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11 市中


 格好よく立ち去ったものの、結局俺が行くところは、街の中だ。

 スキルポイントが貯まっているのだ。前回から4レベルも上がってレベル8になっていることもあって、新しいスキルもいくつか手に入ることだろう。


 俺はこれまで溜めこんだアイテムを売却してから、教会に赴く。あの失敗を二度と繰り返さないよう、しっかり残額も確認してある。10万ゴールドもあれば、十分だろう。


 俺は意気揚々と、教会の扉を開けた。そして中を見回す。

 今日も可愛らしいシスターさんがいた。相変わらず、おっぱいが大きい。


「こんにちは。今日もスキルの習得ですか?」

「ええ。お願いします」


 俺は彼女のところへと近づいていく。すると、シスターさんは悪戯っぽく微笑んだ。


「前の約束、覚えています?」


 それは密会のように、背徳的な甘美ささえ含まれているように感じられる。俺は心臓が跳ね上がるような心持ちで、けれどできるだけ表に出さないよう努めながら答える。


「もちろんです。忘れるわけありませんよ」


 あんな情けない姿を覚えていたのはともかく、彼女に覚えられていたことは純粋に嬉しい。なにしろ、ゲームによっては制作が追い付かなかったため、数パターンの台詞しか用意されていないこともあるのだ。運命的な出会いをしたはずが、次に話しかけたときには初めまして、と返されることだって少なくない。


 まあ、まだ時間的にはほとんど経っていないのだから、当然かもしれない。


 それにしても、このゲームはどこまで凝っているのだろう。これほど高度な人工知能を全NPC分用意するとなると、かなりのマシンパワーが必要になる。サーバ代もばかにならないだろうし、あまり収益に繋がる部分でもない。


「どうかなさいました?」

「いえ、では始めますね」


 小首を傾げるシスターさんに答えてから、俺は祈りを捧げようとする。

 が、片膝をつくと、丁度シスターさんのおっぱいが、俺の目の前に来た。


 うーん、やはり大きい。これから成長したら一体どうなるんだろうか。想像もつかない。実に楽しみである。


 と、そんなことを考えていたにもかかわらず、俺の前にはスキル習得ウィンドウが開いていた。


 これ、祈る必要なかったんじゃないか。とりあえずポーズさえ取っておけば、モーションを認識して起動するとか。


 俺のスキルポイントは46残っている。このまま攻撃力強化を取り続けてもいいのだが、武器の攻撃力が高いため、あまり大きな差にならなくなってきた。もちろん、こちらの攻撃力と相手の防御力が近い場合には、そのわずかな差が生きてくることにはなるのだが。


 しかし、これからPvPが待っている。そのとき、スキルなしで切り抜けるのは、少々難しいだろう。強力な一撃を持たない相手とわかれば、一気呵成に攻め立ててくるのは間違いない。


 そのため、スキルをどのようにして取っていくかを考える。まず、支援系のスキルは論外として、メインとして使っていくものを考える。ゲームバランスが最悪ということはないだろうから、どれもそこそこには使えるだろう。


 ステータスにあるように、スキルも攻撃、防御、移動の三つに大別することができる。

 攻撃はしっかり当たればダメージが期待できる物理攻撃、当たり方に依存しない魔法攻撃に分けられる。そして剣や槍などが使える近距離、弓やスリングなどで使える遠距離攻撃などに分類できる。


 もっとも職業のシステムではなく、自由にスキルを取ることができるため、どの武器だろうがほとんどのスキルが使えることになる。自由度も高い分、組み合わせをミスったら致命的でもああった。


 ひとまず、遠距離や魔法系はおいておくことにする。旧時代的なMMOでは、ターゲット式でスキルが必中するようなものもあったが、VRMMOでは駆逐されてしまった。自由度をわざわざ減らす必要がないからだ。


 そんなわけで遠距離からちまちまやるメリットもなく、ソロでは基本的に敵の攻撃をすべて回避しながら、モーション補正による大ダメージを狙っていくのが基本になる。


 防御に関しても、ソロでは不要だろう。盾を持つ分、撲滅力を上げた方がいい。通常武器でも使用できるスキルもあるが、どうしても回避できず防がなければならない状況は、まだまだあとの話だろう。


