装飾系男子
「トシって言っちゃ悪いけど、いいとこのお坊ちゃんよね」
月の王子さまなのだから、当然である。紅はそのあたり、よく知らない。
「え、そうかなあ」
お父ちゃまの教えは、容赦なく厳しい。
「制服の時はあんまり分かんないけどさ、私服になるとね」
中高で服装を自由にすると、勉強も恋も身が入らなくなるだろう。その議論の前に、制服自体がとてもファッショナブルである。
「近鉄百貨店とか松坂屋によくいくかな」
ネット通販は縫製が悪いのと、加工詐欺に遭うので、めったに使わない。
「ほら。そういうとこよ」
紅も手伝いをしてお小遣いをもらうが、年往ほど好きには使えない。
「父さんによくレセプションに連れて行かれたりするからね。Tシャツ・ジーパンってわけには行かないし」
英国少年のような出で立ちが多い。対する紅は、フレンチカジュアルを好む。
紅は肩まで髪を下ろし、左こめかみ上をリンゴと蜂のヘアゴムで留めている。
(紅さん、懸賞付きの数学問題で大金をゲットしてるのは知ってるよ)
「地味すぎず、派手すぎず。いい線突いてるのよね」
カラフルにも厳格なルールがある。
「ウチの制服自体がセンスいいよね。紅さんのイメージカラーの赤だし」
下衣がロイヤルスチュアート、上衣が白である。冬はまたがらっと変わる。
「学年で違うのよね、コレ」
赤のロイヤルスチュアートが一番人気だが、ブラックウォッチ、ドレスゴードンも根強い人気だ。
「下が自己主張が激しいから、上はシンプルなんだろうね」
個性が強すぎると、バトルが始まる。
「トシが休みの日に来てるドレスシャツも、いいと思うわ」
ただの無地ではつまらない。
「アレ? よく陰キャが着る服なんて馬鹿にされるからウンザリなんだけど」
襟ぐりや袖口に装飾が施されている。ネットではなぜかこれがダサいと揶揄されている。
「変な話よね。汚れ防止にもなるのにね」
ポケットの色を変える商品も、昔からの定番である。
「でも刺繍が再注目されてきたのはいいことだと思う」
ワンポイントで控えめな刺繍が施されているのは、粋である。ただし、
「自分から言ったら絶対駄目だけどね」
相手に聞かれて、そこで初めて答える程度に留めよう。
「聞かれてもいないことを延々と話さないように、気をつけなきゃ!」




