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第8話 甘未で仲直り


僕はどうにかクセ強めだが間違い無く優秀であるメイドさん(変態)をブレインに添え、早速どうすれば唯香お嬢様と仲良くなれるか作戦会議を始める。


ここは『ナユタ立ち入り禁止ダメ絶対』とドアに貼り紙のされた僕の部屋だ。


そんなプライベートルームの中央に僕とナユタが机を挟んで座り込み、2人切りの作戦会議が始まろうとしていた。ちょっと、ちょっとだけ待ってほしい。目のやり場に困る。何だその今にも乳房が溢れてしまいそうな100人中99人の思春期男子高校生が鼻血を吹いてぶっ倒れそうな防具は。そのエプロンで何からの被弾を防ぐつもりなのか?


「先ず第一に、ナユタ…さっさといつものメイド服に着替えて来てね!?」


「はぁ~い! わかりました幸守様ぁ~!」


やけに素直じゃないか。不気味だ。


「普段のメイド服にだからね!?」


「はい! お任せください幸守様ぁ〜! 幸守様がナユタの生着替えを御所望とあらば、ナユタはいつでもどこでも脱ぎ散らかす覚悟はできています! 今! なのですね!」


「へ?」


とりあえず待ての合図を出すべきか。


「一糸纏わぬ姿はもう少しお待ちください。メイドの生命であるこのカチューシャを外すわけにはいきませんが、エプロン1つ脱ぎ捨てることに最早何の抵抗もありません!」


裸族?


「着替えて来てねって言ったよね!?」


「ご安心ください幸守様! 幸守様がメイドの生着替えを御所望になる可能性を考慮し、こんなこともあろうかと、幸守様の部屋のクローゼットの中にナユタは予備のメイド服を仕込んでおきました!」


「ナユタ立ち入り禁止という貼り紙に何の効力も無いことは理解したよ。無駄だったし廃止しよ!」


「さあ、どうかこの幸守様に捧げるいやらしい女体を舐め回すように見てください! そして、そのまま舐め回して、押し倒して、しゃぶりついてください!」


僕は頑張って目を瞑った。目を瞑ったくらいではナユタに強引に開閉されてしまう可能性があるので、僕は男子高校生が持て余す性欲に抗って地震とナユタ対策のダンゴムシポーズを決めて鉄壁の守りを披露する。


致し方無い。この手は使いたくないが…。


「もういいから、早く着替えなさい! これは命令だよナユタ…」


「……命令!…あっ、ゾクゾクします。幸守様に支配されていると思うと、胸が高鳴って発情してしまいそうです。はい。幸守様の命令とあらば、メイド服に着替えましょう! 半脱ぎモードは適用されますか!?」


「きっちり露出0でお願い…いや、命令します。きっちりと着なさい!…半脱ぎモードはまた別の機会にお願いします!」


とでも言っとけば今日の僕は助かる。明日の僕のことなど知ったことではない。明日は明日の水城院 幸守が何とかしろ。


「承知しました幸守様ぁ〜! 8段階あるナユタの着崩しはカミングスーンなのです!」


まだ8回の色仕掛けを残しているということなのか。そうかそうか興味深い。頑張って理性で耐えてくれ明日以降の僕。問題を先送りにした今日の僕を呪うといいさ。


こうして僕はようやくメイドのナユタを義妹との仲直り作戦会議に参加させることに成功したわけだが、義妹と仲直りするのと、ナユタからの色仕掛けアプローチを躱し切るのとではどちらの難易度が高いだろうか。


これはあれか。借金を借金して返すみたいな泥沼に足を突っ込んでいないか。どちらにせよ人生ハードモードは継続中だね。


嗚呼。もう。何とかなれ〜。



作戦会議が始まった。僕は女の子の心を掴む術を知らないので、こう見えても分類学上女の子にカテゴライズされているナユタに女の子と仲良くなるにはどうすべきか尋ねてみる。


それがいけなかったと言われれば、じゃあどうしたらよかったんだとブチギレても良いところだろうと思う。温厚な僕でなければ、ブチギレてとりあえずナユタを押し倒していたところだろう。


「ふふふ、抱けばいいと思いま~す!」


「うん。そうだね。君はそうだね。よくわかったよ。ナユタさん帰っていいよ。全くもってこれっぽっちも参考にならないよ。お帰りはあちらになります!」


知りたいのはナユタの攻略法ではない。


攻略しなくても、座して待つだけでこちらが攻略されるのは時間の問題であろうことは誰が見ても明らかだろう。ちなみに言えば、知りたいのは女の子と仲良くなる方法だ。女の子をやり込める手段ではない。断じて否である。


僕が唯香お嬢様を抱き締めたら最早それはただの痴漢行為だ。常識的に考えて余裕で逮捕されちゃうからね。恩師である源治郎さんに迷惑をかける行いは全面的にアウトだ。


やはり、相談相手を間違えたか?


「女の子が出会って間もない男性にされて嬉しい無難な事って…何だろう?…」


「それは当然、夜這いですね~!」


「僕が真に受けたらどうするの? いや、真に受けたりはしないけれど、ナユタはつい先日会ったばかりの、好感度低めの男に夜這いを仕掛けられたら嬉しいの?」


「愚問ですね幸守様! 髪の毛一本触れさせませんね! ナユタの身体は足のつま先から頭のメイドカチューシャまで全身くまなく幸守様の所有物ですから!」


メイドカチューシャが全身に含まれている理由がわからないが、とりあえず前提の相手が僕で自分がされて嬉しいことを言うのはやめようか。普通の女の子が喜びそうな事を聞きたいんだ。やっぱり相談相手を間違えたか?


