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第64話 お父さんの好きなものを、七人は知りませんでした

 朝飯を食べている途中で、フェルナが自分の器から焼いた茸を一つつまみ上げた。


「フェルナ、これ好き」


「食べながら持ち上げるな。落とすぞ」


「落とさない!」


 言った直後、指の間から滑りかけた茸を慌てて口へ放り込む。


「危なかった!」


「だから言っただろ」


 俺が呆れている横で、ラグナも自分の器を覗き込んだ。


「ラグナは肉が好き!」


「知ってる」


「いっぱい好き!」


「それも知ってる」


「セレス姉は?」


 突然話を振られたセレスは、匙を置いて少し考えた。


「果物かな。でも甘すぎるのより、少し酸っぱい方が好き」


「ノエルは木苺」


「よく見てるな」


 ノエルが頷く。


「赤いやつ」


「ミレアは?」


「温かい汁物」


「リシェルは?」


「食べ物じゃなくてもいい?」


「いい!」


「新しいことが分かった時」


「食べられない!」


「食べ物じゃなくてもいいって言ったでしょ」


 いつの間にか。


 朝飯は七人の好きなものを言い合う時間になっていた。


 ユラも当然参加した。


「ユラ、おとうさん」


「それは食い物じゃないぞ」


「たべない」


「それならいい」


 何がいいのか自分でも分からなかったが、とりあえず食べられる予定はないらしい。


 そこで。


 セレスが俺を見る。


「お父さんは?」


「何が?」


「好きなもの」


「俺?」


「うん」


 答えようとして。


 少し考えた。


「食えるものなら、大体何でも食うぞ」


 七人が黙った。


 妙な顔をしている。


「何だ?」


「それ、好きなものじゃない」


 リシェルに言われた。


「食えるんだから嫌いじゃないだろ」


「嫌いじゃないものと、好きなものは違うよ」


「……そうか?」


「違う!」


 フェルナまで強く頷く。


「好きなの!」


「だから、大体何でも――」


「一番!」


「一番?」


「一番好きな食べ物!」


 また考える。


 山で採れるもの。


 畑で育てているもの。


 保存してあるもの。


 肉。


 魚。


 茸。


 芋。


 野菜。


 果物。


 どれも普通に食べる。


「特にないな」


「ない!?」


 今度はラグナが驚いた。


「好きな食べ物ないの!?」


「嫌いなものもそんなにない」


「お父さん、かわいそう……」


「何でだよ」


 本気で同情された。


     ◇


 朝飯が終わっても。


 どういうわけか、話は終わらなかった。


「色は?」


 リシェルが聞いてくる。


「色?」


「好きな色」


「別に何色でも」


「またない」


「じゃあ、季節!」


 フェルナが続ける。


「春は畑の準備が多い。夏は暑い。秋は保存食作りが忙しい。冬は雪が積もる」


「嫌なところじゃなくて好きなところ!」


「全部それぞれあるよ」


「一番は?」


「決めたことないな」


 七人の表情が、ますます深刻になっていく。


 俺としては。


 何が問題なのか、まだよく分からない。


 するとミレアが静かに聞いた。


「好きな場所は?」


「家」


「それは分かる」


「山」


「それも知ってる」


「じゃあ何ならいいんだ」


「もっと、お父さんだけの好きなもの」


 ミレアの言葉に。


 俺は少しだけ詰まった。


 お父さんだけの好きなもの。


 随分変な言い方だ。


 だが、七人が何を聞こうとしているのかは少し分かった。


「お前ら、何で急にそんなこと知りたくなったんだ?」


 俺が聞くと。


 セレスが姉妹の顔を順番に見てから答えた。


「私たちの好きなもの、お父さん知ってるから」


「全部じゃないぞ」


「でも、いっぱい知ってる」


「そりゃ一緒に暮らしてるからな」


