【続編 第11話]列車の魔物
【予測変・第11話】列車の魔物
「さあ、皆さん……乗りましょう」
千春の合図で、一行は蒸気を吐き出す鋼鉄の巨体へと足を踏み入れた。
「すげーな……本物の汽車、初めて乗るよ!」
ちくが興奮気味に車内を見渡す。すると隣でケメ子が意外な告白をした。
「……私は何度か、乗ったことあるわよ」
「えっ!? ケメ子、あんた何者だよ!」
驚くちくを余所に、千春の表情はかつてないほど険しい。
「皆さん……静かに。この客車の乗客は、すべて人間に化けた『鬼』たちです。決して油断しないでください」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、一人の乗客が千春を凝視した。
「……おい、お前。どこかで見た顔だな。後ろにいるのは、君の仲間かい?」
「……そうだ。僕の仲間だ」
千春は短く答えるが、鬼たちの不審そうな視線が一斉に四人へ注がれる。
「前の車両に行きましょう。人間だとバレたかもしれません!」
その時、後方の扉が荒々しく跳ね上がった。
「ギシャァァッ!!」
正体を現した鬼たちが、涎を垂らしながら一斉に襲いかかってくる。
「前の車両へ逃げろ!!」
狭い通路を駆け抜け、一行は一番前の車両まで追い詰められた。
「くそっ、もう逃げ場がないぞ!」ちくが叫ぶ。
千春は刀の柄を握りしめ、背後の二人を振り返った。
「僕と兄さんで食い止めます。ちくさんとケメ子さんは、鬼が来る前に車両の上へ逃げてください!」
「上だって!? 走ってる列車の上かよ!」
「急いで! 殺られたいんですか!」
千春の怒声に押され、二人は必死に梯子を登り始める。
眼下には迫り来る鬼の群れ、そして頭上には夜の冷気と激しい煤煙。
大正の原野を疾走する列車の上で、絶体絶命の戦いが幕を開けようとしていた。




