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4 スキル

 人々に尋ねながら街中を行くうちに、俺の足はある建物の前に来ていた。教会だ。といっても、俺はそもそも無宗教だし、入信する気もない。


 ここで、スキルが手に入るのだ。神々に祈りを捧げることで、その力を授かるという胡散臭い話らしい。

 その真偽はともかく、俺はスキルが手に入ればそれでいい。


 俺はゆっくりと扉を開けて、中に入った。

 すると、こじんまりした聖堂が目に入る。


「ようこそいらっしゃいました。懺悔ですか?」


 修道服に身を包んだシスターさんが、俺のほうを見て微笑む。これまた可愛いもので、歳は十五くらいだろうか。しかも、体系がわかりにくい服の上からでも明らかなほどおっぱいが大きい。これを見ずにいられる男などいるものか。


「ええと、ここでスキルが手に入ると聞いたのですが」

「はい。ではこちらへどうぞ」


 促されて、俺は彼女のところへと行く。ステンドグラスから降り注ぐ光が、いかにも神々しさを演出している。

 けれど、やはりそんな雰囲気よりも、シスターさんのほうに目が行ってしまう。この幼さで、なんか事情があるのかなーとか。ま、大方製作者の趣味だろうけど。


 そんな俺の考えを知らない彼女は、にこやかなまま待っていてくれる。

 ともかく、いつまでもこうしているわけにもいかない。


「では、アルマの神々に祈りを捧げてください」

「作法とかよくわからないんですが」

「大丈夫ですよ。思いが伝わればいいのですから」


 そういうことなので、俺はとりあえず念じる。

 スキルくださいスキルくださいスキルください――


 途端、ウィンドウが開いた。


「はい、成功です。思いが通じましたね」


 それ、邪念ですけどね。

 俺はウィンドウに表示されている情報を確認する。まず、スキル名と必要ポイント、それから俺の所持しているスキルポイントだ。1レベルごとに10ずつもらえ、低位のスキルは必要ポイントが少ないため、多くのスキルを覚えることができる。


 AWOには職業はなく、スキルツリー形式でスキルを取っていくことになるため、低位のスキルならば色々な種類を取ることができる。しかし、だからといって半端に取るとなにもかも使えないキャラが出来上がってしまうため、決まった方針で伸ばしていくしかないだろう。


 それからスキルを確認する。まず、攻撃用スキルだ。これはある程度モーションが固定されてしまうものや、剣や槍の先から斬撃が出るような自由なものがある。しかし、今回は見送ることにする。というのも、死にスキルの可能性があるからだ。


 序盤と中盤、そして終盤になるにつれて、使うスキルというものはどんどん変わっていく。さらに、武器によっては制限もある。しかし一度使用したスキルポイントはもう振りなおすことはできない。基本的に、再振りは課金アイテムであるからだ。だから、終盤以降で活躍するためには、極力無駄遣いはできない。


 また、補助スキルも取れるが、これはパーティでの戦闘が前提になっているため、俺が取ることはない。HP回復程度ならば後々とってもいいかもしれないが、店売りのポーションが存在しており、値段も適切なため、ひとまずはそれで十分だろう。


 それからステータスを上乗せするスキルだ。これはHPなどを上げるものがある。こちらを取った場合、後々スキルポイントが足りなくなる可能性はあるが、無駄になることはない。

 ダメージ計算式の都合上、数値がインフレしすぎてあまり役に立たなくなることはあるが、基本的に攻撃力を上げる場合にはなんら問題はない。しかし、移動と防御に関しては注意が必要だ。


 というのも、インフレした結果、当たれば即死するため回避が中心になったり、スキルの範囲が広すぎて回避が難しく防御が必須になったりと、ゲームによってどちらが最適なビルドなのかがわかれるからだ。


 いずれにせよ、俺はひたすらソロでやっていくのだから、防御力を上げてもあまり意味はない。たとえ数発耐えたところで、致命的な状況になっているならば、囲まれていることを意味するからだ。