「私たち、お父さんのことあんまり知らない」


「そうか?」


 毎日一緒にいる。


 何時頃起きるか。


 どこで仕事をするか。


 何を作るか。


 どういう時に怒るか。


 どういう時に笑うか。


 七人は大体知っているはずだ。


「お父さんが何するかは知ってる」


 リシェルが言った。


「薪割る。畑見る。ご飯作る。道具直す。山歩く。私たちに教える」


「ああ」


「でも、お父さんが何好きか知らない」


 言われてみれば。


 そうかもしれない。


 俺自身が。


 あまり考えてこなかった。


     ◇


「じゃあ今日、お父さんの好きなもの探す!」


 フェルナが宣言した。


「勝手に探せるものなのか?」


「見れば分かる!」


「本当か?」


「分かる!」


 自信だけはある。


「じゃあお父さん、いつも通りして」


「それは別にいいけど」


「教えちゃ駄目!」


「お前らが聞いてきたんだろ」


「今日は見る!」


 朝から面倒な遊びが始まった。


 もっとも。


 害があるわけではないので放っておいた。


     ◇


 最初に俺の後をついてきたのはフェルナとノエルだった。


 薪置き場から薪を運ぶ。


 二人も少し離れてついてくる。


 俺が太さを見て一本選ぶと、フェルナがノエルへ囁いた。


「太い薪が好き」


「違うと思う」


「何で?」


「火を長くしたいから選んだ」


「じゃあ長い火が好き?」


「それは仕事」


「難しい……」


 全部聞こえている。


 口を挟むなと言われたので黙っておいた。


 次に畑へ行く。


 土の湿り具合を見て、葉を確認し、少しだけ草を抜く。


「お父さん、畑好き?」


 フェルナが我慢できずに聞いた。


「教えちゃ駄目なんじゃなかったのか?」


「あ」


 自分で決めたルールを忘れていたらしい。


 ノエルが畑の端へしゃがみ込む。


 俺が草を抜いた場所をしばらく見たあと、首を傾げた。


「草抜くの、好きそうじゃなかった」


「顔で分かる!?」


「普通だった」


「じゃあ違う!」


 何を探しているんだ。


     ◇


 家へ戻ると。


 今度はリシェルとミレアが待っていた。


 俺が道具を研ぎ始める。


 二人が向かい側へ座る。


「……何だ?」


「見てるだけ」


「やりにくいな」


「ごめん」


 少し離れた。


 それでも見るらしい。


 俺は刃の状態を確かめ、砥石へ当てる。


 何度か研いで。


 光へかざす。


「今」


 リシェルが小声で言った。


「何だ?」


「ちょっと嬉しそうだった」


「そうか?」


「うん」


 ミレアも頷く。


「きれいになったから?」


「まあ、ちゃんと研げたら気分はいいな」


「好き?」


「嫌いじゃない」


「またそれ」


 リシェルが不満そうだ。


「じゃあ好きでいいよ」


「本当に?」


「道具がちゃんと使える状態になるのは好きだ」


 リシェルは少し考える。


「道具を研ぐのが好き?」


「研ぐこと自体というより、直ったり使いやすくなったりするのが好きなんだろうな」


 自分で答えて。


 少し妙な気分になった。


 そんなこと。


 わざわざ言葉にしたことがなかった。


「一個見つけた」


 ミレアが嬉しそうに言った。


「これでいいのか?」


「お父さんが好きって言ったから」


 どうやらいいらしい。


     ◇


 昼前。


 ラグナが俺のところへ来た。


「お父さん!」


「どうした?」


「力使うの好き?」


「急だな」


「ラグナは好き!」


「知ってる」


「お父さんは?」


 考える。


「必要な時に使うのは嫌いじゃない」


「好き?」


「力仕事が終わった時は気持ちいいな」


「じゃあ好き!」


「全部好きにするな」


 ラグナは俺の言葉をほとんど聞かず、嬉しそうに走っていった。


「ラグナと同じあった!」


