【続編]兄との再会
【続編・第8話】兄との再会
サクサクときよぴこは、老婆の宿を後にして、蒸気と石炭の匂いが漂う駅へと辿り着いた。
「……きよぴこ、お前、列車に乗る金なんて持っとんのかよ」
きよぴこの不安を、サクサクは鼻で笑い飛ばす。
「お金なんていらないよ。こうすればいいんだ」
サクサクが駅員の目をじっと見つめると、男の瞳から光が消えた。
「……どうぞ、お通りください……」
「おいおい、ええんかよ! これ、ただの無賃乗車やぞ!」
背徳感に震えるきよぴこだったが、ホームに滑り込んできた鉄の巨体を見て、思わず声を上げた。
「……すげぇ、本物の機関車だ……!」
「きよぴこ、列車に乗っているのは人間だけじゃないから、気をつけなよ」
不穏な言葉を遺して、サクサクは客車へと乗り込む。
車内に入ると、異様な光景が広がっていた。
「おー! サクじゃないか、久しぶりだな!」「どこ行ってたんだよ!」
身なりの良い紳士から、怪しげな風体の男まで、次々と乗客がサクサクに親しげに声をかけてくる。まるで車両全体が彼を待ちわびていたかのようだ。
二人が席に腰掛けようとしたその時、奥から一人の男が立ち上がった。
「……おぉ、サクじゃないか」
サクサクが相好を崩す。「はる兄さん、久しぶり!」
「お前、40年もどこへ行ってたんだよ。みんな心配してたんだぞ」
「いやぁ、ちょっと野暮用でね……」
サクサクは、呆然と立ち尽くすきよぴこに向き直った。
「紹介するよ。僕の兄さんで『はる』って言うんだ。はる兄さんは僕と一緒で、リクエストするのが大好きなんだ」
「……リクエスト? 40年……?」
きよぴこの頭の中は疑問符で埋め尽くされる。
「きよぴこが、はる兄さんと仲良くしてくれると嬉しいな。」
サクサクはきよぴこの肩を叩き、無邪気な、しかし底知れない笑みを浮かべた。
「きよぴこ、楽しい旅になりそうだね」
重厚な汽笛が鳴り響き、列車はゆっくりと、さらなる深淵へと走り出した。




