第54話 七人だけで作った夕飯は、少し焦げていました
服を直した翌日、朝からフェルナは自分で縫った片袖を何度も眺めていた。
昨日あれほど「かっこいい」と喜んでいたのだから、気に入っているのは分かる。しかし、鶏へ餌をやる間も、薪を運ぶ途中でも、何かにつけて袖を確認している。
「フェルナ、前見ろ」
「見てる!」
「袖見ながら歩いてただろ」
「こっちも見てた!」
「目は二つあっても別々の方向は見られないぞ」
そう言った直後、足元の小石につまずいた。
転ぶほどではなかったものの、慌てて両腕を広げて体勢を立て直したフェルナに、近くで薪を抱えていたラグナが声を上げて笑う。
「ほら!」
「転んでない!」
「今のは危なかったでしょ」
セレスにも注意され、フェルナは不満そうに頬を膨らませた。それでも袖を見るのはやめず、今度は汚れていないか確かめるように表面を払っている。
「昨日まで服なんて泥だらけにしてたのにな」
「これは違うの!」
「何が?」
「フェルナが縫った!」
どうやら自分で手を加えた途端、ただの服ではなくなったらしい。
それを聞いたミレアも、自分の裾へ足した布を見下ろした。
「私も、前より汚したくないかも」
「服は汚れるものだぞ」
「分かってる。でも自分でも直したから、ちょっとだけ大事になった」
なるほど。
今まで俺が作り、俺が直していた時とは、同じ服でも見え方が違うらしい。
自分の手を使った分だけ、自分のものになった。
そんなところなのだろう。
◇
昼前。
畑の様子を見終えて家へ戻ると、台所の前で七人が何か相談していた。
最近は珍しくない光景なので、そのまま水を飲もうとしたのだが、俺に気づいた瞬間、フェルナが両手を広げて進路を塞いだ。
「お父さん、入っちゃ駄目!」
「ここ、俺の家なんだけど」
「今は駄目!」
「何してる?」
「秘密!」
そう言いながら、後ろではラグナが鍋を持っているし、セレスは野菜を並べている。
全然秘密になっていない。
「夕飯でも作るのか?」
「なんで分かったの!?」
「隠す気がないからだよ」
フェルナの肩越しに台所を見ると、リシェルは何かを書いた板を手にしており、ノエルは保存していた野菜を一つずつ確認している。ミレアとユラまで布を腰に巻き、すっかり料理をする格好だった。
「どういう話になった?」
尋ねると、セレスが少し恥ずかしそうに答えた。
「昨日、自分たちで服を直したでしょ。それで、今までお父さんがやってたことを、もっと自分たちでもやってみようって話になって」
「料理なら手伝ってるだろ」
「手伝うんじゃなくて、今日は最初から最後まで七人で作りたいの」
「俺は?」
「休んでて」
「またか」
以前にも一度、七人が俺を休ませようとして家の仕事を全部引き受けたことがある。あの時と違うのは、今回は俺を休ませることが目的ではないらしい。
「今日は、お父さんを休ませたいんじゃないよ」
こちらの考えを読んだように、セレスが付け足した。
「自分たちだけでどこまでできるか、やってみたいの」
「分からないことがあったら?」
「聞く」
リシェルがすぐ答えた。
「前にお父さん言った。自分でできるのと、人に聞かないのは別」
「覚えてたか」
「うん。だから、お父さんは聞かれた時だけ教える」
「随分都合のいい役だな」
「駄目?」
「いや」
俺は七人の顔を見る。
誰も遊び半分という感じではない。
「やってみろ。ただし火と刃物は無茶するな。危ないと思ったら、できそうでも俺を呼べ」
「分かった!」
一番元気よく返事をしたフェルナを見て、少しだけ不安になった。
◇
夕飯まではまだ時間がある。
それでも七人は、ずいぶん早くから準備を始めた。
「何を作るかは決まってるのか?」