 遠くで報告している。


 同じだったらしい。


 何となく。


 少し嬉しかった。


     ◇


 昼飯を作る頃になると。


 今度はセレスが手伝いに来た。


 野菜を洗いながら、こちらをちらちら見ている。


「お前も探してるのか?」


「うん」


「普通に聞けばいいのに」


「朝、聞いたら分からないって言ったでしょ」


「分からないとは言ってない。特にないって言ったんだ」


「同じじゃない?」


「少し違う」


 鍋を火へかける。


 昨夜の残りも使いながら、簡単な汁物を作る。


 味を見る。


 塩を少しだけ足す。


 もう一度味を見る。


「今の好き?」


「何が?」


「この味」


「これくらいがちょうどいいな」


「ちょっと飲んでいい?」


「熱いぞ」


 小皿へ少し取り、冷ましてから渡す。


 セレスが口にする。


「いつもより少し薄い?」


「昼はこれくらいでいい」


「夜は?」


「もう少し濃くする時もある」


「じゃあ、お父さんは薄いのが好き?」


「その時による」


「難しい」


「何で一つに決めたがるんだ」


「好きなものだから」


「好きなものでも、その日の気分で変わるだろ」


 セレスが止まった。


「変わっていいの?」


「そりゃいいだろ」


「昨日好きだったもの、今日は食べたくなくても?」


「毎日同じもの食いたいか?」


「……嫌かも」


「そういうことだ」


 セレスはしばらく考えて。


 少し笑った。


「じゃあ好きなものって、一個じゃなくていいんだ」


「最初から誰も一個って決めてないだろ」


「フェルナが一番って言ったから」


「フェルナの言うこと全部決まりにするな」


 本人が聞いたら怒りそうだった。


     ◇


 昼飯の席で。


 七人の調査結果が発表された。


「お父さんは、道具が直るのが好き!」


 リシェル。


「力仕事終わった時が好き!」


 ラグナ。


「畑は普通!」


 フェルナ。


「それは発表しなくていいだろ」


「大事!」


「お父さんは、鳥の声聞いてた」


 ノエル。


「聞こえてただけじゃないのか?」


「途中で止まった」


「何を?」


「歩くの」


 言われて。


 思い出す。


 畑から戻る途中。


 少し珍しい鳥の声が聞こえたので、確かに足を止めた。


「じゃあ、あの鳥の声も好きかもしれないな」


「見つけた」


 ノエルが満足そうに食事へ戻る。


 ミレアも言う。


「温かいお茶飲んだ時、ちょっと息吐く」


「それは熱いからじゃないか?」


「顔、楽そう」


「……そうか?」


「うん」


 自分のことなのに。


 他人から言われないと気づかないものが結構ある。


「セレスは?」


 フェルナが聞く。


「私は、お父さんの好きな味を探そうとしたけど、失敗した」


「なかった?」


「違う。その時で変わっていいんだって」


 フェルナの匙が止まる。


「好きなのに?」


「好きでも」


「じゃあフェルナ、明日茸嫌いになってもいい?」


「別にいいぞ」


 俺が答える。


「明後日また好きになっても?」


「いいよ」


「すごい!」


「何が?」


「好き、自由!」


 随分大げさな話になった。


     ◇


 そして。


 一番最後まで何も言わなかったのがユラだった。


「ユラは見つけなかったの?」


 セレスが聞く。


「みつけた」


「何?」


 ユラは俺を見る。


「おとうさん、ユラすき」


「それは最初から知ってるだろ」


「うん」


「調べなくても分かるやつだぞ」


「でも、すき」


「まあ、好きだけど」


 すると。


 フェルナが身を乗り出した。


「一番!?」


「何が?」


「ユラが一番好き!?」


 一瞬で。


 食卓の空気が変わった。


 七人全員が俺を見ている。


 ユラまで。


 さっきまで何も考えていなかった顔で、急に真剣になった。


