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アラサー女の異世界転生チート清掃業~誰もが何か隠してる(180話以上完成済)  作者: 明烏
第1章

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逃げろや逃げろ

「あ、大トネの木だ…… サヤ、レナ町まであと半分のとこまで来たよ……」

「そうか…… やった……!」


 ゼイゼイ息を切らせながら、ヒルダとさやは励まし合っていた。二時間ぶっ通しの早歩きはさすがにハード過ぎる。今にも心が折れそうだ。


「あの木まで歩いたら休憩しましょう。頑張って下さい」


 シリルが声を掛ける。こちらは息も乱していなかった。

 三人は徒歩でレナ町へ向かっていた。レナ町まで行けば早馬車を頼める。それで協会の出先機関がある場所へ行くのだとシリルから言われていた。


 此処に来るまでに、さやはシリルとヒルダから大体の事情は聞いていた。そうしてやっと理解出来たのである。

 さっきの自分がかなりヤバい状況にあった事を。

 さやは改めてゾッとした。シリルがあの場では発言すらしてはならない立場なのを良いことに、アデラは嘘をつきまくっていたのだ。


「本来なら私がシナ村の村長に同行してあなたを訪問する事も協定に抵触する恐れがあるのではないか、とも思いました。あなたの去就を決めさせようとする一団の、それも協会に登録させようとする勢力に協会が加担していると受け取られかねないですから。しかしあなたが記憶の殆どを失っている事、そしてここがドラド王国である事を考慮した結果、その程度の行動は許されると判断したのです」

「ここがドラド王国だから?」


 訝しがるさやにヒルダが説明した。


「今はかなりヤバいんだよ、この国は。何かって言うと協会のヒーラー様にちょっかい出して、結構強引な勧誘をしてるみたいでさ。それでヒーラー様がこの国に来るのを嫌がってるのさ。たまに訪れるヒーラー様は奪い合いだよ。三年前だって運良くヒーラー様が通りがかってくれたおかげで何とか闇祓い出来たけど、それが無ければヒーラー様を手配するなんて絶対無理だったって村長さんに散々愚痴を聞かされたよ」

「——じゃあ、村長さんが闇祓いが終わるまで事情を話そうとしなかったのは……」

「あんたを不安にさせたら村を逃げ出しはしないまでも、闇祓いに集中出来なくなるんじゃないかと危ぶんだんだろうねえ。まああんな事になるとは思わなかっただろうから、検査で大丈夫ってなった時点であんたに説明する余裕ぐらいあると思ってたんじゃないかな」

「そういう事か……」

「サヤ、村長さんを勘弁してやっておくれよ。あの時は村が封鎖されるかどうかの瀬戸際だったからね。村長さんも余裕が無かったんだと思うよ」

「——うん、分かってる」


 さやも村長を責めるつもりは無かった。村長にとって村が一番大事なのは当然だ。

 それでも村長はさやが最上の選択を出来るよう、精一杯骨を折ってくれたのだ。


「事情は大体分かったよ。でも大丈夫なの? シリルさんが命令したぐらいでアデラが諦めるとは思えないんだけど」


 今にもアデラが自分を追って来るのではないかと不安がるさやに、ヒルダは何とも言えない表情で笑った。


「まあ大丈夫じゃない。ガーディアン殿にああ言われたら、検査官じゃ逆らえないよ」

「——そうなの?」


 まだ安心出来ないでいるさやにシリルが説明した。


「私の命令に逆らってまで私達を追ったと私が協会に報告すれば、今回の場合は協会から全ヒーラーに向けて最高警戒情報として通知が出されるでしょう。訪れるヒーラー殿に過度な勧誘を仕掛けてくるドラド王国の評判は、今現在でも決して良くはありません。それに加えて未登録とはいえ、同じヒーラー殿に一介の検査官がガーディアンの制止を無視までして拉致を目論んだなどという話が広まろうものなら、この国の闇祓いをしようというヒーラー殿はほぼいなくなるでしょう。あの検査官も自国を危機に追い込みたくなどない筈です」


 さやは言葉を失った。ほぼ全てのヒーラーによる闇祓い拒否。確かにそんな事態を突き付けられたら、自分に手を出す訳にはいかなくなるだろう。

 世界のヒーラーを殆ど傘下に収めている協会だからこそ、出来る脅しだ。


「それに、彼女はルールでギリギリ許される範囲内の行為であなたを手に入れようとしていました。明らかなルール違反は決してしない筈です。まあ今後動くとすれば出来るだけ早く大臣に今の状況を知らせる事でしょうが、移動中の人間に連絡を取れる手段は限られています。少なくとも丸一日は大丈夫、ということです」

 

 さやはシリルをチラリと見た。


(まあ、頼りになるガーディアンなんだろうな)


 あの時シリルはアデラに対してガーディアンの権限を使い、徹底的にその行動を封じていた。その結果、アデラは馬を取り上げる事しか出来なかったのだ。

 力を使う術と判断力、共に優れていると思う。かなり厳しい状況だが、この男がいれば何とかなる気がする。


 とはいえヒルダがいてくれて本当に良かったとさやは思っていた。自分一人でシリルについて行ったら、今頃はかなり不安だっただろう。

 さやは協会とこの男をまだ完全に信じている訳ではない。ヒルダがそう勧めるから従っているだけだ。


 それに。


〝ド新人ヒーラーがずい分大口を叩くものだ〟


(……いかん、思い出したらまた腹が立ってきた)

次は22時頃に投稿します。

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