分かりやすいな」


「石持って、寝た!」


「いい休日だな」


「うん!」


 かなり満足している。


     ◇


 フェルナは。


「走った!」


「知ってる」


「一人でつまらなかった!」


「それも聞いた」


「だから虫探した!」


「何で?」


「いたから!」


「理由になってない」


「大きいのいた!」


「捕まえた?」


「逃げた!」


「じゃあ何してたんだ」


「追いかけた!」


 結局。


 いつも通りだった。


「楽しかった?」


「楽しかった!」


「なら休めたんじゃないか」


「休みって走っていいんだね!」


「休むって必ず寝ることじゃないからな」


「じゃあ毎日休みでもいい!」


「それは駄目」


「なんで!?」


「飯がなくなる」


「仕事する!」


 切り替えが早い。


     ◇


 昼食後。


 七人は。


 それぞれ朝より自然に散っていった。


 セレスは。


 ミレアのところで一緒に座った。


 ラグナは。


 今度は石を持ち上げず。


 地面へ寝転がって雲を見ている。


 フェルナは。


 一人ではなくユラを誘った。


「走る?」


「はしらない」


「じゃあ歩く?」


「それならする」


 二人で。


 家の周りを歩き始めた。


 フェルナが歩く。


 珍しい。


 すぐ走り出すかと思ったが。


 ユラの歩幅に合わせている。


 リシェルは。


 記録を書くのをやめて。


 昔書いた板を読み始めた。


 時々笑っている。


「何が面白い?」


「昔の字」


「下手?」


「今より」


「今もそんなに上手くないぞ」


「前より上手い!」


「そうだな」


 怒られた。


     ◇


 俺も。


 やることがなくなった。


 本当にないわけではない。


 探せばある。


 だから。


 探さないことにした。


 家の前へ椅子を出す。


 座る。


 温かい茶を一杯。


 前に七人から。


 俺は温かい茶を飲んだ時に少し楽そうな顔をすると言われた。


 自分では分からない。


 ただ。


 確かに嫌いではない。


 しばらくすると。


 ノエルがやってきた。


「鶏は?」


「座ってる」


「見なくていいのか?」


「ずっと見なくていい」


「そうか」


 ノエルは。


 俺の椅子の近くへ座った。


 何も言わない。


 少しして。


 ミレアも来た。


 セレスも。


「何で増えるんだ」


「ここも静かだから」


 ミレアが言う。


「三人増えた時点で、さっきより静かじゃないぞ」


「まだ静か」


 確かに。


 フェルナはいない。


     ◇


 しかし。


 それも長くは続かなかった。


「お父さーん!」


「ほら来た」


 フェルナが戻ってくる。


 ユラと手を繋いでいる。


「何してるの?」


「休んでる」


「フェルナも!」


「好きにしろ」


 フェルナは。


 俺の椅子の横へ座ろうとした。


 もうノエルがいる。


 反対側にはミレア。


「場所ない!」


「地面いっぱいあるだろ」


「お父さんの隣!」


「今日はノエルとミレアが先だな」


「ずるい!」


「また始まった」


 セレスが笑う。


「じゃあフェルナここ」


 自分の横を叩く。


「お父さんから遠い!」


「一人分だけだよ」


「じゃあここ!」


 俺の椅子の後ろへ回った。


「何する気だ」


「ここなら近い!」


「後ろに座って何するんだ?」


「休む!」


「好きにしろ」


 すぐ。


 ラグナも来た。


「みんないる!」


「ラグナも座る?」


「座る!」


 リシェルまで。


「何で全員集まってるの?」


「知らん」


「休みだから!」


 フェルナが答えた。


「それ理由?」


「理由!」


     ◇


 結局。


 家の前。


 俺の椅子を中心に。


 七人が集まった。


 俺は一人用の椅子。


 七人は。


 地面や。


 丸太や。


 敷いた布の上。


 全員が同じことをしているわけではない。


 リシェルは板を読んでいる。


 ノエルは空を飛ぶ鳥を見ている。


 ミレアは目を閉じている。


 セレスは妹たちを眺め。


 ラグナは仰向け。


 フェルナは草を一本抜いて、指で回している。


 ユラは。


 俺の脚へもたれている。


「お父さん」


「何だ?」


「だっこ」


「今は座ってるだろ」


「だっこで、やすむ」


「そんな休み方あるか?」


「ある」


「誰が決めた?」


「ユラ」


 自分で決めていい日だった。


 仕方ない。


「来い」


 抱き上げる。


 ユラは。


 俺の膝の上へ収まり。


 満足そうに息を吐いた。


「休めてるか?」


「うん」


「ならいい」


     ◇


 そのまま。


 しばらく時間が過ぎた。


 誰も。


 次に何をするか聞かなかった。


 仕事は?


 何を覚える?


 どこへ行く?


 誰が何をする?


