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第23話 お姉ちゃんだって、甘えていい



 冬になってから。


 朝の仕事が一つ増えた。


 雪かきだ。


「お父さん!」


「なんだ」


「扉開かない!」


「押せ」


「押してる!」


「もっと」


「ううううう!」


 朝一番。


 フェルナが。


 玄関の扉へ。


 体当たりしている。


「開かない!」


「夜の間に積もったんだろ」


「雪、邪魔!」


「昨日まで喜んでただろ」


「遊ぶ雪は好き!」


「同じ雪だ」


「扉の前の雪は嫌い!」


 随分。


 都合のいい話だ。


「ラグナ」


「うん」


「一緒に押してくれ」


「分かった」


「強くやりすぎるなよ」


「分かってる」


「本当に?」


「分かってる!」


 ラグナが。


 扉へ手を置く。


「せーの!」


「待――」


 ばごん!


 扉が開いた。


 同時に。


 外に積もっていた雪が。


 勢いよく吹き飛んだ。


「…………」


「…………」


 家の前。


 雪の中に。


 一本。


 長い道ができた。


「開いた」


 ラグナ。


「開いたな」


「上手くできた?」


「扉が壊れなかっただけ成長した」


「やった」


「褒めてるようで褒めてない!」


 フェルナは。


 もう外へ飛び出していた。


「雪かき!」


「朝飯の後!」


「えええ!」


     ◇


 朝飯。


 七人。


 いつも通り。


 騒がしい。


「ノエル」


「ん」


「その干した木苺、今何個目だ」


「二個」


「口の中」


「…………」


「三個目だな」


「お父さん最近ずるい」


「何が」


「見るだけで分かる」


「毎日同じことしてるからだ」


 隣では。


 ユラが。


 湯気の立つスープへ。


 ふう。


 ふう。


 必死に息を吹いている。


「まだあつい」


「少し待て」


「おなかすいた」


「じゃあパン先に食え」


「スープがいい」


「なら待て」


「…………」


 ふううううう。


「そんなに吹くと疲れるぞ」


 ラグナとフェルナは。


 朝から雪かきの担当を争っている。


「私が大きい方!」


「フェルナも!」


「昨日途中で雪に飛び込んでたでしょ!」


「休憩!」


「仕事中!」


「遊びながらでもできた!」


「できてなかった!」


「二人とも食え」


 俺が止める。


 そして。


「セレス」


「なに?」


「お前も食え」


「食べてるよ」


「さっきから一口しか減ってない」


「…………」


 セレスの手が。


 止まった。


「どうした?」


「何でもない」


「セレス」


「ほんと」


 左右で違う瞳。


 その金色の目を持つ本人が。


 嘘をついている。


「顔色悪いぞ」


「寒いから」


「家の中だ」


「…………」


「寝不足か?」


「寝たよ」


「何時に?」


「みんなと同じ」


「その後起きなかった?」


「…………」


 黙った。


「何した」


「何も」


「セレス」


「……ユラが」


「ユラ?」


 本人が。


 スープから顔を上げる。


「ユラ?」


「夜、毛布蹴ってたから」


「ああ」


「かけ直した」


「それだけ?」


「ノエルも起きてたから」


 ノエルを見る。


「おなかすいた」


「夜中に?」


「うん」


「食った?」


「食べてない」


「セレスが止めた?」


「うん」


「それから?」


「フェルナが寝ながら落ちそうになってた」


「何で!?」


 フェルナ本人が驚く。


「知らない」


「落ちた!?」


「落ちる前に戻した」


「すごい!」


「感心するところじゃない」


「それから」


 セレスは。


 少し言いづらそうにする。


「暖炉の火が小さくなってたから」


「薪足したのか?」


「うん」


「何回?」


「……二回」


「つまり」


 俺は匙を置いた。


「ほとんど寝てないな?」


「寝たよ」


「どれくらい」


「…………」


「セレス」


「少し」


