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第64話 球技大会MVP


「えー! コホン! それでは、球技大会での水城院家兄妹ダブルMVPと、尚川 照明こと俺様の大活躍をしゅ……」


「「かんぱーい!!」」

「うぉい!? まだ言い終わってねえだろ!」


それぞれ飲み物を注がれたコップを片手にカチーンと打ち合わせ、水城院家の広々とした庭にて何でもいいから理由をつけては開かれることが恒例となった打ち上げが行われている。今回はバーベキューパーティーらしい。


本当にやめてほしい。源治郎さんが甘やかすからって毎度毎度、源治郎さんに頼るのだけは本当にやめてほしい。最早、源治郎さんから、早くそのお友達との縁を切りなさい。たかられているぞ幸守。良くない友人だ。くらいのお言葉を頂きたい。縁を切るから!


「ま、まあ…別に…幸兄と私が祝われているわけだし…お祖父様も兄妹揃って球技大会のMVPに選ばれたこと自体はとても喜んでくれていたし……いいけどね…」


「MVPおめでとうですユイ!」

「「おめでとう私たちのエース!」」


「べ、べべ、別に、嬉しくなんか…」


確かに、唯香の言う通り、祝われているのは僕たちだし、友達少なめで心配していた僕の義妹がクラスメートの女子たちに囲まれてチヤホヤされて嬉しそうなので今回は悪友たちの愚行に目を瞑ってもいいのかもしれない。


ただし、仏の顔も3度までだ。次は無いぞ。確実にその臓器を潰す。どことは言わないがバカ騒ぎできないように潰すからね?


「梶原先輩! 球技大会見てました! 縁の下の力持ちというか、鉄壁の守備というか、ご活躍とても格好良かったです!」


「⋯そうか。どうも……」


唯香のクラスメートと思われる見知らぬ女性が将隆君にアタックしている! これは僕でもはっきりとわかるよ。やっぱり将隆君は見る人から見ると格好良いんだろうな〜。


うんうん。打ち上げも悪くないかもね。


「むぅ〜…ユイ! 私ちょっと梶原先輩のところに行ってきます!」


「え? ええ………え??…」


和奏ちゃんがコーラのボトルを抱えて将隆君とクラスメートの女子のもとまで、てちてちと歩いて行く。


「お疲れ様です梶原先輩! コーラをお注ぎします!」


「ああ…ありがとう……」

「おかわりもたくさんあります!」


「あ、ああ…もらう……」

「まだまだあります!」


「あ、ああ…おいしいな……」

「ボトルのおかわり持ってきました!」


何だかよくわからないけれど、将隆君が和奏ちゃんに変な感じに絡まれている。そうしている間に、将隆君に話しかけて来た唯香のクラスメートの女子がそそくさと退散する。


相手が悪いと思ったのだろう。


「……………むぅ〜………」


「ふっ、大丈夫だ…いつでも話しかけてくれて構わない…気軽に話せる先輩が取られると思ったのだろ?」


「そ、それはそのっ!………はい…」


「彼女には悪いが、俺だって、話す相手は選んでいるつもりだ。誰とでもお喋りしたいとは思っていない…だから安心しろ…」


「………私とは…いつでもお喋りしてくれますか?……」


「ああ…白沢なら構わない…」


「……えへへ〜。お、お注ぎします!」

「えっ…あ、ああ………ケプッ…」


何だかんだで将隆君は和奏ちゃんの好感度を要所要所でしっかり稼いでいるように見えるのは僕だけなのだろうか? これはもう押せば倒れるんじゃないかとも思うけれど、何故だろう。それはそれでモヤモヤする。



「……まあ、悪くない相手かもね…」


いつの間にかクラスメートの女子たちの輪を離れて、紙コップを片手に僕の隣まで来ていた唯香が将隆君たちを見詰めながら呟く。これは、僕に話しかけています。よね?


最近やや不機嫌だったので、唯香から話しかけて来たことが少し意外だった。


「悪くない相手って?…」


「そのままの意味よ。誰かさんと違って他の女の子に鼻の下を伸ばしたりしなさそうだし。梶原先輩、彼女を作ったら浮気とかしたりしないでしょ?」


「あのマサが浮気? 無いだろうね!」

「幸兄、梶原先輩の評価高いわよね…」


彼は普通に格好良いと思います!


「………え!? そ、それって…和奏ちゃんとマサが両想いってこと?…」


「さあ? 幸兄と同じで、和奏に凄く良くしてくれるし、和奏の苦手な高圧的な男の子でもないから、少し気になり出してはいそうだけど、和奏が好きなのはおそらく……」


そんなジトッとした目で見詰められても。


「……僕にどうしろと?…」


「……どうもしないでよ…」


「……………………………」


「でも、和奏をぞんざいに扱ったら私、いくら幸兄でも許さないんだからね!?」


本当に僕にどうしろと?


「ぜっ、善処します…」


全対応しますとは口が裂けても言えなかったので努力はするで許してほしい。そもそも、恋愛素人の僕が、この問題を全対応できるわけがないんだよなぁ〜。


い、いけない! 僕も僕で今日は唯香に言わなくちゃならないことがあったんだ!


今が好機なんじゃないのでしょうか?


「唯香! 明日デートしませんか!?」

「は? 無理よ? 明日は和奏とデートだし」


「………あっ……はい…………」


凄い呆気なく撃沈なんだけど!?


