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アラサー女の異世界転生チート清掃業~どんなに泥沼の世界でもあたしは折れない  作者: 明烏
第2章

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二度と無い

 シリルは慰める代わりに、こう言った。


「初めて私(・)達(・)が挑む闇祓いですね。サヤさん、精一杯補佐しますので、必ず成功させましょう」


 シリルの言葉にサヤの肩から力が抜けたのが分かった。サヤは笑いながらシリルに言葉を返す。


「うん、こちらこそよろしくね、シリル」


 丁度説明も終わったところだった。サヤは思い切り伸びをすると、茶化す様に言った。


「あー、それにしてもあんな晩餐会は懲り懲りだよ! 御馳走は一杯出たけど、両側から美男美女に攻められてさ。味なんか全然しなかったよ」

「やはりそう来ましたか。敵もガーディアンである私が同席しない機会は逃さないだろうとは思っていましたが。まあ申し上げたように、落ち着くまではそうした誘いは避けられるのが賢明でしょうね」

「誘いに乗る訳無いじゃない、あんなあからさまな色仕掛け! あたしだって恋をするなら能力目当てじゃなくて、普通に愛されたいよ」


 ぼやくサヤをシリルはまじまじと見て、言った。


「あの、申し上げておきますが」

「何?」

「ヒーラーとしての能力とは関係なく、あなたは充分魅力的な女性だと思いますよ。その方達だって、能力とは関係無くあなたに惹かれた可能性だってあるでしょう」

「おだてないでよ! どう考えてもあり得ないじゃない。あんな美男美女がどうして会ったばかりのあたしに——」


 そこまで言った時、サヤはハッと何かに気付いた顔をした。そして部屋の壁に掛かっていた鏡に映る自分の姿を見て、呟いた。


「——そうか、あたしはこ(・)ん(・)な(・)顔だったんだっけ」


(こんな顔?)


 訝しがるシリルの前で、急にサヤは酷く寂しげな、心細げな顔をした。それはほんの一瞬のことで、すぐにいつもの明るい顔に戻ったが。


「じゃあシリル、あたしは明日に備えて寝るわ。お休み」


 そう言うとサヤはシリルの部屋を出て行った。


 サヤが去ってからシリルは呟いた。


「——顔の事を言ったわけじゃ無かったのだが」


 いつもこちらまで気が楽になる程呑気で気さくで、なのに結構気遣いも出来る。そして嫌な事からも逃げずに立ち向かおうとするサヤはとても魅力的だと、シリルは言いたかったのだ。


 それにしてもシリルには先程のサヤの様子は意外だった。


(あんな、放っとけないと思うような顔もするのか)


 やはりサヤのことはまだ分からない事が多いのだとシリルは改めて思った。




 シリルの部屋を出たさやはやるせない思いだった。


(そりゃこんな美少女なら一目ぼれする奴もいるか)


 さやから見てもヨルンは間違いなく美しい。この姿に惹かれる人間は、確かに少なくないだろう。


 しかしさやはそれがあまり嬉しくなかった。


(あの顔、別に凄い美女って訳じゃ無かったけど結構気に入ってたのにな)


 二十八年間付き合ってきた前世の姿で愛されることはもう絶対に無いのかと思うと、さやは何だか無性に悲しくなった。


(なに考えてるんだよあたしは! くだらない事でくよくよしている場合じゃ無いだろうに!)


 首をブンブン振って余計な物思いを払いのけようとした時、ふと前方に人の気配を感じてた。顔を上げるとシャーロットがいる。晩餐会でうんざりするほど発していた色気は欠片も感じられない。


「――何ですか?」


 身構えるさやにシャーロットは深々と頭を下げるとこう言った。


「先程は大変無礼を致しました。どうかお許しください」

「…………」


 あれだけ色仕掛けをやられた相手にいきなり謝られて戸惑うさやに、シャーロットは頭を下げたままで言葉を続けた。


「叔父が私達にあのような真似をしかけさせたのは、あなたを手中に収める為ではありません。むしろ逆です。あなたが二度とこの地を訪れたくないと思わせるようにするのが目的なのです」

「二度と?」

「ええ」


 シャーロットは答えると顔を上げた。至極真面目な顔だ。


「叔父は領主である自分が行動制限を課されている状況は好ましくないと判断し、ご自分に関わる核の除去を決断なさいました。それでもそれらの核は、叔父にとっては大切な存在であることは変わらないのです」

「…………」

「叔父とて完全封鎖を祓って頂ける機会自体が有難い事なのだと頭では分かっているのです。それでも大事な縁者をこの世から抹消した相手には、二度と会いたくないと思ってしまうのでしょう。サヤ様、どうか叔父の無礼をお許し下さい。私達は―― もちろん叔父も、例え核を除去するのであろうとも、あの完全封鎖地域を祓って頂けるのならこれ程有難いことはございません ――叔父はあの闇にもうずっと苦しめられているのです」


 それだけ言うとシャーロットは泣きそうに顔を歪め、再び深く頭を下げた。そんな彼女にさやは優しく声をかけた。


「シャーロットさん、私は核―― 闇に閉じ込められている魂への伯爵の想いを聞きました。その思いを踏みにじるような真似は決してしません。全身全霊を込めて闇祓いをすることを御約束します」


 その言葉にシャーロットは頭を上げた。少し目が赤くなっている彼女に微笑みかけると、さやは自分の部屋へ戻った。そうだ、くだらない事に思い悩む余裕は無いのだと自分をしかりつけながら。

すみません、少し投稿が遅れました。明日は20時頃更新する予定です。


面白い、続きが読みたいと思って頂けたらブックマーク、評価等頂けると嬉しいです。

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