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アラサー女の異世界転生チート清掃業~どんなに泥沼の世界でもあたしは折れない  作者: 明烏
第3章

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闇との繋がり

〝それは、仮にあたしにその能力があって、侯爵令嬢を見た時に令嬢と闇の間に繋がりが確認出来なければ、令嬢は闇を発していない、つまり核になりかかってはいないという事なの?〟

〝ええ、そういう事になります。今回は令嬢が核になりかかっているという事で間違い無いとは思いますが、今後の闇祓いで闇を発した者が核になりかかっているか判断が難しかった場合は、その能力を発現しておけば良い判断材料になります。そうなれば、そうした者を閉じ込めずに済むかもしれません。もし余裕があるようでしたら、今回試してみるのも良いかと思いますよ〟


 今のさやは、ヴァランティーヌが果たして本当に核になりかかっているかどうか判断出来なかった。そんな曖昧(あいまい)な状況でどこまで闇を祓うか決めたくはない。

 判断を誤って闇を祓わなかった為に、この高潔な女性を閉じ込める一因になるのだけは嫌だった。


 だからさやはヴァランティーヌに言った。


「ご令嬢、お話し中に失礼致します。私はこれから私の能力で、ある事を調べます。なので大変申し訳ないのですが、しばし私にお声を掛けられるのをお止め下さい」


 ヴァランティーヌは眉を上げたが「分かったわ。闇祓いに必要なのね」と言ってそのまま口を閉じた。


 さやはヴァランティーヌに一礼すると目を閉じ、まず核を解放する時の精神状態を作り上げに掛かった。ひたすら精神を集中させ、心の奥深くにもぐり込んでいくイメージだ。


 しばらくして自分が核を解放する時と同じ精神状態になったと判断し、さやは目を開けた。そしてひたとヴァランティーヌと彼女を囲む闇を見据えた。


 すると、それまで見えなかったものが見えた。

 寝台を取り囲んでいる闇から黒い靄(もや)のようなものが滲(にじ)んでいるのだ。

 だがヴァランティーヌは何も発していない。流れの様なものは見えなかった。


 さやはもう一度闇とヴァランティーヌを見比べた。闇にはやはり靄が見える。だが、ヴァランティーヌには何も無い。


 シリルは調子が良ければ闇が発する空気も見えるのだと言っていた。ならば闇が発する靄が見えるのに、ヴァランティーヌが発する闇だけ見えないということはあり得ない。


 闇とヴァランティーヌを何度か確認した後で、さやは大きく息を吐くと潜り込んでいた処から戻った。同時に闇の靄も見えなくなった。


 さやは心を落ち着けてからヴァランティーヌに言った。


「ご令嬢殿、この寝室の闇を全て祓っても構いませんか?」


 さやがそう言うと、それまで冷静沈着だったヴァランティーヌの表情が初めて崩れ、一瞬だが泣きそうな顔になった。そうすると年相応の少女に見える。


 しかしヴァランティーヌが崩れたのはそれだけだった。すぐに表情を戻すと冷静な口調でさやに言った。


「そんな事が可能なの?」


 当然すぎる質問に、さやはニッコリ笑って答えた。


「ええ、御令嬢殿がお望みであれば」




 その後さやは徹底的に居住区の闇を祓った。さやが闇を一つ消す度に、ヴァランティーヌの顔は明るくなっていく。

 寝室のドアから頭だけ出して恐る恐る様子を伺っていた二人の侍女達も、やがて寝室の中に入ってさやの闇祓いを見守るようになった。


 最後の闇が金粉になって散ると侍女達は歓声を上げ、涙を流して喜んだ。


 ヴァランティーヌも驚く程朗らかになった。

 侍女に再びお茶を出させるとさやとの雑談に興じ、さやが居住区(ここ)の闇祓いを受ける羽目になった失敗談を面白おかしく話すと、声を立てて笑いさえした。


 そんな様子は先程の泣き顔とは違う意味で、実に少女らしかった。


 さやはいつ恋愛相談を持ち掛けられるか冷や冷やしながらも、ヴァランティーヌが見違える程明るくなった事を嬉しく思った。

 今後もヴァランティーヌを取り巻く環境は厳しいだろう。それでもさやは一時的かもしれないが、彼女を絶望から救い出せたのだ。


「とても楽しかったわ。誰かとお喋りするのは久しぶりだったから ——サヤ殿、あなたが私に光を与えて下さった事、生涯忘れません」


 さやを見送る時にヴァランティーヌはそう言った。

 最後まで笑顔だった彼女を見て、色々ありはしたが今回の闇祓いを受けて良かったとさやは心から思い、満足した。




「今回の闇祓い、本当にご苦労様でした」


 協会支部でさやの報告を聞いたシリルは、そう言ってさやを労(ねぎら)った。


「本当に大変だったよ! もう有り金はたくのはコリゴリだよ」

「それは良かったです。私も今回は冷や汗をかきましたからね。こういう経験はお互い最後にしましょう」


 思い切りぼやくさやにシリルは笑顔で茶化すと、さやにドーラ金貨二枚を渡した。


「先程私の方にも依頼料が支払われました。良かったらヒルダさんと二人で美味しい物でも食べて下さい。ヒルダさんにも今回は苦労をお掛けしましたから、今日は骨休みということで」

「やった! ヒルダも外国の珍しい料理を食べてみたいって言ってたから喜ぶよ」


 歓声を上げたさやは、シリルが〝ヒルダさんと二人で〟と言った事に気付いた。


「シリルは行かないの? 今回はシリルにも迷惑かけたんだし、良かったら一緒に依頼完遂の打ち上げをやろうよ」

「誘って下さるのは嬉しいのですが、生憎今日はこのまま支部に泊まり込みで研修を受けることになっています。私の事はお気になさらず、どうぞ楽しんでらして下さい」


 そう言うシリルはかなり疲れた顔をしていた。

明日も20時頃更新の予定です。

面白い、続きが読みたいという方はブックマーク、評価等頂けると嬉しいです。


※ここ最近あらすじの変更を繰り返してしまい、大変失礼しました! ようやく内容が確定しました。前にお伝えした通り、ストーリー事態に変更はありませんので、引き続き安心してお楽しみ下さい。


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