台所から少し離れた椅子へ座りながら聞くと、リシェルが板を見せた。
『やさいの にこみ』
『やいた にく』
『ぱん』
料理の名前と、その下には使うものまで書いてある。
「献立まで決めたのか」
「難しすぎないのにした」
「誰が決めた?」
「みんな」
ただ、その「みんな」で決めるまでが大変だったらしい。
「フェルナは肉いっぱいがよかった!」
「ラグナも」
「二人とも肉だけにしようとしたから駄目って言ったの」
セレスが呆れたように言うと、ラグナが反論した。
「野菜も食べるよ! 肉の横に!」
「それだと煮込みがなくなるでしょ」
「肉も煮込めばいい!」
「今度は焼いた肉がなくなる」
朝からそんなやり取りをしたのだろう。
最終的には、普段俺がよく作るものに落ち着いたらしい。
「最初から難しいものにしなかったのは正解だ」
そう言うと、フェルナがこちらを見る。
「次はすごいやつ作る!」
「今日成功してから言え」
「成功する!」
その自信がどこから来るのかは分からない。
◇
役割も七人で決めていた。
セレスとミレアが野菜を切り、リシェルが手順を確認する。ノエルとユラは材料を運び、ラグナは火の番。フェルナは――。
「フェルナ何する?」
「最初は水を量る」
「最初だけ?」
「そのあと空いてるところ全部!」
「一番危ない役だな」
「なんで!」
「思いつきで仕事を増やしそうだからだ」
「増やさない!」
言った直後。
「お父さん、木の実も入れたら美味しい?」
「種類による」
「入れる!」
「まだ何の木の実か言ってないだろ」
やはり危ない。
「勝手に材料増やすの禁止」
リシェルが板へ一行書き足した。
「なんでフェルナ見た!?」
「今増やそうとしたから」
「聞いただけ!」
「入れるって言った」
「…………」
反論できなくなったフェルナは、しぶしぶ水桶の方へ向かった。
◇
最初のうちは順調だった。
セレスは昨日覚えた針仕事と同じように、刃物も慎重に扱う。ミレアは切った野菜の大きさを揃えようと、一つずつ見比べていた。
「そこまで同じじゃなくても火は通るぞ」
思わず口を出すと、ミレアが顔を上げた。
「今、お父さんから言った」
「あ」
「聞いてないのに」
「……悪い。癖だ」
七人だけで作らせると言ったばかりなのに、早速口を挟んでしまった。
するとセレスが笑う。
「お父さんも、何もしないの苦手なんだね」
「前にも言っただろ。仕事するの嫌いじゃないんだよ」
「でも今日は見るだけ」
「分かったよ」
今度こそ黙る。
しかし。
黙って見ているというのは、意外と難しかった。
ノエルが野菜の皮を必要以上に厚く剥こうとしている。
ラグナが火を強くしようとしている。
フェルナが水を入れた器を、片手で持って走ろうとする。
「走るな!」
そこだけは我慢できなかった。
「まだ走ってない!」
「走る構えだった!」
「歩く!」
「そうしてくれ」
◇
しばらくすると、最初の問題が起きた。
「お父さん」
ラグナが呼んだ。
「どうした?」
「火、これでいい?」
鍋の下を見る。
少し強い。
「何を煮てる?」
「野菜」
「ずっとその火だと?」
「早くできる?」
「どう思う?」
すぐ答えず、逆に聞いてみる。
ラグナは炎と鍋を見比べた。以前のラグナなら「強い方が早い」と即答したかもしれないが、今は少し考える。
「下だけ先に熱くなる?」
「ああ」
「焦げる?」
「水が十分あるうちはすぐには焦げない。でも激しく煮立て続ける必要もない」
「じゃあ小さくする」
薪を一本減らし、空気の入り方も調整する。
「これ?」
「いいと思う」
「分かった」
ラグナは満足そうに頷き、また火へ向き直った。
何でも強くすればいいわけではない。
石を運んだ時も。
針を使った時も。
そして料理でも。