「……何でそうなる」


「好きなものの話だから!」


「娘に一番も二番もつけないよ」


「みんな一番?」


 ラグナが聞く。


「それも変だろ」


「じゃあ何番?」


「番号をつけない」


「どうして?」


 朝から。


 どうしてこんな難しい質問ばかりされるのだろう。


 俺は少し考えた。


「例えば、ラグナとリシェルを比べて、どっちが一番速く走れるかなら分かるだろ」


「ラグナ!」


「たぶんそうだな」


「たぶんじゃない!」


「じゃあ、文字をたくさん読めるのは?」


「リシェル」


「そういうのは比べられる。でも、娘としてどっちが上かって聞かれても、何を比べればいいんだ」


 ラグナがリシェルを見る。


 リシェルもラグナを見る。


「速さ?」


「娘の順位に走る速さはいらないだろ」


「文字?」


「それもいらない」


「強さ!」


「もっといらない」


 ラグナが驚いた。


「強さ、いらない!?」


「娘として好きかどうかに必要ないって話だ」


「ああ!」


 分かったらしい。


 たぶん。


「セレスはセレスだし、ラグナはラグナ。フェルナも、リシェルも、ミレアも、ノエルも、ユラもそうだ。違う奴を無理に同じところへ並べて、一番決めても仕方ないだろ」


「じゃあ」


 ユラが聞く。


「みんな、すき?」


「ああ」


「おんなじ?」


 そこで。


 俺は少し考えた。


「同じじゃないな」


 七人の目が丸くなる。


「違うの!?」


 セレスまで驚いた。


「だってお前ら、全員違うだろ」


「でも、みんな娘」


「それは同じだな」


「じゃあ好きも同じじゃないの?」


「好きな理由まで全部同じだったら、お前らの違いを見てないことになるだろ」


 セレスなら。


 妹たちを守ろうとするところも。


 時々、自分のことを後回しにしすぎるところも知っている。


 ラグナなら。


 何にでも全力でぶつかって。


 褒めれば顔全部で喜ぶ。


 フェルナは。


 じっとしていられないくせに、昔よりずっと立ち止まって考えられるようになった。


 リシェルは。


 分からないことをそのままにせず。


 最近は俺より先に答えを探そうとする。


 ミレアは。


 静かに見えて、七人のことをよく見ている。


 ノエルは。


 俺たちが見落とすものを、一人だけ見つけることがある。


 ユラは。


 まだ一番幼くて。


 できないことも多いが。


 できないなりに、自分でやろうとすることが増えた。


「違うところを好きなんだから、全部同じってわけでもない。でも誰か一人だけ特別に上ってことでもない」


 話し終えると。


 七人がしばらく黙っていた。


 やがて。


 フェルナが言う。


「難しい!」


「だから一番を聞くな」


「でも分かった!」


「本当か?」


「みんな違うから、みんな好き!」


「……まあ、それでいい」


 ずいぶん簡単になった。


     ◇


 午後からは。


 俺の好きなもの探しは終わったと思っていた。


 だが。


 終わっていなかった。


「お父さん!」


 フェルナが木苺を持ってくる。


「これ好き!?」


「好きだけど」


「食べて!」


 一個もらう。


「どう!?」


「うまいよ」


「やった!」


 その少し後。


 ラグナがよく乾いた薪を持ってくる。


「これ好き!?」


「薪としてはいいな」


「やった!」


 リシェルが。


「この字、きれいに書けた。好き?」


「上手くなったな」


「好き?」


「好きだよ」


 ミレアが温かい茶を持ってくる。


「これは?」


「好き」


 ノエルが外から呼ぶ。


「鳥鳴いてる」


「今行かなきゃ駄目か?」


「好きなんでしょ?」


「好きなもの全部、毎回見に行くわけじゃないぞ」


 七人にとって。


 新しく知ったことは、すぐ使いたいものらしい。


     ◇


 夕方。