「寝ろ」


「でも」


「今日の仕事は休み」


「嫌」


 即答だった。


「なんで」


「雪かきする」


「ラグナとフェルナがいる」


「毛布も干す」


「ミレアとリシェルに頼む」


「昼ごはん」


「俺が作る」


「ユラも――」


「俺がいる」


「…………」


 セレスの顔が。


 明らかに困った。


「じゃあ私」


「ああ」


「何するの?」


「寝る」


「それ仕事じゃない」


「今日は仕事だ」


     ◇


「嫌」


 また。


 はっきり言った。


「どうして」


「お姉ちゃんだから」


「…………」


 なるほど。


 最近。


 少し。


 気になっていた。


 セレスは。


 何かあるたび。


 先に妹たちを見る。


 食事。


 風呂。


 寝床。


 仕事。


 遊び。


 喧嘩。


 誰かが困っていれば。


 俺より先に動くことすらある。


 悪いことではない。


 むしろ。


 頼りになる。


 ただ。


「お姉ちゃんだと寝なくていいのか?」


「そうじゃない」


「飯食わなくても?」


「違う」


「疲れない?」


「……疲れる」


「じゃあ」


 俺は言った。


「休め」


「でも」


「セレス」


 少し。


 声を落とす。


「お前」


「ああ」


「家に来た時も同じこと言ってたぞ」


「…………」


「働くって」


「…………」


「役に立つって」


 セレスが。


 俯く。


「今度は」


「ああ」


「お姉ちゃんだから?」


「…………」


「言葉が変わっただけじゃないか?」


 食卓が。


 静かになった。


     ◇


「お父さん」


 セレスが。


 小さく言った。


「なに?」


「でも」


「ああ」


「私が見てないと」


「うん」


「フェルナ危ないことする」


「する!」


「自分で言うな」


「ラグナも力入れすぎる」


「……たまに」


「ノエルは木苺食べる」


「食べる」


「リシェルは本読んで寝ない」


「…………」


「ミレアは人の怪我ばっかり気にする」


「…………」


「ユラは毛布蹴る」


「ユラ、けった?」


「蹴ってた」


「…………」


 セレスが。


 俺を見る。


「だから」


「ああ」


「私がちゃんとしないと」


「一人で?」


「…………」


「七人姉妹なのに?」


「…………」


「俺もいるのに?」


 セレスは。


 何も言わなかった。


 その時。


「セレス姉」


 ラグナが。


 口を開いた。


「なに?」


「私」


 少し。


 不満そうに。


「自分でできる」


「でも」


「力加減も練習してる」


「うん」


「分からなかったらお父さんに聞く」


「……うん」


「だから」


 ラグナは。


 セレスを見る。


「ずっと見てなくてもいい」


 次。


「フェルナも!」


「お前はちょっと心配だな」


「お父さん!」


「冗談だ」


「フェルナだって」


 黒い耳が。


 ぴんと立つ。


「危ないことする前に聞く!」


「昨日屋根から雪に飛び込もうとした」


 セレス。


「…………」


「その前は?」


「聞かなかった」


「フェルナ」


「でも今日は聞く!」


「今日からか」


「うん!」


 信用は。


 半分くらいにしておこう。


「私も」


 ミレア。


「ユラ見るよ」


「ほんと?」


「うん」


「ノエルも」


「何を?」


「ユラ」


「眠くない時だけ?」


「…………」


「黙るな」


「でも見る」


「リシェルは?」


 セレスが聞く。


「夜になったら本閉じる」


「自分で?」


「……できるだけ」


「そこは約束しなさい」


「うん」


 そして。


 ユラが。


 椅子を降りた。


 とことこ。


 セレスのところまで行く。


「セレス姉」


「なに?」


「ねて」


「…………」


「ユラ、けらない」


「毛布を?」


「うん」


「できる?」


「…………たぶん」


「お父さんみたい」


 少し。


 笑った。


     ◇


「ほら」


 俺は言う。