同じことを何度も経験しながら、自分のものにしている。
◇
一方。
フェルナは味見係という仕事を自分で見つけていた。
「お父さん!」
「何だ?」
「味見る!」
「俺に宣言する必要あるか?」
「何回まで?」
「回数で決めるな。必要な時だけだ」
「必要!」
「まだ味付けしてないぞ」
「野菜の味!」
「それは生の時にも分かる」
横からセレスが木匙を取り上げた。
「フェルナ、味見したいだけでしょ」
「違う! 大事な仕事!」
「じゃあ味付けしてからね」
「待つ!」
そう言いながら鍋の前で落ち着かなくなる。
ほんの少し前まで「待つ」こと自体が大仕事だったが、今日は鍋の蓋を何度も開けそうになりながらも、どうにか我慢していた。
やがてミレアが塩と乾燥させた香草を用意する。
「これくらい?」
俺ではなく、リシェルへ聞いた。
「前に書いた板」
「ああ」
リシェルが文字の棚から一枚持ってくる。
『なべ いっぱい しお これくらい』
横には、文字だけでは分かりにくいので、以前俺が実際の量を置いて描かせた小さな印もある。
「これより少し少なくして、味見してから増やす」
リシェルが言うと、フェルナが胸を張った。
「そこでフェルナ!」
「ようやく仕事来たね」
セレスが笑う。
◇
煮込みの方は、思った以上にうまくいった。
問題は肉だった。
「いい匂い!」
フェルナが声を上げた時には、俺も少し嫌な予感がしていた。
いい匂い。
その少し先にある。
焦げる匂い。
「ラグナ」
「火は強くない!」
「肉、誰が見てる?」
一瞬。
七人が止まった。
肉を焼く役を。
誰も決めていなかったらしい。
「フェルナ!」
「なんでフェルナ!?」
「空いてるところ全部やるって言った!」
「セレス姉も見てた!」
「私は野菜切ってた!」
慌ててミレアが肉をひっくり返す。
片面。
かなり黒い。
「…………」
七人が。
静かになった。
フェルナが恐る恐る俺を見る。
「これ、食べられる?」
「全部炭になったわけじゃない」
「失敗?」
その一言で。
空気が少し落ちる。
俺は立ち上がり、焼けた肉を確認した。表面の一部は焦げているが、削れば問題ない程度だ。
「食えるぞ」
「でも黒い」
ミレアが申し訳なさそうに言う。
「焦げたところを少し落とせばいい」
「成功じゃない?」
セレスが聞く。
「成功か失敗か、どっちかに決めないと駄目か?」
「…………」
「煮込みはうまくできた。肉は少し焦げた。でも食べられる。次は誰が見るか決めれば、今日よりうまくできるだろ」
リシェルが焦げた肉をじっと見つめる。
「じゃあ」
「ああ?」
「今日は『少し焦げた』」
「それでいいんじゃないか」
「失敗じゃなくて?」
「失敗したところはある。でも夕飯全部が失敗になったわけじゃない」
それを聞いたフェルナが、急に元気を取り戻した。
「じゃあ食べる!」
「立ち直り早いな」
「だって食べられる!」
このあたりは、実にフェルナらしい。
◇
その後。
焦げた部分を削り、まだ焼いていなかった肉は今度こそ担当を決めた。
「誰やる?」
セレスが聞くと、フェルナが手を上げる。
「フェルナ!」
「さっき忘れたのに?」
「だから今度は忘れない!」
セレスは少し迷ったが、俺を見ることなく頷いた。
「じゃあお願い。でも一人だけに任せないで、ミレアも一緒に見て」
「うん」
「分かった」
二人が焼き台の前へ並ぶ。
フェルナはさっき焦がした肉と、新しい肉を何度も見比べていた。
「まだ?」
「もう少し」
ミレアが答える。
「さっきはもっと黒くなるまで置いた」
「じゃあ、その前にひっくり返す」
「うん」
慎重に。
今度は。
ちゃんと焼けた。
「できた!」
フェルナが嬉しそうに振り返る。
「お父さん見て!」
