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侯爵家に引き取られた令嬢は王妃陛下の通訳になる  作者: 鶴見 日向子


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18/20

「今か?遅い!!」

クライマックスでございます

リリアは王太子妃への語学指導の役目を終え、公爵家へ戻っていた。


その後はひたすら公爵家の仕事を手伝い、アレクシスもまた、公爵家嫡男としての務めに追われる日々を送っていた。


そんなある日。


二人は王太子主催のパーティへ招かれた。


着飾ったリリアをエスコートするアレクの姿は、実に凛々しかった。


会場に入ると、それぞれが関係者との挨拶に回るため、自然と別行動になる。


その時だった。


王太子妃の母国から来ていた王族の男性がリリアに声をかけた。


大柄な体格をした、見るからに武人といった男である。


「今日は着飾っているのだな」


母国語でそう話しかけられ、リリアは通訳を頼まれたのだと思った。


ところが次の瞬間、その男はいきなりリリアの手首を掴んだ。


そして、そのまま別の方向へ歩き出す。


「離してください!」


必死に振りほどこうとするが、男の力は強い。


しかも相手は来賓であり王族だ。


リリアも手荒な真似はできなかった。


踏ん張り、抵抗する。


それでも引きずられるように連れて行かれてしまう。


怖い。


助けを呼びたいのに声が出ない。


その時――


「リリアから手を放せ!」


怒声が響いた。


アレクだった。


アレクは男の腕を掴み、その手首をひねり上げる。


リリアはようやく解放され、その場へ座り込んだ。


男が怒鳴る。


「何をする!」


それに対し、アレクは相手の国の言葉で返した。


「私の大切な女性だ。そなたが誰であろうと、無体な真似は許さない」


会場がざわつく。


人だかりができ始めた。


「来賓とはいえ、私の大切な女性に乱暴を働いたことは許さん!」


周囲の貴族たちは何が起きているのかわからない。


「おい、何を話しているのだ?」


「あの公爵家嫡男が怒っているぞ」


「本ばかり読んでいる軟弱者かと思っていたが……」


男は鼻で笑った。


「たかが通訳ではないか。何をしようと私の勝手だ」


どうやら以前からリリアに目をつけていたらしい。


「王族の手が付くのだ。光栄に思え」


そう言って、アレクを見下ろすように笑った。


体格だけ見れば、圧倒的にアレクが不利だった。


アレクの瞳に怒りの炎が宿る。


次の瞬間には、男の顎へ鋭い蹴りが叩き込まれていた。


男がよろめきながら腰の剣へ手を伸ばす。


アレクはその腕を蹴り払った。


さらに急所を膝で蹴り上げ、そのまま顎へ頭突きを叩き込む。


巨体が大きな音を立てて床へ倒れた。


アレクはその頭を踏みつける。


「よくも私の大切なリリアに手を出そうとしたな!」


その時になってようやく、レオンとアンドルが駆けつけた。


「やめろ! アレク!」


「やり過ぎだ!」


二人の声で、アレクは我に返った。


慌ててリリアの元へ駆け寄る。


「大丈夫か?」


手袋を外した手首には、男の指の跡が赤く残っていた。


すでに腫れ始めている。


「誰か! 冷たい濡れ布を持ってきてくれ!」


アレクが叫ぶ。


その瞬間、リリアの張り詰めていたものが切れた。


「こ、こわかったぁ……」


リリアはアレクへしがみつき、大声で泣き出した。


「間に合ってよかった……無事でよかった……」


アレクは強く抱きしめる。


「目を離してすまなかった」


何度も頭を撫でた。


「もう大丈夫だ。


これからも、ずっと私がそなたを守る」


リリアはアレクの胸へ顔を押しつけた。


「お兄様以外の男に触れられるのは嫌……


お兄様以外とは……」


その言葉に、アレクは苦笑する。


「私も、そなた以外の女性には触れたくない。


そなたじゃないと駄目だ」


二人は見つめ合う。


そして――


自然と唇を重ねた。


◇ ◇ ◇


「取り込み中、邪魔して悪いが……」


レオンが頭をかきながら声をかけた。


「ほら、冷たい布だ。リリアの手首を冷やしてやれ」


二人は慌てて離れた。


顔は揃って真っ赤である。


アレクは受け取った布をリリアの手首へそっと当てた。


「痛かったであろう」


優しく腫れた部分をさする。


一方、その少し離れた場所では大騒ぎになっていた。


アレクに叩きのめされた大男の周囲を、医師や侍従たちが取り囲んでいる。


「我が主は顎が折れているようでして、話ができません。


いったい何があったのでしょうか?」


男の侍従らしき人物がアレクへ問いかけた。


「あの男がリリアを部屋へ連れ込もうとした」


アレクは自分の国の言葉で答える。


「見ろ。この手首の跡を」


それをリリアが通訳した。


そして自分からも事情を説明する。


侍従の顔色が変わった。


「しかし、足蹴りは良くないぞ」


聞き慣れた声が響く。


現れたのは王太子夫妻だった。


国王も一緒である。


「私の体格では、足技を使わねば太刀打ちできないと判断しました」


アレクは真顔で答えた。


「まあ、確かに相手は大男だ」


国王は頷く。


「だが、急所を蹴り上げ、顎を砕くのはやり過ぎであろう」


深々とため息をついた。


すると、王太子妃が割って入った。


「いい気味でございます」


その顔はどこか楽しそうだった。


「あの方は王族ではありますが、常習犯です。


皆、王族だからと見て見ぬふりをしておりました。


私は何度、泣いている侍女たちを見たことでしょう」


周囲が静まり返る。


王太子妃は次々と侍従へ指示を飛ばした。


大男は担架へ乗せられ、運ばれていく。


あまりの重さに担架の布が今にも破れそうだった。


アレクとリリアは肩を寄せ合いながら、その様子を見送っていた。


だが突然、アレクが我に返る。


「しまった!」


そして勢いよく立ち上がった。


「国賓である王族に大怪我を負わせてしまいました!


申し訳ございません!」


その場へ跪き、深々と頭を下げる。


一瞬の沈黙。


次の瞬間。


「今か!?」


国王が叫んだ。


「遅い!!」


王太子が叫ぶ。


「遅すぎる!」


レオンが叫ぶ。


「気付くのが遅い!」


アンドルも叫ぶ。


さらに駆けつけた公爵まで、


「もっと早く気付かんか!」


と怒鳴った。


アレクは頭を下げたまま固まる。


リリアはそんな彼を見て、思わず吹き出した。


先ほどまで泣いていたのが嘘のようだった。

アレクが「大切な女性」と叫んだのは外国語だったのでとっさに「妹」という単語が出てこなかったという裏設定

しかし、リリアからしたら胸キュンです


チャッピーに校正されてしまいましたが、「急所」を最初「股〇」と書きました。

そこだけでノックダウンできたのでは・・・・と思う私

「それでは、簡単すぎます」とチャッピー

チャッピー意外にひどい


お読みいただきましてありがとうございます

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