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アラサー女の異世界転生チート清掃業~どんなに泥沼の世界でもあたしは折れない  作者: 明烏
第3章

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料理店で

「——そうかい。ガーディアン研修ってのはそんなに大変なんだね。それなら明日の夕飯はシリルさんの好物を沢山拵(こしら)えてあげようか」


 さやからシリルの話を聞いたヒルダは、気の毒そうな顔をしてそう言った。


「ぜひそうしてあげて。さっき会った時もかなり参ってるみたいだったから」


 シリルは日を追うごとに疲弊している。それがさやには気がかりだった。

 連日遅くまで行われている研修のハードさに加え、さやには全てを話さないが、恐らく世界の闇の現状について悪い話ばかり聞かされているのだろう。

 そんな様子を見ていると、さやは自分だけ休んでいるのが何だか申し訳なくなる。


 実のところ、さやも自分が女神から(多分世界を救うという)役目を負わされてこの世界に転生したことをシリルに話せば、シリルの不安も幾らかは解消されるのではないかと思わないでもなかった。

 何しろ自分はこの状況において強力な助っ人であるのは間違いないのだ。


 ただ、さすがにこの情報は簡単に話すには重過ぎた。シリルに話すにしても、もう少しこの世界の状況を把握してからにしたいのだ。


 それに仮に今話したとしても、現状発現しているさやの能力ではかなり信憑性に欠けるのではないかと臆する気持もあった。


 今のさやはとてもじゃないが女神の言う〝後世まで語り継がれるような偉業〟などという大層な功績を成し遂げられるような能力を備えているとは言えないからだ。

 十年で世界の十パーセントが闇に吞まれるような深刻な事態なのに、一度の闇祓いでたかが数個の核を解放出来る程度の能力など、何の足しにもならないではないか。


 確かにシナ村では一度に数十の核を解放したが、あれはシリルが指摘するように、さやにとってシナ村が特別な存在だったから可能だったのだと思う。

 あれと同じ闇祓いをコンスタントに出来るかと問われれば、少なくとも今のところは否だ。


 そんな状態で「自分は救世主です」などと打ち明けるのはこっ恥ずかしいし、シリルだって「夢でも見たんですね」で片付けかねない。


 そう考えるとまだ打ち明ける気にはなれなかった。

 何度か打ち明けるべきかと考える時はあったのだが、結論はいつも同じだ。今回もやはり同じだった。


(あたしの事情をシリルに話すとしても、やっぱりあたしの能力がもっと発現してから、少なくともあたしの話に信憑性があるぐらいの能力になってからにしよう)


 そう決めたさやは物思いを切り上げ、目の前の料理に集中することにした。何しろ楽しみにしていた料理なのだ。


 さやとヒルダはさやが宿を闇祓いした時に入った、例の米料理を出す店に来ていた。

 さやが食べた異国料理を食べたいとヒルダが希望し、さやも当然大賛成したのだ。


 店はかなり混んでいたが、さやを覚えていた店主が結構良い席に案内してくれた。二人の前には例のチャーハンもどきに加え、料理の小皿が幾つか並べられている。

 ヒルダはチャーハンにかなり興味を持ったようだった。


「米っていうのか。穀物を粉にせずにそのまま料理するなんて、考えた事も無かったよ ……へえ、代わった味だけど悪くないね。せっかくだから料理方法を調べておこうかな。こういう料理を店で出したらお客の目を引くだろうしね」

「ホント⁉」


 ヒルダの言葉にさやはが然色めきだった。


「じゃあ、あたしが米料理を食べたいって言ったら、作ってくれる?」

「もちろん良いよ。こんな珍しい料理を仕事で作らせて貰えるなら願っても無いことだ。作るのはこの料理で良いのかい?」

「やった! うん、是非これもお願いしたいけど…… あ、そうだ!」


 大喜びのさやは更に良い事を思いついた。


「ヒルダ、この料理以外にも米をただ水で炊いて、この料理ぐらいの柔らかさにしただけのものを出してくれないかな? 時々でいいから……」

「ただ蒸しただけ? 味は付けなくていいのかい?」


 けげんな顔をするヒルダにさやは説明した。


「パンの代わりに食べてみたいんだよ。あ、いや、今回この料理を食べてみて、そんな風にして食べたらどうかなあと思ってさ」

「——まあ、確かに味を付けなければ他の料理と併せて食べても邪魔をしないだろうからね」


 ヒルダは少し考えてから笑って言った。


「分かった。何たって雇い主の希望だ。やってみるよ」


 さやは歓声を上げそうになるのを慌てて堪えた。

 あまり嬉しがったらヒルダに妙に思われるだろう。記憶は所々残っているということにはなっているが、気を付けるに越した事は無い。


 それでも白いご飯が食べられるかもしれないことが、さやは嬉しくてたまらなかった。

 しかもそうやって前世での生活に繋がる物を少しでも取り入れていけば、自我を取って代わられるんじゃないかと恐れているヨルンの記憶にも対抗出来るような気もするのだ。


「料理はいかがですか? ヒーラー様」


 さやが盛り上がりまくっていると、店主が席まで挨拶にやって来た。さやは笑顔で答える。


「どれも凄く美味しいです。あ、こちらの人は私の料理人なんですけど、彼女もこの米料理が気に入ったそうなんですよ。そうだよね、ヒルダ」


 さやはヒルダに話を振ったが、ヒルダの返事は無かった。興味を惹かれた料理の作り手が来たのだ。目の色を変えて質問攻めにするのが当然なのに、ヒルダはオーナーシェフを見もしない。


 ヒルダはポカンと口を開け、店の奥の方を見ていた。信じられないようなものを見た顔だ。


「サヤ、あれ……」


 そう呟きながら呆然とした顔でヒルダが指差す方向を見やったさやは、ギョッとした。


 店の奥に例の聖女様がいるのだ。隣にいる男はあのドラ息子だ。しかも明らかにそれっぽい雰囲気でじゃれ合っている。

明日も20時頃更新の予定です。


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