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侯爵家に引き取られた令嬢は王妃陛下の通訳になる  作者: 鶴見 日向子


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19/20

「見てました」

前作と同時公開です

アレクシスには、国王から自宅謹慎が言い渡された。


もっとも、アレクにとっては本が読み放題になるだけの、ご褒美のようなものである。


そんなある日、王太子夫妻がお忍びでやって来た。

さらに、レオンとアンドルも呼ばれている。


リリアも加わり、一同は応接室に集まった。


「アレクシスとリリアには謝らなければならないわ」


王太子妃が頭を下げた。


二人は顔を見合わせる。


「実はね、アレクに顎を砕かれた王族のダハントだけれど、手癖が悪いという話はしたでしょう?」


「はい」


王太子夫妻以外がうなずいた。


「あの男は母国でも問題ばかり起こしていたの。だからこちらで現行犯として捕まえる計画だったのよ」


王太子妃は続けた。


「ダハントがリリアに目を付けているのはわかっていたから、皆で見張っていたの。案の定、部屋へ連れ込もうとしたので、連れ込む予定の部屋には騎士たちを待機させていたわ」


「リリアは小柄だから、すぐに連れて行かれると思っていたのよね。まさか、あんなに踏ん張るとは思わなかったの」


「ひどいです! 先に教えてくださればよかったのに……!」


リリアが涙目になる。


「だって、リリアは演技が下手なんですもの。ごめんなさいね」


王太子妃はまったく悪びれた様子がない。


「それに、アレクシスがあんなに強いとも思わなかったのよ。今まで、止めようとした騎士や護衛が何人も返り討ちにされている相手だったのに」


王太子妃は真顔になった。


「リリア。本当に怖い思いをさせてしまってごめんなさい。手首の怪我も想定外だったわ」


「もしかして、私がリリアを見捨てるとでも思っていたのですか?」


アレクがじとっとした目を向ける。


「まさか。だけど普通は護衛を呼ぶでしょう?」


王太子妃が首を傾げた。


アレクは無言で王太子夫妻を見る。


二人はそっと視線を逸らした。


「いや、本当だぞ。だから私とアンドルも近くにいたのだ」


レオンが慌てて援護に回る。


「そうだったのですね。夢中で全然気付きませんでした」


アレクは頭をかいた。


「本当は、お前が突撃するのを止める役だったのだが……」


アンドルがぼそりとつぶやく。


レオンが慌てて目で制止したが、アンドルは気にしない。


「最初は話し合いで済むかと思っていたんだ」


アンドルは頭をかいた。


「ところが次の瞬間には、見事な蹴りが飛んだ」


部屋が静まり返る。


「……あまりに鮮やかだったので」


アンドルは遠い目をした。


「我を忘れて見惚れてしまった」


沈黙。


「つまり」


アレクの目が光る。


「リリアが部屋へ連れ込まれる直前まで、助ける気はなかったということですか?」


「ま、まあ……そうなるな」


王太子の視線が泳ぐ。


「許しません!!」


アレクが立ち上がった。


レオンとアンドルが即座に前に出る。


「そこまでしないと、そなたは本音を言えなかっただろう?」


レオンが静かに言った。


「傷ついたリリアを見たら、そなたは全力で慰める。それも計算のうちだったのだ」


王太子が小さくつぶやく。


「お二人の熱い口づけ、とても素敵でしたわ」


王太子妃がおほほと笑った。


アレクとリリアの顔が一瞬で真っ赤になる。


「いろいろと計算外はありましたけれど、結果は予想以上でしたわ」


王太子妃は満面の笑みを浮かべた。


「今日は二人の婚約と結婚式の日程の相談もしようと思っているの」


二人は何も言えなくなった。


その後、アレクシスの謹慎は解除された。


国王からは「厳重注意」という名のありがたいお説教を受けただけで済んだ。


「あちらの国王からも連絡が来ている」


国王が言った。


「あの男は自国で処分するとのことだ。落ち着いたらあちらの国に送り返す。

どうやら手を出そうとした相手が公爵令嬢だとは思っていなかったらしい」


国王はため息をついた。


「それに、自分の婚約者を守るために立ち向かったそなたを褒めておったぞ。あれほどの大男に挑む者など普通はいない」


「怪我がなくて本当に良かった」


顎を砕かれた大男は、まともに食事もできず、日に日に痩せていったという。


「もう腕力を振るうこともできまい。」


王太子が肩をすくめた。


「実はな。我が父も昔、母の国で同じようなことをして、相手の夫に斬り殺された」


アレクは目を丸くした。


「母の国では、妻に手を出した男は夫が斬ってもよいことになっている。身分など関係ない」


王太子は淡々と語る。


「こちらでは病死として発表されたがな。父はその国の法律を知らなかった。ただ、それだけだ」


少しだけ苦笑した。


「私は国王陛下と王妃陛下に育てられた。実母も再婚相手もいる。血の繋がりなど関係ない」


王太子はアレクを見る。


「誰が自分を愛してくれたか。それが一番大切なのだ」


そして、静かに言った。


「そなたは『いとこ』という血の繋がりに縛られて、本当の気持ちが見えなくなっていたのだろう」


「今回の件で、自分の心がわかったのではないか?」


アレクはうなずいた。


「はい」


王太子はにこりと笑った。


実は・・・でした。

チャッピーの感想「お前ら全員見てたんかい!」でした

読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
レオン様・アンドル様・王太子様…あれこれと理由を並べた上に王太子様は『ここだけの話』まで暴露してまんまと煙に巻きましたが……目が泳いだ時点で情状酌量の余地はないように思います(^_^メ) そして…王太…
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