↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水明恋歌  作者: 時夜
7/65

第6話 クラスメート


登校中は自分を弾除けに使うと良いと言われ、この街に来てから初っ端ひったくりに遭遇した経験もあり、渋々居候の男と共に初登校した唯香ではあったが、できることならば必要以上に義兄と一緒には居たくない。


そもそも義兄というのもおかしな話だ。祖父の養子だと言うのであれば、あの男は義兄ではなく叔父ということになるのではないだろうか?


くだらない。あんな男のことはどうでもいい。


2年生たちから勝手に離れた唯香は、生徒が集まっている大きく張り出されたクラス分け表の前までやって来た。


新入生の欄にあるはずの自分の名前を探す唯香。クラスはA組からF組まであり1クラス40人程のようだ。単純計算で全校生徒数720人。富裕層の通う学園だけあり、大学のキャンパスみたいな広さの敷地を有している鳥羽園学園だが、生徒数はそう多くもない気がする。


鳥羽園学園には中等部もあるため敷地は半々ということなのだろうが。だとしても土地が有り余る程の広い学園だ。


「…あった」


生徒たちの話し声の中で小さく呟いて唯香は自分のクラスを口に出して確認する。


「Cクラスね…」

「Cクラスです…」


隣に居た自分よりも僅かに背の低い女生徒が合わせたかのように同じ言葉を口にしたため、唯香は反射でそちらを振り向いてしまう。


「ひゃう! あ、あのあの… クラスメートさんですね? よろしくお願いします!」


緊張のせいか軽く涙目になっている女の子。可愛らしい顔をしている。同性の私でも、守ってあげたくなってしまう程、愛くるしい仕草の少女だ。長い銀色の髪が春風で揺れている。肌も色白でとても綺麗。如何にも箱入りのお嬢様といった女の子。


馴れ馴れしくしないでと言って遠ざけるのは簡単だ。この街に来てからの私には、正直余裕というものが無かった。けれども、せっかく祖父の住むこの街に来たからには高校生活を楽しいものにしたいと思っている。


性格が嫌な子とは仲良くしたくない。


この子は…。


見た目しか判断材料が無いけれど、少なくとも先の先輩方より遥かに育ちが良さそうだ。話せる相手が1人も居ない環境というのも不安だし、ここはとりあえず愛想良くしておこうと思う。


「唯香よ。よろしくね。クラスメートさん」


「はい! 白沢 和奏と申します! よろしくお願いします!」


思わず見惚れてしまうような天使のような笑顔だった。とてつもなく眩しい。男子生徒から人気の出そうな美少女だ。



互いに自己紹介を済ませて水城院 唯香と、たまたま隣り合わせていたクラスメートの女の子、白沢 和奏は振り分けられた教室へと足を運んだ。


「驚きました! 水城院って聞いたことあります! ということは、唯香さんは凄くお金持ちさんなんですね!」


貴女もそうでしょう? この学園に通えているのだから。というツッコミは必要だろうか?


この街に来るまで、自分は貧しい一般庶民として育ったのだ。お金持ちさんだったのは祖父で、私の両親は至って普通の人たち。父も母も容姿だけは良かったけれど、特別仕事ができる感じでもなかった。


お金持ちさんと言われてもピンと来ない。


金づるだと思われただろうか? 警戒してみるけれど、天使のような笑みを浮かべているクラスメートさんに裏があるとは思えない。


裏表のある人間の見分けにはそこそこ自信がある。水城院家の幸守、ナユタ、学園での先輩ということになっている新園という女生徒の3名は裏も表を使い分けるタイプだ。


対してこの子や、テルと呼ばれていた頭の軽そうな先輩は常に素の自分を出しているタイプだろう。マサと呼ばれていた眠たそうな先輩は判断がつかなかったけれど、水城院 幸守と仲良くしている連中にろくな人は居ないだろうから仲良くする予定なんて無い。


友達は自分で決めるし、自分で作るわ!


「唯香でいいわよ。お嬢様とは呼ばないでね。私にそんな自覚は無いし、お金持ちなのは私じゃなくて祖父なんだから、私はただの女子校生よ!」


「はい! ふふっ、そうですね。唯香はお嬢様って感じはしないです。う~ん…ユイって呼ばせていただいてもいいですか?」


水城院家のお嬢様だから敬語を使っているといった感じではなさそうだが、誰に対しても彼女はこうなのだろうか?


「ダメよ!」

「だ、ダメですか…」


「友達に、敬語を使うような子は嫌。だから、敬語を使うのは無しなんだからね」


「私、敬語なんて使ってないですよ?」


どうやら自覚が無いようだ。


「え〜、もっとラフに来てくれないと…」


「もう、ユイはわがままさんですね。やっぱりお嬢様みたいです。でも、もしよかったら仲良くしてくださいね。ユイ!」


「こちらこそ。よろしくね和奏」


つられて笑ってしまった。


嗚呼、笑えた。


この街に来て私は…。


初めて笑顔を見せた気がした。


彼女の名前は白沢 和奏。自分の方がよっぽどお嬢様な見た目をしている。そこそこ人見知りするタイプなのかな。慣れてしまえば直ぐに打ち解けてくる人懐っこい性格の女の子にも見える。


ともあれ彼女は、この街で私が1番最初に笑顔で対話できた女の子だ。クラスメートとして、友人として仲良くできたら良いな…。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。