「ナユタは、ナユタのものだよ…」


ナユタは好きに生きていいんだ。


いいや、もう好き勝手に生きているか?


「いいえ! 幸守様のものは幸守様のもの! ナユタのものは幸守様のものですから〜!」


壊れたジャイアニズムを感じる発言だ。


愛が重い。とはいえ、ヤバい子だとしてもナユタ程の美少女にここまで思われて悪い気はしないけれど、その思いを受け入れてしまえば僕は幸せになってしまうだろう…。


それは、僕の望みではないから…。


手を伸ばすわけにはいかない。


少なくとも…今はまだ…。


ごめんね。


無難に僕のアイデアをナユタに伝える。


「やっぱりここはプレゼントとか?」


「プレゼントですか~」


我ながら何のユーモアも無い普通の思考回路だと自負している。何度も言うが僕は女の子と仲良くなる方法など知っちゃいない。残念ながら、そんな勉強はして来なかった。


「幸守様のような素敵な雄からのプレゼントなら、その髪の毛1本でも至福かと! ナユタもたまには直に収集したいところです!」


「抜け落ちたのを拾って部屋に飾っていないよね? 流石の僕も引いちゃうよ??」


特殊性癖を暴露しないでもらいたい。それ言ってるのは世界中でナユタだけだから参考にならないんだよ。というか、ナユタは僕の髪の毛を何に使うの?


「どうせならぁ〜…」


メイドさんの視線が下半身へと移動する。


「もういいから帰ってくれるかな? 帰ってくれと言われてからが本当の交渉だよって顔しないでいいから、そんな交渉とかする気全く無いからさ!」


「等価交換です幸守様! ナユタの下の毛と物々交換と洒落込みましょ〜!」


「スカートをたくし上げるな!? 待て! よしよし、そのまま待てだよナユタ。もういいからそこを動くなよ〜! そんな事より、その灰色の頭脳で何か良いアイデアを出してくれる!? 頼りにしているんだからさ!」


御主人様に頼りにされると俄然やる気が出るタイプのメイドさんは瞑想するように座禅を組み、お困りの僕が2秒で唸るナイスアイデアを閃く事に全力を注いだ。全集中だ。何やら肉体から無駄にオーラが発せられている。ような気がする。いや、気のせいかも…。


「ご褒美は下の毛、ご褒美は下の毛、ご褒美は下の毛……えへへ~、下の毛5本…」


後ろから肩を引っ叩き、活を入れてやりたい気分だが、ようやく協力してくれる気にはなったようなので一先ずは良しとしよう。いや、ほっといても良いとは思えない瞑想なのだけれど? 後々僕はナユタに押し倒されて毟られるのでしょうか?


いいや、ナユタが勝手に言っているだけだから知ったことではない。ご褒美は、僕なりのものを用意する。それは決して不健全なものではなく健全なものを贈るつもりだ。


「ちゃららら〜ん!」


突如謎の効果音を発しながらナユタが胸元から何かを取り出す。何でそんなところからというツッコミはこの際やめておこう。


「これなんかどうでしょうか幸守様ぁ〜!」


取り出したのは何かのチケットだ。受け取ることに抵抗を感じながらも、まだ僅かに生暖かいそれを受け取り、内容を確認する。


どこかのパフェが美味しいお店で使える何でも一品無料券、5人分と書いてある。彼女がどうしてこんなものを持ち合わせていたかは知らないが、スイーツが嫌いな女の子はそう居ないと昔新園さんも言っていた気がするし、確かにこれならば唯香お嬢様に見向きもされないなんてことはないかもしれない。


初めからこういう、何か行けそうな気がする案が欲しかった。


「甘味で仲直りというわけだね。5人分だし僕と唯香お嬢様とナユタと…後は、適当に数を合わせて…」


「いえいえ、幸守様からの口移しや幸守様に召し上がってもらう女体盛りには興味が尽きませんが、ナユタにはメイドさんとしてのお仕事がありますので御一緒はできません!」


「…そ、そっか………」


前半はともかく、後半は少しばかり申し訳無い気持ちになる。ナユタにばかり働かせて自分は甘味処でパフェを頂くのか? 彼女は自ら望んでお屋敷の使用人になった。とは言っても休み無く働くのも身体に悪いだろうし、源治郎さんに、たまには休みを貰えないか掛け合ってみようかな…。


「大丈夫です幸守様ぁ! ナユタの女体盛りはまた後日、必ず召し上がってもらいますので期待していてください!」


気を遣われたのか本気なのかわからないが、たぶんどちらもだろう。できれば唯香お嬢様とナユタにも仲良くなってもらいたいところなのだけれど、そうだね。一旦、僕の名誉挽回が先かもしれない。


「女体盛りは食べません! でも、このチケットは有り難く貰おうかな…」


「そんな辛辣な幸守様も素敵ですぅ〜!」


目が曇り過ぎていないか。ナユタの色眼鏡にも困ったものだが、協力してくれたことには素直に感謝しよう。ナユタのためにも、しっかりと親睦を深めなければ!


よし、決行は明日だ。


甘味で仲直り大作戦を開始する!




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