「見えてるよ」
「焦げてない!」
「ああ」
「さっきより上手!」
「一回で覚えたな」
「未来のフェルナじゃなくても上手になった!」
「数刻先も一応未来だけどな」
「じゃあ未来!」
最近、何でも未来で片づけるようになっている。
◇
日が傾く頃。
ようやく夕飯が完成した。
少し煮崩れた野菜の煮込み。
焼き加減にばらつきのある肉。
切っただけのパン。
見た目だけなら。
俺が普段作るものより。
かなり不揃いだ。
「お父さん」
セレスが席を指す。
「座って」
「もう座ってる」
「じゃあ食べて」
七人が。
妙に緊張した顔で俺を見る。
「俺から?」
「うん」
「なんで」
「ちゃんと食べられるか」
「自分たちで味見しただろ」
「でも」
どうやら。
俺が食べるところを見たいらしい。
「いただきます」
まず煮込み。
少し薄い。
けれど、野菜にはちゃんと火が通っている。香草も入れすぎていない。
次に肉。
焦げた部分を落とした一枚。
少し苦みが残る。
それでも。
十分食べられる。
「どう!?」
フェルナが待ちきれずに聞く。
「うまいぞ」
「ほんと!?」
「ああ」
「焦げたのも?」
「少し苦い」
「うっ」
「でも食えるし、次は焦がさないだろ」
「うん!」
七人が。
一斉に表情を緩めた。
「じゃあ私たちも食べよ」
セレスの一言で。
ようやく夕飯が始まった。
◇
「薄い」
最初に言ったのはラグナだった。
「お父さんはうまいって言った!」
フェルナが抗議する。
「うまいけど薄いんだよ」
「両方?」
ミレアが自分でも味見する。
「あ、本当だ」
「塩足す?」
「一人ずつ自分の分へ少しならいいんじゃないか」
俺が言うと、リシェルがすぐ板を持とうとした。
「今書くな。飯冷めるぞ」
「あとで書く」
「何を?」
「味見した時より、食べる時の方が薄く感じた」
「そこまで記録するのか」
「次に使う」
ノエルは焦げた肉の断面を観察していた。
「黒いところと、中の色違う」
「食事中に研究するな」
「でも面白い」
「冷めるぞ」
「食べながら見る」
「器用だな」
一方。
ユラは。
小さな匙で煮込みを食べ。
何度か噛んでから。
満足そうに頷いた。
「おいしい」
「どれが?」
セレスが聞く。
「みんなの」
「味の話だよ」
「これ」
煮込みを指す。
「でも、みんなでつくったから、もっとおいしい」
その言葉に。
七人。
一瞬だけ静かになった。
「……それ、分かるかも」
ミレアが笑う。
「私、自分で切った野菜どれか分からないけど」
「フェルナの肉は分かる!」
「焦げてるやつ?」
ノエル。
「違う! 焦げてない方!」
「焦げた方もフェルナ」
「それ言わないで!」
また。
食卓が賑やかになる。
◇
夕飯の後片づけまで。
七人でやると言い張った。
「料理は片づけまで」
セレスが言う。
「誰に教わった?」
「お父さん」
「なら正しい」
鍋を洗い。
残った食材を戻し。
刃物を拭いて所定の場所へしまう。
最後に台所を見回したリシェルが、何かに気づいて床を指差した。
「野菜落ちてる」
小さな欠片が一つ。
「誰?」
フェルナが聞く。
「分からない」
「じゃあ失敗?」
「落としただけだろ」
「拾えば終わり」
セレスが拾い、片づける。
「終わった」
本当に。
それだけだった。
◇
全部終えた頃には。
七人とも。
朝より明らかに疲れていた。
食事を作るだけで。
これだけ時間がかかる。
それを。
初めて自分たちだけで知ったのだろう。
「お父さん」
椅子へ座ったセレスが呼ぶ。
「何だ?」
「毎日、これやってた?」
「毎日全く同じじゃないけどな」
「朝も?」
「ああ」
「昼も?」
「ああ」
「夜も」
「必要なら」
セレスは自分の手を見る。
「大変」
