【続編 第10話】宿場町の喧騒
【続編・第10話】宿場町の喧騒
「皆さん見てください、あそこに線路が見えます。あれを辿れば駅に着くはずです」
千春の言葉通り、進むにつれ人通りが増え、風景は活気ある宿場町へと変わっていった。
通りには問屋や食事処、そして艶やかな遊郭や見世物小屋までが軒を連ねている。
「とりあえず宿を探し、一泊して明日の朝イチで列車に乗りましょう」
まだ外は明るい。宿に荷を解くと、やおたが静かに立ち上がった。
「僕と千春は探索に行ってきます。……決して、遊郭に行くわけではありません」
「そんなこと誰も聞いてねえよ!」ちくのツッコミを背に、兄弟は街へと消えていった。
「ケメ子、俺たちも情報を集めに行こう。……にしても、やおたの見世物小屋、俺も見てみたかったな」
「そうね、一体何をやったのかしら……」
二人は探索のついでに街の見世物小屋を覗くが、今は興行していないようだった。
その時、小屋の横の細い路地の奥から、男の怒鳴り声が響いた。
様子を見に行くと、中年の男が鞭代わりの棒を振るい、怯える犬や猫を叩きつけている。
「この輪をくぐれと言ってるんだよ!」
「現代ならあんなこと、大変なことになるわ……」ケメ子が顔をしかめた、その時。
一匹の猫が逆襲に転じた。鋭い牙が男の手に深く突き刺さる。
「痛い痛い! 離せ、離せ!」
猫はこれまでの恨みを晴らすかのように、決して牙を解かない。
「大丈夫ですか!」
見兼ねた二人が駆け寄り、必死に猫を男の手から引き離した。男の手は見るも無惨な重症だ。
「早く医者に行かないと!」
「……これぐらいで医者になんか行ってられるか!」
ちくが呆れて言い放つ。「こんな棒で殴ったりしてるから仕返しされるんです。噛まれたくなかったら、もうこんなことはやらないことだね、おじさん!」
「そうだわ、自業自得よ!」
すると、男が顔を真っ赤にして叫んだ。
「……誰がおじさんや! 私は女や!!」
「「…………」」
二人の目が点になる。だって、声も風貌も完全におっさんなのだ。
二人はそそくさとその場を後にし、特に収穫もないまま宿へと戻った。
宿には、なぜか満足げな顔をしたやおたと千春が待っていた。
「何か情報を得ることはできたか?」
「……特にはありませんでした」
千春はどこか清々しい顔で答え、やおたも静かに頷く。
「じゃあ、今夜は早く寝て、明日早朝の列車に乗ろう」
そして翌朝。
東へ向かう列車を待つホームで、やおたと千春は、猛烈な「股間の痒み」に襲われていた。
二人は必死に表情を繕いながら、人知れず股をモゾモゾと動かし続けるのだった。




