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18-どうやら姉がいるらしい

 買ってもらった服や日用品をしまうために、部屋へと一度戻った。

 宿の2階は昼間でも薄暗く、油紙を張った窓越しに淡い光が差し込んでいた。


 部屋に入るとルナリアが先に口を開いた。


「エレン、私たちとはぐれたときの話をしておこう」



 その声はいつもより真面目で、子供が迷子になった時の注意という軽いものではないと理解して、背筋を伸ばす。




「いい? もし私たちと連絡がつかなくなった場合、この街なら兎人族(ラピス)だけ知ってる隠れ家に行って」




 シルヴィアが頷きながら、今いる宿屋からのルートと建物の外観の特徴を説明してくれた。



「表向きは雑貨屋だけど」

「店員に『兎の人形を2つ買いに来た』と言うのよ」



 2人の視線がこちらに向いた。




「……兎の人形ですか?」

「うん。そしたら『色は?』って聞かれるから……」

「聞かれるから……?」




 肝心そうなところでルナリアの話が止まり、つい聞き返してしまう。



「私たちが死んでたら『銀と赤』、無事かどうかわからないなら『銀と黄』、ただ迷子になっただけなら『銀と青』で」


「……銀はルナリアとシルヴィアのこと?」

「そう」


 つまり次の色は2人の状態ということか。


「その……知り合いだって信じてもらえなかったら?」



 ルナリアの目がわずかに細くなった。



「そのときはその店員の顔をよく覚えておいて……耳とか髪色とか、話し方とか」



 声は静かだが、底に冷たいものがある。



「あとで私たちが――色々と確かめる」

(確かめる……?)


 何をどう確かめるのか、想像したくない。


「ルナリア、顔が怖いよー……ほら、次よ次」

「じゃあ……この街以外だと、確実なのは首都グランヴァルトね」



「……遠いですね」

「遠い。でも完全に連絡が取れなくなったら、グランヴァルトのセリオンという所にいる私たちのお姉様を頼って」



 ルナリアが懐から小さな紙片を取り出し、炭を削った細い芯でさらさらと文字を書き始めた。


 曲線が多くて跳ねが鋭い文字……見たことのない文字だったので、この国の文字かとも思ったが、街中で見た文字を思い返してみたが、そう言うわけでもないようだ。



「……読めません」

「他人に読めないようにしてあるのよ」



 ルナリアはその紙をシルヴィアに渡すと、彼女も同じ文字で一行を加え、最後に私が読める文字で名を書いた。



 ――ルナリア・アイゼン

 ――シルヴィア・アイゼン



「これを見せて。門で止められてもそれ見せて」


「突然、私なんかが行っても大丈夫なんですか?」



 首都グランヴァルトいうのは流石にわかるが、セリオンというのは地区の名前だろうか。

 大都市などは貴族が済む地域は厳重な門があり通行書が無いと一般人は入ることすら許されないところもある。


「絶対大丈夫」

「当然問題ない」


「「ヴァレリア姉様は、頼りになる」」


 2人の断言の仕方がいちいち重い……どれだけ信頼しているのかがよくわかった気がした。

 双子の姉――ヴァレリア……ヴァレリア・アイゼンという名前らしい。

 私はその名前を忘れないよう口の中で何度か呟き心に留めておく。


「すごい人なんですね」

「凄いというか、優しい」



 キリッと擬音が聞こえてきそうな表情でシルヴィアが即答した。

 お耳がぴんぴんに立っており、2人にとって自慢のお姉さんなんだろうと思うと嬉しくなる。



「魔獣の群れを1人で潰す」

「騎士団相手に戦闘訓練をしている」


「……?」


 優しいと評していたと思ったが、2人が続けた言葉が何かおかしかった。

 私の知っている『優しい』とは結びつかない。



「でも国王様への態度とかは怖いよね」


「国王……さま?」

「色々と依頼を受けてきた」


「えっと、それは国からのお仕事を受けているってことですか?」

「そう」



 2人の表情はいたって真面目で、当然の事実を語っているのだと思った。



「お姉様を敵に回したら終わりなのよね」

「味方なら、これ以上ない盾なのよ」


「手を出した相手は、終わるけどね」


 冗談に聞こえないが、頑張って人物像を想像しようとしてみた。

 豪快で、敵には容赦なく、国王に伝があり、妹に激甘。



(……どんな人なんだろう)



 ルナリアが名を入れた紙を畳み、こちらに差し出してきた。



「絶対なくさないで」



 私は受け取った紙を丁寧に折りたたみ、購入したばかりの油紙で包んでから胸当ての内側へと仕舞った。


次話→明日の7時頃に投稿予定です

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