「慣れれば今日より早い」
「でも大変じゃなくなるわけじゃない?」
「楽になる部分はある。でも腹は毎日減るからな」
するとラグナが横から聞いた。
「お父さん、嫌じゃない?」
「料理が?」
「うん」
「前にも言ったけど、嫌いじゃない。お前らが食うから作るのもあるし、自分でうまく作れたら嬉しい」
「今日、ラグナたちも嬉しい」
「だろ?」
「焦げたけど」
「そこは次だな」
「うん」
◇
「お父さん」
今度はミレアだった。
「明日も七人で作る?」
「好きにしていいけど、毎日全部やらなくてもいいぞ」
「なんで?」
「今日の目的は、俺の仕事を取り上げることじゃないだろ」
「あ」
「できるようになるためにやったんだろ?」
「うん」
「なら、明日は俺が作ってもいいし、一人ずつ手伝ってもいい。七人でまた作りたくなったら、その時やればいい」
セレスが少し考える。
「できること増えたら、全部やらないといけないわけじゃない?」
「そういうこと」
「…………」
「どうした?」
「前なら、できるならやらなきゃって思ってたかも」
「今は?」
「できる。でも頼んでもいい」
「ああ」
「一緒にやってもいい」
「ああ」
「じゃあ」
少し笑う。
「次はお父さんと作る」
「それが一番楽そうだな」
「だって教えてもらえるから」
抜け目がない。
◇
夜。
寝る前に。
リシェルは新しい板を書いていた。
「何を残した?」
横から見る。
『にくは だれかが みる』
『あじみは さいごにも する』
『できても ぜんぶ じぶんで やらなくていい』
最後だけ。
料理ではない。
「それも今日覚えた?」
「うん」
「誰かに頼る話、前にもしてるだろ」
「前にも聞いた」
「じゃあなんで書く?」
「同じこと、違う時に分かるから」
「…………」
それは。
確かにそうかもしれない。
聞いただけでは分からなかったことが。
実際にやって。
失敗して。
ようやく自分の中へ落ちる。
「いいんじゃないか」
「残す」
◇
寝床へ入ると。
今日は七人とも静かだった。
料理で疲れたのだろう。
フェルナですら。
すぐに寝息を立て始めた。
俺は目を閉じながら。
夕飯を思い出す。
薄い煮込み。
少し焦げた肉。
形の揃わない野菜。
決して。
上手な料理ではなかった。
それでも。
七人だけで。
何を作るか決め。
仕事を分け。
分からないところを聞き。
失敗したところを直した。
俺が手を出さなくても。
夕飯は。
ちゃんとできた。
それが少し嬉しくて。
少しだけ。
妙な気分でもある。
「……そのうち」
俺が料理をしなくても。
七人は困らなくなる。
そんな日も来るのだろう。
だからといって。
俺の役目がなくなるわけではない。
前にも。
七人にそう教えられたばかりだ。
「お父さん……」
寝言のような声。
ユラだった。
「なんだ?」
「ごはん……」
「腹減ったのか?」
「……あした、おとうさん……」
そこで少し間が空く。
「つくる……?」
「ああ。明日は俺が作るよ」
「……いっしょ……」
「手伝うか?」
「うん……」
返事をしたあと。
また静かな寝息に戻った。
一人でできるようになっても。
一緒にやらなくなるとは限らない。
むしろ。
できることが増えたからこそ。
今度は。
同じ仕事を。
隣に並んでできる。
それなら。
大きくなるのも。
悪くない。
「お父さん……」
今度は。
フェルナ。
「お前も起きてるのか?」
「……にく……」
「肉?」
「……つぎ、こがさない……」
「そうだな」
「……いっぱい……」
「量は増やさなくていい」
「……いっぱい……」
「寝言でも肉を増やすな」
返事はなかった。
どうやら。
本人の夢の中では。
次の夕飯も。
かなり肉が多いらしかった。




