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アラサー女の異世界転生チート清掃業~どんなに泥沼の世界でもあたしは折れない  作者: 明烏
第3章

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王都見物

 登録申請の手続きを全て終えた翌日、さや達は王都アリアの見物に詣でた。


 ヒルダははしゃぎまくっている。

 何しろ独りで留守番していた昨日は、さや達が戻って来るまでそれこそ食事にも出ずにホテルの部屋に閉じこもっていたそうだ。

 ヒーラーを狙う輩に、さやと親しい自分もちょっかい出されるのではないかと不安だったらしい。


 シリルがアリアは安全だと強調したものの、ドラド王国で内務大臣の手の者に散々追いかけ回された記憶はまだ新しいのだ。


 それでもさやが本登録を無事に済ませた事で、ようやくヒルダも安心したようだった。


 そうなると転生したさやは勿論、今まで厳しい行動制限に縛られていたヒルダにとっても初めての、しかも他国の王都だ。

 今日はさやと共にのびのびと観光を楽しんでいた。


「実際に登録が完了するのはランクが決定される三週間後になります。支度金も頂いたことですし、この都でゆっくり骨休みをしましょう」


 そう語るシリルも嬉しそうだった。

 これまでの波乱に満ちた行程を考えれば当然だ。


 留守番させたお詫びに最初はヒルダの希望を優先、先ず宿の近くにある市場に行った。

 テントを張った下に並ぶ様々な食材や果物、総菜にヒルダは目を輝かせる。


「へえ、珍しい物が一杯あるねえ! この果物なんか南方でしか採れない貴重な実の筈だよ。あ、こっちは北方産の芋だ。さすが王都だ。世界中の食材が揃ってるねえ」


 ヒルダが感嘆の声を上げるとシリルが言った。


「王都というより、アリアだからですね」

「アリアだから?」


 けげんな顔をするさやとヒルダにシリルが説明した。


「現在アリアは他の王都と比較しても行動制限が緩く、住民は条件付きですが、ある程度の範囲で国外に移動出来ます。普通の国では物流のほとんどをヒーラー協会のシステムに頼るしか無いのが現状ですが、アリアでは都の商人が外国に出向いて物品を直接仕入れる事が可能なので、貴重な品も手に入りやすいのですよ」


 確かに直接話し合った方が交渉も上手く進むだろう。

 なる程、闇が少ないとそういう利点もあるのかとさやは感心した。


 実際注意してみると国外の料理を目玉にしている屋台がかなりある。

 店に並ぶ品も、ヒルダの話では希少品が結構あるようだ。


 市場を見た後は気の向くままに王都を歩いた。

 屋台で甘い揚げ菓子や果物、せっかくだからとサンクアロー王国特産の香り高く甘い果実のジュースも楽しむ。

 その後は興味ある店をのぞいたり、大道芸人が披露する曲芸や音楽、広場の大きく美しい噴水などを見物した。


 いつしか三人は繁華街の中心部に来ていた。

 肩が触れんばかりに行き交う人の多さに、ヒルダがまた感嘆の声を上げた。


「王都ってのは賑やかだねえ! こんな人ごみなんて、あたしは初めて見たよ!」


 さやも(ホント、渋谷みたい)と思った。


 人ばかりではない、立ち並ぶ店の華やかさ、豪華さも今まで訪れた街とは比較にならない。


 おまけに繁華街のメイン通りには両側に魔石を動力源にした街灯が並んでいた。これも初めて見るものだ。

 何もかも、協会の支部も含めて王都は豪勢だ。


 見るもの全てに心を惹かれ、さやとヒルダはぶつかりそうになりながらもキョロキョロ辺りを見回すのを止められなかった。


「——それにしてもアリアってのは本当に闇が少ないんだねえ」


 あちこちを見回していたヒルダがまた感心したように言った。

 ヒルダにとっても王都の闇の少なさは驚くべき事のようだ。


「行動制限が緩くなる程闇祓いが出来るなんて、豊かな都なんだね。きっと金を積んで、闇祓いもこまめに頼んでいるんだろうねえ」


 ヒルダがそう言うと、シリルがそれは違います、とまた否定した。


「豊かさの点で言えば、アリアは他の王都とさして変わりません。現在アリアは特別な状況にあるんです」

「特別? そりゃ何ですか?」

「ええ…… まあ……」


 けげんな顔で尋ねるヒルダに対し、シリルは気まずそうに口を濁す。


 シリルはさやに対しては常に自分が知っている事を出来る限り伝えようと心がけているようだった。

 それは多分この世界の事情をほとんど知らないさやを慮っての事だろう。


 ただその思いが高じる余り、シリルは時として話さない方が良いような事を口走ったり、それこそ自分が言えるギリギリ限界まで情報を披露しようとする傾向があった。

 今もさやにアリアのこの状況が普通だと思われては困ると考え、アリアは特別だと話したのだろう。


 だがその理由は、多分言えない事なのだ。


 それは分かるが、いい加減さやももどかしさを我慢出来なくなってきた。

 何しろアリアに来て以来大事な部分をはぐらかされ続けたせいで、頭の中は疑問符だらけなのだ。


「シリルはこの間からアリアは特別だって繰り返してるけど、聞いてもその理由は教えてくれないよね。何で? これだけ闇が少ない理由って、言えないような事なの?」


 さやのストレートな文句にシリルは少し考えてから、すまなそうに言った。


「申し訳ありません、確かに今はまだ言えないんです」

「ま(・)だ(・)?」

「ええ。ですがここに滞在している間中には理由をお話出来ると思いますよ」

「——ふうん」


 さやとヒルダは顔を見合わせたが互いにうなずき、ここは引き下がる事にした。

 そのくらいなら、まあ待てる。


 話題を変えるようにシリルが言った・


「菓子やジュースばかりでお腹が空いたでしょう。美味しいお店を知っているから入りませんか?」

「お、いいねえ! お酒は飲んで良いんですか?」


 シリルの提案にヒルダがノリノリで賛成する。


「もちろんです。昨日はバタバタして何も出来なかったから、申請が済んだ祝杯を挙げましょう」


 シリルの言葉にさやも目を輝かせた。お酒は大好きだ。


「行こう行こう! ね、ちょっと高いお酒頼んでも良い?」

「奮発しますよ」


 いたずらっぽく片目をつぶるシリルに、さやとヒルダは歓声を上げた。


 最高の一日だ。

 楽しく見物して、美味しい料理や酒にありつけて。

 しかも懸案はもう解決している。


 アリアの謎など後回しで良くなった。三人してさあ店に行こうとしたその時。


 銅鑼(どら)が鳴り響いた。


 驚いて振り返ると、金モールで飾った赤い華やかな礼服に身を包んだ役人二人が馬に乗ってやって来る。

 一人が何回か銅鑼を叩いたところで、もう一人が声を張り上げた。


「王室からの、知らせである! 王宮中央バルコニー広場にて、恐れ多くも王太子殿下より直々の御言葉が下される!」

明日も20時頃更新の予定です。


面白い、続きが読みたいという方はブックマーク、評価等頂けると嬉しいです。

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