「お前が全部やらなくても」


「ああ」


「六人いる」


「……うん」


「俺もいる」


「うん」


「それでも足りなかったら?」


 セレスが。


 少し考える。


「みんなで考える」


「そう」


「…………」


「お姉ちゃんだからって」


 俺は。


 セレスの額を。


 軽く指でつついた。


「一人で七人分やるな」


「痛い」


「軽くだろ」


「お父さん」


「なんだ」


「私も七人の一人」


「そうだ」


「…………」


「一番上でも」


「ああ」


「娘の一人だ」


「…………」


 セレスの。


 金色の目が。


 少し潤んだ。


「だから今日は」


「ああ」


「寝ろ」


「…………」


「命令?」


「お願い」


「…………」


「それでも嫌なら」


 少し考える。


「父親命令にする」


「ずるい」


「便利だろ」


「フェルナみたい」


「何でそこでフェルナ」


「お父さん!」


「俺が言ったんじゃない!」


     ◇


 結局。


 セレスは。


 朝飯の後。


 寝室へ戻った。


 だが。


「お父さん」


「何だ」


「眠れない」


「まだ五分だ」


「でも外で音する」


 どさっ。


「フェルナだろ」


 外から。


「転んでない!」


「聞こえてるぞ!」


「雪が崩れただけ!」


「本当か?」


「……半分!」


「何だ半分って!」


 寝床のセレスが。


 起き上がろうとする。


「寝ろ」


「でも」


「俺が見る」


「…………」


「ほら」


 毛布をかける。


「目閉じろ」


「お父さん」


「今度は何だ」


「私」


「ああ」


「寝てる間」


「うん」


「みんないる?」


「いる」


「起きても?」


「いる」


「…………」


 昔。


 ユラが。


 よく聞いていた。


 朝になっても。


 家はあるか。


 飯はあるか。


 みんなはいるか。


 セレスは。


 そんなことを。


 ほとんど口にしなかった。


 たぶん。


 聞かないように。


 我慢していただけなのだろう。


「ああ」


 俺は。


 もう一度答える。


「起きてもいる」


「……うん」


「だから寝ろ」


「お父さん」


「なんだ」


「手」


「手?」


「…………」


 セレスが。


 毛布の中から。


 片手だけ出した。


「…………」


 なるほど。


 俺は。


 その手を握る。


「これでいい?」


「……うん」


 九歳。


 一番上。


 しっかり者。


 でも。


 九歳だ。


 俺は。


 たまに。


 それを忘れそうになる。


     ◇


 しばらく。


 手を握っていると。


 呼吸が。


 ゆっくりになった。


「寝たか」


 そっと。


 手を離す。


 部屋を出る。


「お父さん」


 扉の前。


 ラグナがいた。


「どうした?」


「セレス姉寝た?」


「ああ」


「ほんと?」


「見てくる?」


「起こすからやめる」


「正解」


「じゃあ」


 ラグナが。


 外を見る。


「雪かきする」


「頼む」


「フェルナと」


「ああ」


「競争しない」


「本当か?」


「……たぶん」


「そこは断言してくれ」


     ◇


 午前中。


 家は。


 意外と。


 普通に回った。


「ラグナ!」


「分かってる!」


「雪、そこに積むな!」


「なんで?」


「扉開かなくなる!」


「……あ」


「昨日と同じことするところだったぞ!」


「直す!」


「フェルナ!」


「なに!?」


「雪玉作る時間じゃない!」


「休憩!」


「五分前にも休んだ!」


「これは二回目!」


「回数の問題じゃない!」


 外は。


 騒がしい。


 中では。


「お父さん」


 ミレア。


「毛布これ?」


「ああ」


「干す」


「リシェルと二人でできる?」


「できる」


「無理なら呼べ」


「うん」


 リシェルは。


 毛布を持ちながら。


「終わったら本読んでいい?」


「昼飯までなら」


「分かった」


