推し売り
「迷惑メールにほとほと困ってるよ」
年往は何か買い物をするたびに、不審なメールが増えている実感がある。
「あんまり変なもの買っちゃ駄目よ」
海外サイトで不用意にクレジット番号を書くのは、気をつけたい。
「紅さんは大丈夫?」
「押し売りじゃないけど、推し売りの被害に遭っているわ」
知らないセールスならきっぱり断れるが、なまじ見知った仲だとオススメを断りづらい。
「もしかして5組の雀ちゃん?」
雨野雀。紅はジャクと呼んでいる。
「わたしは興味ないって言ってるんだけど、推しアイドルを見て見てってしつこいのよ」
紅は大の音楽好きだが、流行りのアイドルは音楽を軽視していることがまず受け入れられない。
「まあ雀ちゃんも紅さんの性格はよく知ってると思うけど、そういうのは確かに難しいね」
好き嫌いが一致した者だけでパーティーを組むことなど不可能だ。
「そうなのよね。でもトシのほうは簡単よ」
【特定商取引に関する法律】
第十二条の三
販売業者又は役務提供事業者は、次に掲げる場合を除き、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について、その相手方となる者の承諾を得ないで電子メール広告(当該広告に係る通信文その他の情報を電磁的方法により送信し、これを当該広告の相手方の使用に係る電子計算機の映像面に表示されるようにする方法により行う広告をいう。以下同じ。)をしてはならない。
「紅さんを文Ⅰに誘う人がいるけど、紅さんは絶対理Ⅰだよ!」
親の書庫にあった法学書も片っ端から読んでいた紅。最難関は理Ⅲだが、医者よりも文理両刀のブンジニアに紅はなりたかった。
「はは、ありがとね。名古屋大学か北伊勢大学が候補だわ」
(ほんとは早々と結婚したいんだけどね)
可愛い紅には旅をさせろといきたいところだが、両親がとても心配性なため、地元で進学との約束済みである。
「あとさ、迷惑電話もしつこいんだよ」
高校生にも魔の手は怯まない。
「それも同じ法律だけど、参考までに」
第十七条
販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。
「そもそもこれを守れているか、ね」
第十六条
販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売事業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げなければならない。
「紅~、大変! ○○の親会社が摘発されたみたい!」
雀が飛んでやって来た。
「あ~、アレじゃない? 抽選でノベルティが当たるって言ってたのに全然もらえた人がいなかったってやつ」
【不当景品類及び不当表示防止法】
第五条
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの




