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アラサー女の異世界転生チート清掃業~どんなに泥沼の世界でもあたしは折れない  作者: 明烏
第2章

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そこまで馬鹿ではない

 シリルは手早く身なりを整えると伯爵に面会を求めた。

 客間に通されるとすぐに伯爵がやって来る。


「おや、見違えるようだ。男前だったのだな、ガーディアン殿は」


 にこやかにシリルを評した伯爵に、シリルは礼儀正しく頭を下げた。


「先日はお見苦しい様をお見せしました。この度のご助力、感謝致します」


 ソファーに伯爵と向かい合わせに座ると、シリルは早速切り出した。


「サヤさんから伺いましたが、闇祓いを依頼なさったそうですね」


 シリルの問いに伯爵はニッコリ笑った。


「サヤ殿はあの年齢に似合わずしっかりしているね。こちらがどれだけ水を向けても、ガーディアンを通してくれの一点張りだったよ。幾らヒーラー殿でもあの姿で老いが止まるとは思えないが、実は相当年齢がいっているのかな?」

「闇祓いとその代償について、お話をお聞かせ願えますか」


 話に乗らないシリルに伯爵は肩をすくめると、本題を始めた。


「君達にとって悪い話では無いと思うよ。当家抱えの兵の護衛付きでサンクアロー王国国境まで送り届けよう。四頭立ての馬車を提供するから、国境には一日半で到着するだろう。私もサンクアロー王国には多少の伝手がある。だから国境を抜けたところで替えの馬車にすぐ乗れるよう、手配しておくよ。君達は馬車の手配に掛かる時間も節約できるという訳だ。その代償として私が望むのは、サヤ殿の闇祓いだ。近頃ドラド王国では、伯爵の私ですらヒーラー殿を頼むのが難しくてね。特に完全封鎖の闇となると、なかなか引き受けて貰えないのだよ。無論、相応の礼金は支払うつもりだ」


 最後の言葉にシリルは目を細めた。


「——つまり完全封鎖の闇をサヤさんに頼みたいと? サヤさんが完全封鎖の闇を祓えることは、カナン街の所長からお聞きになられたのですか? だとしたら所長には警告が必要ですね。サヤさんはまだランク付けもされておりませんから」

「あの所長は何も言っていないよ。せいぜいその口ぶりから、浄化能力者だと分かったぐらいだ」


 ヒーラーの能力は、大きく分けて闇操作能力と浄化能力の二種類ある。闇操作とは闇を動かす力で、浄化能力は闇を消す力だ。


 伯爵は愛想の良い笑みを浮かべた。だがその目は少しも笑っていない。


「サヤ殿に関する情報はまだ殆ど無いが、私はあのヒーラー殿は完全封鎖の闇を祓う能力ぐらいはお持ちだと思っているよ。それもかなりの規模の闇をね。だって——」


 伯爵は笑っていない目で、シリルを射抜く様に見た。


「内務大臣は、そ(・)こ(・)ま(・)で(・)馬鹿では無いのだよ」

「————」

「確かに私は内務大臣のヒーラー殿に対する為さり様には反対の立場を取っている。しかしそんな私でもこれだけは分かるよ。幾らあの人でも仮とはいえ協会に登録している、しかもまだ能(・)力(・)の(・)程(・)度(・)も(・)定(・)か(・)で(・)は(・)無(・)い(・)ヒーラー一人を手に入れるだけのために、ここまで協会の怒りを買うことが明白な無茶はしでかさないよ。なら考えられる事は唯一つ。大臣は協会に登録しているヒーラー殿全てにそっぽを向かれてでも手に入れる価値が、サヤ殿にはあるとお考えなのだ」


 伯爵は目を細めて言葉を続ける。


「たったお一人で一国の闇を解決出来るヒーラーなど高ランク、それこそAランク以上のヒーラー様以外考えられない。シリル君、サヤ殿は、そ(・)う(・)い(・)う(・)能(・)力(・)をお持ちなのだろう? Aランクの浄化能力者なら、完全封鎖の闇も難なく祓う事がお出来のはずだ」


シリルは答えなかった。表面上はあくまで平静に見える。そんなシリルに伯爵は大げさに首をかしげて見せた。


「解せないのはね、それ程のヒーラー様が出現されて、しかもこうやってドラド王国の大臣が血眼になって略奪しようとしているのに、ヒーラー協会の対応があまりにも緩いのだよ。本部は一切をカナン街の所長任せ。その所長だってやった事といえば、王都の協会支部を通した王家への抗議と制裁実施の警告のみ。サヤ殿の保護さえ、大ごとにならないよう内々に私に要請してきた程だ。まだランク付けされていないとはいえ、明らかに高ランクヒーラー相当の能力をお持ちのヒーラー様に魔の手が迫っているのにだよ? それこそ協会が独占している物流システムに手を回して王都への必要物資の供給をストップさせるぐらいの制裁を科すなり、ヒーラー様を保護する為に協会支部に常駐している協会直属の軍を派遣するぐらいしても、おかしくはないだろう。なのに今やっている事は、せいぜい中ランク程度のヒーラー殿がちょっかいを出された場合の対処のみだ。それどころかカナン街の所長は大臣のやり様が全く理解出来ないといった様子だったよ。〝内務大臣はおかしくなったのか、幾ら浄化能力者が少ないからと言ってもたった一人の未登録のヒーラー殿の為に国を危うくするおつもりか〟とね。つまり——」


 伯爵は笑みを消した。


「サヤ殿の能力に関する情報について大臣と協会—— 少なくとも出張所の所長との間には明らかに差がある。どうしてだろうね? それこそそのヒーラー殿に付いているガーディアンが、仮登録する際に所長に対して大臣が得た情報とは異なる内容の報告をしていなければあり得ない事では無いかな、と私は思うのだが」

「…………」

明日も20時頃更新の予定です。


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