 ノエルは。


 ユラの髪を。


 結ぼうとしている。


「ノエル」


「なに」


「できるのか?」


「昨日ミレア見てた」


「そうか」


「たぶん」


「…………」


「お父さん」


「何だ」


「曲がった」


「早いな」


「でもユラ嬉しい」


「かわいい!」


 ユラ本人が喜んでいるなら。


 それでいい。


 本当に。


 セレスがいなくても。


 ちゃんと。


 回っている。


     ◇


 昼。


 セレスは。


 まだ寝ていた。


「起こす?」


 フェルナ。


「寝かせとけ」


「ごはん冷める」


「起きたら温める」


「お腹すかない?」


「寝てるなら平気だろ」


 ノエルが。


「起きたらいっぱい食べる」


「そうだな」


「木苺一個あげる」


「今日も?」


「病気じゃないけど」


「ああ」


「疲れてるから」


「優しいな」


「……一個だけ」


「十分だ」


     ◇


 セレスが起きたのは。


 昼を。


 かなり過ぎた頃だった。


「……お父さん」


「起きたか」


「今、いつ?」


「昼過ぎ」


「…………!」


 飛び起きる。


「そんなに!?」


「ああ」


「みんなは!?」


「いる」


「雪かき!」


「終わった」


「毛布!」


「干した」


「ごはん!」


「食べた」


「ユラ!」


「そこ」


 床。


 ユラが。


 木片で遊んでいる。


「セレス姉!」


「…………」


 セレスが。


 部屋を見回す。


 何も。


 壊れていない。


 誰も。


 怪我していない。


 家も。


 いつも通り。


「……大丈夫だった?」


「何が?」


「私いなくても」


「大丈夫だったぞ」


「…………」


 少し。


 寂しそうな顔。


「ただ」


「うん」


「ラグナが雪を扉の前に積みかけた」


「ラグナ!」


 居間から。


「もう直した!」


「フェルナが雪かき中に二回遊んだ」


「三回!」


「増やすな!」


「リシェルが毛布干した後、本読むの忘れて昼飯手伝った」


「……忘れてない」


「そうなのか?」


「あとで読むつもりだった」


「ミレアがユラの分まで片づけようとして、ユラに怒られた」


「ユラじぶんでする!」


「ごめんね」


「ノエルは」


 ノエルを見る。


「木苺食べた」


「いつも通りだな」


「うん」


 セレスが。


 笑った。


「……大丈夫だった」


「ああ」


「みんな」


「ああ」


「できる」


「そうだ」


     ◇


 温め直したスープを。


 セレスへ出す。


「食え」


「うん」


 パン。


 野菜。


 肉。


 そして。


 小皿に。


 木苺が一個。


「これ?」


「ノエルから」


「…………」


 向こうを見る。


 ノエルが。


 こっちを見ない。


「ノエル」


「なに」


「ありがとう」


「一個だけ」


「うん」


 食べる。


「おいしい」


「知ってる」


 セレスが。


 笑う。


 その顔は。


 朝より。


 ずっとましだった。


     ◇


「お父さん」


「ん?」


「私」


「ああ」


「休んでもいい?」


「今さら何言ってる」


「これからも」


「もちろん」


「お姉ちゃんなのに?」


「お姉ちゃんだからって」


 もう一度。


 同じことを言う。


「疲れないわけじゃない」


「うん」


「泣かないわけでも」


「……うん」


「怖くないわけでもない」


「…………」


「甘えちゃ駄目なわけでもない」


 セレスが。


 匙を止めた。


「甘える?」


「ああ」


「どうやって?」


「知らん」


「お父さん」


「自分で考えろ」


「……難しい」


「じゃあ」


 俺は。


 片腕を広げた。


「まずこれくらいか?」


「…………」


 セレスが。


 固まった。


「嫌ならいいぞ」


「嫌じゃない!」


「声でかい」


「…………」


 椅子から降りる。


 少し。


 迷って。


 俺のところまで来る。


 そして。


 そっと。