 そうなると、移動と攻撃スキルで悩むことになる。ひとまずPvPでは相手に囲まれて集中砲火を浴びることを避けられればいい。


 俺は移動系のスキルツリーを眺めていく。

 どんな体勢からでも回避できる「ステップ」、空中でも移動できる「エアリアルステップ」が欲しいところだ。


 レベルを上げれば再使用までのクールタイムが短くなるが、そこまで頻繁に使うことはないだろう。最低限でいい。


 攻撃のスキルツリーを見てから、軽く計算。両方を取るには足りないものの、後でレベルを上げてまかなうことにした。スキルウィンドウをタッチしていく。



 4ポイント使用しました

 スキルを習得しました

 移動力強化1 移動+5


 8ポイント使用しました

 スキルを習得しました

 移動力強化2 移動+10


 12ポイント使用しました

 スキルを習得しました

 移動力強化3 移動+20



 これで「ステップ」の前提条件は達成だ。いよいよ、取っていくことになる。


 4ポイント使用しました

 スキルを習得しました

 ステップ1


 8ポイント使用しました

 スキルを習得しました

 ステップ2


 8ポイント使用しました

 スキルを習得しました

 エアリアルステップ1



 スキルごとに習得難易度があり、それにより必要スキルポイントが決まっているようだ。エアリアルステップは難易度が2なので、倍必要になるのだろう。


 さて、これでスキルポイントの残高は2になった。

 ひとまずできることはなくなったので、再びクエストの達成と狩りに赴くことにする。ウィンドウ越しに見えるシスターさんのおっぱいが見られなくなるのは名残惜しいが、仕方ない。またレベルを上げてから来ることにした。


「ええと、お代のほうは」

「4万4000ゴールド寄付していただければと思います」

「わかりました。……また来ますね」

「お待ちしております」


 にっこりと微笑むシスターさん。そんな彼女を見ながら、頑張ろう、と俺は思うのだった。



    †



 西のポータルから出て、第三エリアまで俺は一気に駆け抜けた。移動力が色々と強化されているため、前より時間がかからなくなっている。


 そして、今手にしているのは剣ではなく弓だ。ハウンドソードとブラックコートを併用するより、こちらだけを装備したのほうが移動力は上になる。


 なにより、試し打ちもしてみたい。


 西の第二エリアはすっかり飽和しており、第三エリアまで足を延ばしたパーティも少なくないようだ。しかし、まだまだ効率的とはいいがたいのだろう。


 俺はまだ狩られていないグリーンタートルに向けて弓を構える。そして矢を番えるモーションと同時に矢が生成された。


 弓を引くと、音もなく放たれた矢が敵目がけて飛んでいく。甲羅に命中すると、クリティカルのエフェクトとともにひびが入って中身が見えるようになる。続けて同じ場所にもう一発。


 まだ右往左往しているグリーンタートルは、回避することができずに直撃を受けた。すると、すぐさま消えていく。どうやらこの破魔弓は、思った通り現状ではかなり攻撃力が高いらしい。



 獲得経験値 4.2

 次のレベルまで 747

 獲得アイテム N亀の甲羅の欠片



 前のときと比べると、適正レベルになったため、かなりうまくなっている。他パーティの存在はあるが、おそらく東のエリアでトレントを狩るよりは効率がいいだろう。向こうは少々硬すぎる。


 この調子で狩り続けられればいいが、そうそうクリティカルは発生しないだろう。別のグリーンタートルを見つけるなり矢を放つも、やはり割れはしない。もう一発ぶち込んでみようとするも、亀はのろのろと動き出し、思ったところに当たりはしない。


 矢のモーション補正としては、距離の遠近がある。至近距離から当てたほうが効果は高いのだ。しかし、実際にはあまり考慮されていないといってもいい。なにしろ、接近するなら剣のほうが使い勝手はいいのだから。


 そんなことを思いながら、俺は矢を番えたまま、こちらに向かってくるグリーンタートル目がけて駆けていく。そして接触する寸前、亀の頭が甲羅が出始めた瞬間を狙って矢をぶち込む。


 たったの一撃でグリーンタートルは消滅する。これならば危険はあるが、効率は非常に高い。

 このまま狩りを続けようかとも思うが、すでに日は傾き始めている。沼地の街で受けたクエストを先に終わらせるべきだろう。


 ふと、ここでスキルを使いながら行けば早いのではないかと思い立ち、「ステップ」を使用。初動無しで一気に加速し、大股二歩分程度の距離を駆ける。


 予想通り、大した移動距離はない。長距離移動用のスキルは別にあるからだ。

 クールタイムは8秒、使用MPは12。緊急時以外には使えそうもない。まして、一度使えば相手がクールタイム中なのを見越して行動するだろう。


 ゲーム内スキルよりプレイヤースキル主体のVRMMOならこんなものだろう。


 それから俺は予定通りmobを狩り続け、沼地の街へと足を踏み入れたのだった。



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