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アラサー女の異世界転生チート清掃業~誰もが何か隠してる(180話以上完成済)  作者: 明烏
第1章

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村の闇祓い

 ヒルダとさやの話を聞いた村長は、ポカンと口を開けたまま何も言わなかった。


 しばらくして我に返ったのか、ブルッと身体を震わせた。そして客間のあちこちに目をやり、最後にさやとヒルダを見てふっと笑った。


「ヒルダ、私はどうやら立ったまま夢を見たらしいよ。いや、酷い夢を見たものだ。こうも都合の良い夢など、覚めれば落胆するだけなのにな」


 さやはため息をついた。さやとヒルダは村長にもう三度同じ話をしていて、その度にさやは村長の目の前で闇祓いの能力を披露しているのだ。なのに毎回村長からはこの反応しか返ってこない。


 さやはげんなりしながらもう一度同じ事を言った。


「夢じゃありませんよ、村長さん。あたしには闇祓いの能力(ちから)がありました。さっき村長さんもご覧になりましたよね。それで村の人達さえ良ければ村が払える金額で村の闇祓いをさせて頂こうと思いますが、どうでしょうか!」


 これで納得してくれという願いを込めてさやは強い口調で言い切ったが、村長がまたポカンと口を開けた。

 遂に業を煮やしたヒルダが村長の両肩を掴んで揺さぶった。年寄りだからと労わっている場合では無いと判断したのだろう。


「村長さん! いい加減に現実を見て下さいよ! これじゃいつまで経っても話が終わりゃしない!」


 ヒルダに揺さぶられている間に、ようやく村長の目に光が宿った。村長は縋り付くような目でヒルダを見ると、震える声で言った。


「——本当なのかい。私を担いでいるんじゃないだろうね? こんな年寄りを惨いめに遭わせないでおくれよ」

「さっきこの家の闇をサヤが祓ったのを見たでしょう! 全部、本当の事ですよ。とにかくサヤがヒーラーなのは間違い無いんです。そして、サヤがこの村の闇を祓うつもりなのも嘘じゃありません! それだけじゃない、サヤはあたしの家の()()()を…… 三年前の闇祓いでヒーラー様が祓うのは無理だと仰った闇を祓えたんですよ!!」


 ヒルダの最後の言葉に村長は大きく目を見開いた。そんな村長に言い聞かせるうちに、ヒルダの言葉は震えていた。


「……あたし達は、この村に閉じ込められないで済むかもしれないんですよ! それどころじゃない、あたし達は…… ()()()から解放されるんですよ!!」


 最後の言葉を泣き声交じりにヒルダが言い切った時、村長は呆然とヒルダを見た。やがてその唇はわなわなと震え、村長はヒルダと共に声を上げて泣きだした。


 村長が泣くのにも驚いたが、さやはヒルダがこんなに感情を露わにするのを初めて見た。居間の闇が消えたのを見た時すら、穏やかに笑うだけだったから。

 ヒルダは恐らくずっと絶望に圧し潰されて、感情が麻痺していたのだろう。村長に話しているうちにやっと実感できたのだ。

 希望を。


 感情が振れまくっていた二人は、しばらくしてやっと落ち着きを取り戻した。冷静になった村長は目を拭うと、まずさやに深々と頭を下げた。


「——この度はシナ村に望外の御慈悲を賜りまして、お礼の申し上げようもございません」

「ちょ、ちょっと! 顔を上げて下さい村長さん」


 いきなりとんでもない敬語を使われたさやは、慌てて村長の礼を止めようとする。


「村長さん、あたしは命を助けてくれた上に素性の知れないあたしをずっと村に置いて親切にして下さった皆さんに、恩返し出来る事が嬉しいんです。それに無料(タダ)って訳じゃ無いんですから。一応仕事としてやりたいんで、ある程度のお金は頂きます。もちろん先程申し上げた通り、村の人達が払える額で結構です。あ、生活するのに必要なお金はちゃんと除いて下さいね」

「……本当にそれでいいんですか?」

「もちろんです」


 さやの言葉が本気だとようやく納得した村長は二つ返事で承諾し、さやと村長は早速打ち合わせに入った。村長の話によると、明日からでも闇祓いに取り掛かって貰いたいくらいに余裕は無い状況らしい。

 何でも村の闇の浸食具合を調べる〝汚染度検査〟と呼ばれる立ち入り調査が近いうちに行われるので、それまでに出来るだけ村の闇祓いを済ませて欲しいそうだ。


「そのまま放置しておくのはまずい闇だけで構いません。サヤ様が祓える闇を出来る限り祓って頂きたいのです。ただ、検査が行われる二カ月後までに全ての家を、どこも同じ程度に、ということでお願いします。そうでなければ恐らく村人同士で争いが起こるでしょう」


 サヤ()という呼び方にさやはゲッと思ったが、取り敢えずスルーする。


「——分かりました。ですがヒルダの家だけは一番先に、念入りに闇祓いさせて下さい。この人には誰より恩がありますし、あたしも闇祓いを始めたばかりなので、まず自分の腕慣らしをしながら能力(ちから)のレベルも確かめたいんです。そうすればどの程度ずつ祓えば間に合うのか、加減が分かると思うので」

「——確かに闇祓いの能力が発現されたばかりのサヤ様であれば、ご自身の能力が如何ほどか御確かめになりたいというのも当然です。それにサヤ様にとってヒルダは間違いなく特別な存在でしょう。承知しました。ヒルダの家は、例外にして頂いて構いません」


 闇祓いのおおまかな方針が決まったところで、礼金も決められた。


明日も22時頃更新の予定です。


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