【続編】見世物小屋
【続編・第7話】見世物小屋
朝、四人は老婆に深く礼を言い、追跡を再開した。
しかし、千春が駅へ向かう道すがら、厳しい現実を口にする。
「皆さん、私たちはこの時代のお金を持っていません。列車に乗るには、正当な対価を稼ぐ必要があります」
「何か手持ちの現代の品を売ったらどうだ?」
ちくの提案に、千春は首を振った。「この時代の品物ではないものを売るのは危険すぎます。歴史の因果が狂い、過去が変わってしまう可能性があるんです」
四人は足を止め、思考の海に沈んだ。その時、やおたが静かに口を開く。
「……見世物小屋をやろう。俺に考えがある」
「やおたがそこまで言うなら、やってみるか。小屋は俺が建てるよ」
職人魂に火がついたちくが、あっという間に仮設の小屋を組み上げた。
「さあさあ、寄ってらっしゃい! 珍しいものが見られるよ!」
娯楽の少ない村人たちが、好奇心に目を輝かせて集まってくる。
「やおた、準備はいいか?」
中からの返事を確認し、ちくは客を小屋の中へと招き入れた。
外で待機する三人。ケメ子が不安げに千春へ尋ねた。
「ねえ、千春……やおたは一体、何をしようとしてるの?」
「多分ですが……子供の頃、兄さんとよくお風呂に入ってたんですが……」
千春は遠い目をして、声を潜めた。
「……長いんです」
「えっ、何が?」ケメ子が問い返す。
「……“何が”です」
ちくが呆れたように割り込む。「おいおい、長いっつっても限度があるだろう?」
「……す、すごく長いんです」
その時、小屋の中から地響きのような「おぉぉぉーっ!!」という観客の驚嘆の声が上がった。続いて、お捻りの銭が景気よく投げ込まれる音が響く。
しばらくして、客たちはお化けでも見たような、あるいは人智を超えたものに触れたような、呆然とした顔で小屋から出てきた。
やおたは静かに外へ現れると、懐から取り出した大量の銭を千春に渡した。
「……これで、足りるか?」
千春は銭の重みを確かめ、深く頷いた。「……十分です。さすが兄さんです!」
再び東に向かって歩き始める四人。
しかし、その道中、誰一人として口を開く者はいなかった。
初夏の風が、気まずいほどの沈黙を揺らして通り過ぎていく。