 抱きついた。


「…………」


 普段。


 ユラはすぐ抱きつく。


 フェルナも。


 勢いで来ることがある。


 ミレアも。


 時々服を掴む。


 でも。


 セレスから。


 こうして来ることは。


 ほとんどなかった。


「どうだ」


「……分からない」


「嫌?」


「ううん」


「じゃあしばらくそうしてろ」


「うん」


 腕を回して。


 軽く背中を撫でる。


「お父さん」


「ん?」


「私」


「ああ」


「お姉ちゃんでいい?」


「もちろん」


「でも」


「ああ」


「娘でもいい?」


「当たり前だろ」


「…………」


 ぎゅっ。


 少し。


 抱く力が強くなった。


     ◇


「ずるい!」


 突然。


 フェルナの声。


「…………」


 見る。


 居間の入口。


 六人。


 全員いる。


「いつからいた」


「今!」


 セレスを見る。


「嘘?」


「……たぶん本当」


「たぶん?」


「恥ずかしくて目使えない」


「珍しいな」


「フェルナも!」


「何が」


「ぎゅってする!」


「今セレスだ」


「順番!?」


「何で並ぶ前提なんだ」


「私も」


 ラグナ。


「ミレアも」


「……うん」


「ユラ!」


「だっこ!」


「ノエルは?」


「別に」


 一拍。


「後で」


「来るのか」


「リシェル」


「…………」


 本を持ったまま。


「一回だけ」


「お前まで」


 結局。


 その日の午後。


 俺は。


 七人全員に。


 順番で抱きつかれることになった。


「なんでこうなる」


「家族だから!」


 フェルナが。


 得意そうに答えた。


「便利な言葉だな」


「お父さんが教えた!」


「そんな使い方は教えてない」


     ◇


 その夜。


 寝室。


「セレス姉」


 ラグナ。


「なに?」


「今日いっぱい寝たね」


「……うん」


「すごかった」


「何が」


「私が三回見に来ても寝てた」


「三回も来たの?」


「起きてないか確認」


「…………」


 フェルナ。


「フェルナも二回!」


「あなたたちも休みなさい」


「でもセレス姉心配だった!」


「……ありがと」


「ノエルも見た?」


「一回」


「リシェルは?」


「扉の前通っただけ」


「ミレア」


「毛布かけ直した」


「ユラは?」


「セレス姉ねてたから」


「うん」


「なでた」


「…………」


 少し。


 沈黙。


「みんな」


 セレスが。


 小さく笑う。


「ありがとう」


 俺は。


 扉の外で。


 その声を聞いていた。


「お父さん」


「なんで分かる」


「気配」


 フェルナ。


「耳じゃないのか」


「今日は気配!」


「便利だな」


「お父さん」


 セレス。


「ん?」


「明日は」


「ああ」


「ちゃんと起きる」


「無理に早起きするな」


「でも仕事」


「眠かったら寝ろ」


「……うん」


「それから」


「なに?」


「妹が困ってたら助けてもいい」


「うん」


「ただし」


「ああ」


「一人で全部やるな」


「…………」


「お前が困った時は」


 俺は。


 六人の妹たちを見る。


「助けてもらえ」


「うん」


「俺にも」


「うん」


 セレスが。


 笑った。


「分かった。お父さん」


 七人の中で。


 一番大きい。


 一番しっかりしている。


 一番。


 妹たちを守ろうとする。


 それでも。


 セレスは。


 まだ子供だ。


 お姉ちゃんだから。


 我慢しなければならない。


 そんな決まりは。


 この家にはない。


 疲れたら。


 寝ればいい。


 怖ければ。


 言えばいい。


 手が欲しければ。


 伸ばせばいい。


 そして。


 甘えたいなら。


 甘えればいい。


 だって。


 お姉ちゃんである前に。


 セレスも。


 俺の娘の一人なのだから。


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