【続編】第9話 B.L
【続編・第9話】B.L
サクサクが席を立ち、きよぴこに軽く手を振った。
「きよぴこ、ちょっと僕、はる兄さんと話があるから隣の車両に行ってくるね」
サクサクは吸い込まれるように隣の車両へ移り、はるの隣に腰を下ろした。
二人の距離が、不自然なほどに縮まる。はるが愛おしそうにサクサクの手を取った。
「……兄さん、相変わらずだね」
サクサクの呟きに、はるが熱を帯びた瞳で応える。
「サク……リクエストしてもいいかな」
「もちろんだよ、兄さん」
「……そ、そこ……。次は、ここを……」
「あ、ああ……」
静まり返った車両に、二人の吐息と衣擦れの音だけが響く。
「兄さん、続けてリクエストするのはずるいよ。今度は僕の番だ……」
サクサクが指を動かす。はるは抗うことなく身を委ね、小さく声を漏らした。
「……うん、なかなかいい……」
「じゃあ今度は、この辺をお願いします」
「だめだよ、今度は僕のリクエストだ……」
「あー……」
「いい……」
その頃、気になって隣の車両をそっと覗き込んだきよぴこは、凍りついた。
座席に身を寄せ合い、恍惚の表情で「リクエスト」を交わし合う兄弟。その空気はあまりに濃密で、部外者が入り込める隙など微塵もなかった。
(……あいつら、一体何やっとんねん。座席 揺れてるけど……何がどうなっとるんや……)
きよぴこは考えるのを止めた。これ以上、あの二人に関わってはならない——。
彼は静かに席に戻り、目を閉じた。今頃、自分を追ってきているはずの、ちくやケメ子、やおた、そして千春の姿を思い浮かべる。
「……あいつら、今頃どうしとるんやろ。早く来てくれ……頼むわ……」
レールの継ぎ目を叩く音だけが、虚しくきよぴこの耳に響いていた。