何これ凄く心が痛い。僕が交際をお断りして来た女の子たちもこんなダメージ受けていたんだとしたら洒落にならない。付き合ってください。せめて1度デートしてくださいと言われたのを丁重にはお断りして来たつもりだったけど、もっと丁重にしなくては!


アフターケアも込みでどうお断りするかを考えなければ、このダメージはそう簡単には癒せるものではないだろう!


勉強になった。


「……私と…デートしたいの?………」

「そうだけど、和奏ちゃんには勝てない…」


和奏ちゃんは唯香の親友だから!


「…ぷっ! あははははは! 明日いきなりデートって、それでOKできる女の子そう多くはないわよ! もっと早く言ってくれたら予定を空けておいたのに…」


「早くと言われても思いついたの昨日なので僕の中では最速だったんだけどね…」


唯香の顔が急に赤くなる。


「そっ、そうなの?…ふ〜ん。どうせ、名案を思いついた! とか言ってあのメイドにも声をかけたんでしょ?」


何故バレる!? サイキッカー唯香さん?


「そうしようとしたら、そこは2人切りで行ってナユタとは後日にしろって、そこでバーベキューを1番楽しんでいる金髪のお猿が言ってたよ。頭をね…叩かれたよ…」


「珍しくお猿が正しいわよ…」


そうか。じゃあ仕方無い。お猿が正しいなら反撃しなくて良かったと思うよ。


「明日はメイドとデート?」


「え? 先に唯香と…かな?…」


「……私が先でいいの?」


「……何で? 不味いの?」


「不味くはないし、もしもこの後、明日メイドを誘うことにするって言われたら…和奏には悪いけれど、和奏とのデートはキャンセルをお願いして来るところよ…」


「何で!? それは良くないよ!? 友達は大切にしないとだよ!」


お猿や小悪魔ならいざ知らず、天使が友達なんてそんなの一生大切にしないとだよ!


「幸兄って本当にバカね! 頭良いのにどうしてそういうところがお猿以下なのかしら?」


心に未だかつて無い程のダメージを受けた。


「ゆ、唯香さん!? 言い過ぎでは??」

「本当のことだもの。仕方無いわ…」


心に未だかつて無い程の最大ダメージを受けた。幸守君の歴史的記録がこの程度のことで容易に更新されるとは思わなかった。


何て破壊力なのだろう。


「うっ、恋愛強者になれるよう善処しようと思います。生まれて来てすみません…」


「どんだけダメージ受けてるのよ。バーカ」


「…それで…えっと、いつなら?……」


「来週の土曜日! 和奏を蔑ろにはしない私の最速。ご不満かしら?…」


「ありがとう唯香! 楽しみにしとくよ!」

「………こ、こっちのセリフよ…バカ…」


「唯香! コーラをお注ぎします!」

「和奏の真似してんじゃないわよ!?」


腹を抱えて笑う唯香を久々に見て、僕はほっとする。猛アピールをされるのはそれはそれで心臓に悪かったけれど、いざ唯香に迫られないとそれはそれで不安になる。僕ってやつは凄くわがままなのだろうか?


「幸守様ぁ〜!!」

「出たわねメイド! 接待しなさいよ!」


「ですのでこちらに参上致しました! ナユタはメイドに非ず。ナユタは幸守様専用コンバットメイドなのです! さあ、幸守様ぁ〜! こちらの精力剤たっぷり特性コーラでシュワシュワってやっちゃって、ナユタもついでにヤっちゃってください〜!」


ナユタはいつも元気だなぁ〜。最早この変わらぬ笑顔に安心するよ。言ってることとやってることは相変わらず変態だけどね。


「公衆の面前で何言ってんのよ変態!」


「幸守様にこれ以上変な虫が付かぬようにするのです! 学園でのその役目は、唯香様が果たすはずだったと言うのにこの体たらくですからね〜! やはり、ここはナユタが一肌脱ぐしかありません!! 幸守様のベッドで!」


「脱ぐな変態! というか、私まで変人扱いされるから本当にやめてよね! 幸兄何とかしなさいよアンタのメイドでしょ!?」


いや、違うけど。


源治郎さんが雇っているメイドだけど?


「ナユタ…いつもありがとう!…」


僕はそう言って緑髪のメイドさんから精力剤入りコーラを受け取り笑顔で地に撒いた。きっと栄養たっぷりなんだろうな〜。


ダバダバダバダバ。しゅわわわわー。


「ああぁ〜ん!! はぁ、はぁ、はぁ…幸守様に辛辣に扱われるこの快感。唯香様がこの域に到達するのは来世になることでしょう…」


「本当に何とかならないこのメイド?…」

「僕に制御できる子じゃないんだよ…」


知ってるでしょ? だから、諦めて。


今日は悪くない1日だ。


また唯香と気兼ね無く話ができるようになったし、唯香も2人切りのデートを楽しみにしてくれている。僕もそろそろはっきりと、唯香への好きがライクかラブか答えを出さなければならないだろうからね。


ちなみに、どこからがラブで、どこまでがライクなのだろう? 基準とかあるのですか?


変わることのない絶対評価の基準が欲しい。


それをお持ちの方は、是非とも僕のもとまで持って来てもらいたい。言い値では買わないけどね。デート代も馬鹿にならないからね。




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