 ようするに、一対多になった時点で終わっているということである。


 俺は溜まった30のスキルポイントを使用して、スキルを取っていく。ウィンドウに次々と文字が走る。



 4ポイントを使用しました

 スキルを習得しました

 攻撃力強化1 攻撃+5

 

 8ポイントを使用しました

 スキルを習得しました

 攻撃力強化2 攻撃+10


 12ポイントを使用しました

 スキルを習得しました

 攻撃力強化3 攻撃+20


 

 これで24ポイントの使用となる。6ポイントが余っているが、必要ポイントが4ずつ増えていることから、次のレベルアップ時に取るためにためておくことにする。


「では、ありがとうございました」

「はい。では2万4000ゴールドの寄付をお願いします」

「……え。お金って、必要だったんですか!?」


 予選のときには、好き勝手に取れたはずだ。実際、システム上ではお金を使用することなく習得している。


「ええ、基本的にお願いしているのですが……」

「本当にすみません、今手持ちがなくて」

「では仕方がありませんね。初めてなのですから、今回は特別ということにしましょう」


 そう言ってシスターさんは微笑む。

 ああ、こういうところを見ていると、確かに聖女って感じがする。


「次からは、ちゃんと持ってきます」

「はい。お待ちしておりますね」


 彼女はやはり変わらぬ笑顔で答えた。

 俺は修道院を後にしながらも、いずれお金が貯まってきたら払おうと思うのだった。


 彼女は確かにNPCなのかもしれないし、踏み倒すことだってできるのかもしれないが、俺が彼女の厚意をありがたく思ったのは真実なのだから。


 それに、俺には彼女を倒すことなんてできやしない。カルマが悪に傾く行為だというのもあるが、なにより気分が悪い――。


 そういえばあの男、こちらに転送されたプレイヤーはカルマが善だって言っていたな。ならば、略奪されるNPCもいないかもしれない。

 なんとなく安堵しながら、俺は街を行く。


 そして西のポータルから第一エリアへと移動した。


 そこは、犬型のモンスターコボルトが多く、さらには中型のエリアボス、コボルトキングが湧きやすいということで、パーティでの狩りはしやすいらしい。


 しかし、だからといってレベルがすぐに上がっていることもないようだ。もちろん、武器を新調していないため外からはわからないだけの可能性もあるが。


 とにかく、こちらに来ているパーティが多いらしく、暇を持て余し気味だ。俺は彼らを横目に見ながら、一目散に駆けていく。そして数分と経たないうちに次のエリアポータルへ。


 そして第二エリア。先ほどのパーティが遅れ気味だったのか、それともあぶれたためしぶしぶこちらに来たのかはわからないが、いくつかのパーティが狩りをしていた。


 モンスターは緑色の肉体を持つ人型のモンスターゴブリンと、動く二枚貝ムービングシェルの二体だ。どちらもレベルは4から5で、今の俺にとっても適正である。


 パーティが使っていない場所にいるムービングシェルを見つけると、俺は思い切り掲げた剣を大上段から振り下ろした。


 剣は大きな音を立てて、二枚貝に衝突する。しかし、貝殻は割れてぐにゃぐにゃした中身が露出したものの、ダメージは与えていないようだ。


 おそらく、中身と貝殻は別の判定になっているのだろう。しかし、せっかく開けた穴だ。利用させてもらおうじゃないか。


 逆手に持った剣を突き刺す。確かな手ごたえがあった。



 獲得経験値 4.2

 次のレベルまで 478.5

 獲得アイテム Nシェルの欠片



 なかなかおいしい狩場じゃないか。いや、周囲を見る限りそうでもないのだが。どうやらこいつらの貝殻はかなり固いらしく、なかなか割れないようだ。スキルを使って、貝殻ごと敵を叩くものもいるようだが、通常攻撃では効いていない。


 しかし、今の俺の攻撃力は108もある。スキルで35、武器で68だから、先ほどの剣を手に入れることができたのが大きい。

 しかも素材アイテムが手に入った。売ればそこそこの金にはなるだろう。


 このまま狩りを続けたいところだが、人が多いため効率的に狩ることはできない。俺は第三エリアに続くポータルへと足を踏み入れた。


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