【幕間】 彼側の事情
短い内容です。読み飛ばしていただいても問題ありません。
「あれはきっと誤解されたなあ……」
クロイツ領へ向かう馬車の中、アルウィンは前日にあったクロイツ家での執務室のやり取りを思い返していた。
クロイツ家の次期当主について、自分は意見を言える立場ではない。騎士としての仕事もあるし伯爵位も持っているので、極端な事を言ってしまうとアルウィンはクロイツ家の爵位が欲しかったわけではなかった。
半年ほど前、セレスティナとアルウィンとの正式な婚約が成されない事で、何かがあると勘繰ってきたクロイツ家の分家筋の者たちが、次期侯爵位とセレスティナを欲しいと言ってきたのが始まりだった。
セレスティナを渡したくなかったアルウィンと、気性の荒い彼女の従兄弟を婿にしたくないと思った侯爵夫妻との考えが一致したので、当主教育を受けてきた自分がクロイツ家を継ぐのだと、クロイツ家の面々が揃った話し合いで宣言をする事になったのだ。
執務室で話した時は、できるだけ彼女にはショックを与えたくなかったから、穏便に自分の考えを伝えたつもりだったが、クロイツ家の後継の話と同時に彼女との結婚の話まで出てしまった事から緊張してしまい、口調までが堅くなってしまった。
話が終わった後も彼女が不信そうな目で自分を見るので、アルウィンは何も言えずに、本来の自分の実家であるヴェルス家へ帰るしかなかった。
「……はあ」
馬車の中には自分ひとりしかいないので、アルウィンは大きくため息を吐きながら、王都からもほど近いクロイツ領の屋敷へ向かうのだった。
アルウィンの願いが叶いそうな気配は、まだ見えなかった。