 俺は家の前で薪をまとめていた。


 そこへ。


 ユラが歩いてくる。


 何も持っていない。


「どうした?」


「おとうさん」


「ん?」


「ユラ、おとうさんすき」


「知ってるよ」


「おとうさんも?」


「ああ」


 それで終わるかと思ったが。


 ユラはもう一つ聞いた。


「きょうも?」


「今日も」


「あしたは?」


「たぶん明日も」


「たぶん?」


 不安そうな顔をする。


「お前が明日、俺の飯を全部食っても、たぶん好きだ」


「ぜんぶたべない」


「じゃあ大丈夫だ」


「ずっと?」


 俺は薪を置く。


 しゃがんで。


 ユラと目の高さを合わせた。


「好きってのは、毎日確かめないと消えるものじゃないよ」


 ユラは首を傾げる。


「なくならない?」


「喧嘩することもあるし、怒ることもある。でも、それだけで家族じゃなくなるわけじゃないだろ」


「うん」


「それと同じ」


 ユラは少し考えて。


 俺へ両腕を伸ばした。


「だっこ」


「それは今の話と関係あるか?」


「ある」


「どこが?」


「ユラ、おとうさんすき」


「便利だな、その理由」


 結局。


 抱き上げる。


 ユラは満足そうに俺の肩へ頬をつけた。


     ◇


 夜。


 寝る前になって。


 リシェルがまた聞いてきた。


「結局、お父さんの一番好きなもの、見つからなかったね」


「まだ一番にこだわってるのか」


「一番じゃなくてもいい。好きなもの」


「今日いくつも見つけただろ」


「道具が直ること。仕事が終わった時。鳥の声。温かいお茶」


「十分じゃないか」


「他には?」


 俺は寝床を整えながら考えた。


 今日一日。


 七人に追いかけ回され。


 何を見るか。


 何を食べるか。


 何をしている時に顔が変わるか。


 そんなものをずっと観察された。


 面倒だった。


 正直。


 かなり面倒だった。


 だが。


 悪くもなかった。


「今日みたいなのも、嫌いじゃないな」


「今日?」


「お前らが、俺の好きなもの探してたこと」


「好き?」


「たぶんな」


 すると。


 リシェルが嬉しそうに笑った。


「じゃあ見つけた」


「何を?」


「お父さんは、私たちがお父さんのこと知ろうとするのも好き」


「そんなものまで好きなものに入れるのか?」


「入れる」


「じゃあ好きでいいよ」


 その返事を聞いて。


 近くでまだ起きていたセレスも笑った。


「私たち、お父さんのこと、もっと知っていい?」


「一緒に暮らしてるんだから勝手に知るだろ」


「聞いても?」


「答えられることなら」


「分からなかったら?」


「分からないって言う」


 それでいいらしい。


     ◇


 七人が眠ったあと。


 俺は一人で考えた。


 好きなもの。


 そんなものは。


 生きるために必要なことではない。


 飯は腹を満たせればいい。


 道具は使えればいい。


 家は雨風を防げればいい。


 一人で暮らしていた頃は。


 それで困らなかった。


 けれど。


 八人で暮らすようになって。


 誰が何を好きか。


 何を嫌がるか。


 何を食べた時に嬉しそうな顔をするか。


 どんな時に静かになるか。


 そんな、生きるのには別になくても困らないことを。


 俺は随分たくさん覚えた。


 そして今日。


 七人も。


 俺について同じことを知ろうとした。


 家族というのは。


 飯を八人分用意するだけではないらしい。


 必要だから知ること以外にも。


 別に知らなくても困らないのに。


 知りたいと思うことがある。


 俺は寝返りを打つ。


 暗い家には。


 七人分の寝息がある。


 これも。


 たぶん。


 俺の好きなものの一つなのだろう。


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