 そんなことを。


 今日は考えなくていい。


 途中で。


 ラグナが寝た。


 口を少し開けている。


「ラグナ寝た」


 フェルナが囁く。


「起こすなよ」


「顔に草置いていい?」


「駄目」


「一本だけ」


「駄目」


「何で!?」


「起こすなって言った直後だろ」


 フェルナは。


 残念そうに草を地面へ戻した。


 少しして。


 ユラも俺の膝で眠った。


 ノエルも。


 鳥を見るのをやめ。


 目を閉じている。


「みんな寝るね」


 セレスが小さな声で言う。


「昨日疲れたんだろ」


「休みにしてよかった?」


「たぶんな」


「お父さんも?」


「何が?」


「休めてる?」


 朝。


 俺に同じことを聞いてきた娘だ。


「まあまあ」


「まあまあ?」


「膝が重い」


 ユラを見る。


 セレスは。


 声を抑えて笑った。


     ◇


 夕方。


 結局。


 昼から大したことは何もしなかった。


 飯は作った。


 鶏も見た。


 火も使った。


 生活に必要なことはした。


 それ以外は。


 ほとんど。


 誰も何もしなかった。


 なのに。


「今日、早い!」


 夕飯を食べながらフェルナが言った。


「何が?」


「一日!」


「いつもと同じ長さだよ」


「短かった!」


「楽しかったからじゃない?」


 セレスが言う。


「休み、楽しい!」


「朝は何すればいいか分からなかったくせに」


「今は分かる!」


「何する?」


「好きなこと!」


「ずいぶん広い答えだな」


「お父さんが言った!」


「言ったけど」


 ラグナも頷く。


「ラグナ、次はもっと大きい石持つ!」


「休みの日に怪我するなよ」


「必要なだけ!」


「石を持つのに必要も何もないだろ」


「じゃあ持てるだけ!」


「悪化したな」


 笑い声が重なる。


     ◇


「次の休み、いつ?」


 リシェルが聞いた。


「決めてない」


「仕事ない日?」


「仕事が少ない日でもいい」


「何日おき?」


「それも決めてないな」


「決めた方がいい?」


「決めてもいいし、疲れた時に休んでもいい」


「疲れたら休み?」


 セレスが聞く。


「ああ」


「仕事残ってても?」


「今日絶対やらないと困ることだけやって、後へ回せるなら回せばいい」


 七人が。


 思った以上に真剣に聞いている。


「病気じゃなくても?」


「病気になるまで休んじゃ駄目な方がおかしいだろ」


「元気でも?」


「元気な時に休んでもいい」


 フェルナが。


 大きく頷く。


「じゃあフェルナ、明日も!」


「明日は仕事ある」


「元気だけど!?」


「元気なら手伝ってくれ」


「はーい!」


 まったく抵抗しなかった。


     ◇


 夜。


 七人が寝床へ入る。


 今日は。


 いつもより寝つきが早かった。


 昼寝までしたラグナだけ。


 少し元気が余っている。


「お父さん」


「何だ?」


「明日、薪する?」


「少しな」


「ラグナやる」


「頼む」


「いっぱい?」


「必要なだけ」


「分かってる!」


 暗闇でも。


 たぶん胸を張っている。


 しばらくして。


「お父さん」


 今度はセレス。


「何だ?」


「休みの日、私何もしてないと思ったけど」


「ああ」


「みんな見てた」


「そうだな」


「それでも休み?」


「本人が休めたならいいんじゃないか」


「そっか」


「休みの日まで、正しい休み方探さなくていいよ」


 返事は。


 少し遅れた。


「うん」


 それで終わった。


     ◇


 この家では。


 腹が減ったら飯を作る。


 寒くなる前に薪を集める。


 畑へ植えたら世話をする。


 壊れたものは。


 直せるなら直す。


 必要な仕事は。


 誰かがやらなければならない。


 だから。


 七人は。


 いつの間にか。


 何かをしていることに慣れていた。


 俺も。


 同じだったのかもしれない。


 仕事が終わったら。


 次の仕事を探す。


 明日の準備をする。


 もっと先のことを考える。


 それが悪いわけではない。


 ただ。


 何もしない日があっても。


 家はなくならない。


 畑も逃げない。


 薪も。


 一日で全部なくならない。


 そして。


 休み方は。


 七人とも違っていていい。


 静かに座る奴。


 字を書く奴。


 鳥を見る奴。


 走る奴。


 石を持ち上げる奴。


 妹たちを見る奴。


 お父さんの膝で寝る奴。


 どれが正しいかなんて。


 決める必要もないのだろう。


 明日になれば。


 また仕事をする。


 だから今日は。


 何もしなかったことを。


 わざわざ何かに変えなくてもいい。


 そんな一日も。


 八人で暮らした日の一つとして。


 ちゃんと残っていくのだから。

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